直輝

書いたもの詠んだものを供養するために投稿しています

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  • 妄想百人一首

    百人一首を妄想の種にして掌編を書いています。 毎週水曜更新。

  • ギラギラ

    Adoさんのギラギラにインスパイアされて書きました。

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ライラック杯に参加します

俳句 弱い人に冷たい社会春の雨 下萌の隙間をうめる下萌の リラ冷やこのままでいいのだろうか 短歌(連作三首) 石灯籠へ灯を入れるケーブルを伝って春は(来る)or(来ない) 夢なんか語らないでと云う君が桜吹雪を浴びてる間 夢なんか語らないよと言ったのに散ることをとめられなくて 風 募集要項 あとがき  みんなの俳句大会は二度目の参加になります。  運営の皆様、今回も素敵な企画をありがとうございます。

    • ライラック杯 勝手に賞

       ライラック杯に続き、勝手に賞にも参加します。特に気に入ったものを紹介しつつ、僭越ながら感想を綴ります。 俳句 一覧の番号順に三句ほど。(五七五!うまい!) 82.花衣恋する人のふりをして  桜もオシャレも、もちろん友達のことも好き。でも恋愛をしたいとはどうしても思えなくて恋愛談は苦手……。なのに本能は叫ぶ――話を合わせないのは危険だ。女社会を生きる葛藤。  という鑑賞をしたのですが、当方男のため的外れなことを言っていたらご指摘の程よろしくお願いします。いずれにせよ鑑賞

      • 妄想百人一首(33)

        連作短歌十二首『岩』 雨垂れが岩へ穿った穴一つ口笛吹いてイントロとする 初めての春も次の春も過ぎた 風は冷たくても構わない 「かざはな」と言えば嵐の痛みさえ忘れてしまうことを忘れて 椅子に座るしぐさも膝掛けを掛けるしぐさもペンのノックのしぐさも 冬のあさ結露結露がちらついて実存を否定できなくなった もし仮に例えばだけど万が一君の視界へ入れていたら 妄想の農作物が喉を突く つついた君の肩は冷たい はらわたをトロ火で炙られる理由(わけ)がわかれば炙られてなどいない

        • 妄想百人一首(32)

          『ヘッドフォン』  仙田ってやつ覚えてる?  懐かしい名前を聞いた。忘れるはずがない。もっとも今の今まで記憶にのぼらなかったが。  仙田は高三のときのクラスメイトだから八年前の話だ。  出席番号順の座席で、俺の右斜め前に座ってたのが仙田だった。なんとも目立たないやつだったが、位置の関係で否応なく目に入った。彼のヘッドフォンが。  授業の前、間の十分休憩、当然昼休み、教室から出て行くとき、授業中以外は常にヘッドフォンをしていた。それだけではない。毎日三種類は異なるヘッドフォン

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          妄想百人一首(31)

          『電話の後』 『いや、えっとね………………』  長い間。長かったと思う。実際は三秒とかかも知れないけど、長かった。 『二人暮らしをするためっていうのと、』  何度反芻しても「ふた」りに聞こえる。脳内でぐるぐるしたくらいで「ひと」りにはならないし聞こえもしない。 『二人暮らしをするためっていうのと、』  男?女?  女性ならあの間はなんですか?何を言い淀んだんですか?男なら……嫌だけど望みはあるけど何ですか、同棲って言い辛かったんですか?  聞けるわけがない。聞けたら無意味な問

          妄想百人一首(31)

          妄想百人一首(30)

          『隙間 (その後)』  電柱とブロック塀の隙間を通ると異次元に行ける。  あれから一年が経ちました。今だって信じています。「入口」を見る度に通りたい気持ちでいっぱいになります。夕焼けを見る度に会いたい気持ちでいっぱいになります。  あれから一度も「入口」を通っていません。もちろん今だって信じています。あの日のことを忘れたことはありません。彼の言葉を疑ったことはありません。  それでも、「入口」を通ろうとは思いません。  あの言葉は永遠に真実だから。 今回の一首 逢ひ見ての

          妄想百人一首(30)

          妄想百人一首(29)

          『隙間 (後)』  電柱とブロック塀の隙間を通ると異次元に行ける。  国語の授業で、こんな書き出しの感想文を書いた日のことです。  珍しく部活が休みになって、まだ空が明るい時間に下校していました。いつも一緒に帰る友達とは部活が違うので一人でした。小学校への通学路と中学校へのとは途中まで同じ道なのですが、ちょうどその分岐にあたる角を曲がったときでした。  あの日と同じ隙間がありました。  陽の当たり方も風の暖かさもアスファルトの匂いも静けさも何もかもあの日と同じに感じました。今

          妄想百人一首(29)

          妄想百人一首(28)

          『隙間 (前)』  電柱とブロック塀の隙間を通ると異次元に行ける。  小学三年生のとき、そんな話を友達から聞いて何度も隙間を通ったことをよく覚えています。  最初は学校の帰り道で友達と別れた後、緑の「文」の看板が括りつけられた電柱と誰も住んでいないボロ家を囲む自分より背の高いブロック塀の間を恐る恐る通りました。ランドセルとブロック塀が擦れる音がしましたが、異次元に入り込んだ感じはありませんでした。それでもここが異次元だったらどうしよう、と思って周りをよく見ましたが、いつもと同

          妄想百人一首(28)

          妄想百人一首(27)

          『キリギリスとアリ』  橋の食べ物に困らない側の一人の男が、食べ物に困る側の酒屋で飲んだくれて言った。    あんなの死んで当然なんだよ、え?だ、当然だろ、何言ってるか分かんねえしさ声ガラガラで、ギターの音の方がでけえから何言ってっか分っかんねえんだよ、ギターだっていっつも調子っぱずれでうまくねえし、それで声ガッラガラで、音楽で食える訳がねえのにさ、食える訳がねえんだよ、んで俺が働けっつったら意味分かんねえことブツブツブツブツいうんだぜ、働かねえと食えねえっつってんのに働かね

          妄想百人一首(27)

          妄想百人一首(26)

          『アリとキリギリス』  二日間、何も食べていない。  それでも歌う。 ――どれほど空気を吐いたって   どれほど空気を吸ったって   こんなに喉は震えているのに   体の底から震えているのに   ギターは弾かないと鳴らない   間違っている 間違ってるから美しい   間違っている 間違ってるから歌える   そうだろ  一人立ち止まっていた男は首を傾げて去って行った。通りをゆく人々は素通りした。  冬ざれた薄い空がアルム橋に続く大通りの上に広がっている。  アルム橋から少し

          妄想百人一首(26)

          妄想百人一首(25)

          『それ』   男は落胆した。  無理もなかった。期待に胸を膨らませながら足を踏み入れた新しい世界にも「それ」は存在した。  行き交う「それ」を遠い目で眺めながら、何を思えば良いのか悩んでいた。つまり何も考えていなかった。あの子供じみた神への怒りに身を預ければ良いのか、この世界への無力感に浸れば良いのか。あるべきは、そのどちらでも無く今後を考えることなのだろうが、沸き立つ落胆の中では難しく、つまり何も考えていなかった。  「明太子はいかがですか」  男は自分へ掛けられた声と判っ

          妄想百人一首(25)

          妄想百人一首(24)

          『今日を限りの』  「死ぬほど幸せ」  彼女はそう言ったんだ。だから僕は悪くない。  レイとの出会いは介護の職業訓練校だった。  いつも通り遅刻ギリギリで教室に着くと、いつも通り前列の席しか空いてなくて、やむなく座った席の隣にレイは居た。  レイは垂れ目で鼻は潰れ気味でファンデーションがやたら濃くて、でもちょっと可愛くて、くすんだ黒髪を無造作に後ろで束ねていて体型のせいか猫背のせいか丸っこくて、でもおっぱいは大きくて、でも話したことはなかったから暫くは何とも思ってなかったは

          妄想百人一首(24)

          妄想百人一首(23)

          『再開』  「最後までやれよ」 ハードカバーに視線を向けたまま彼は言った。 「んー」 わかってる、投げ出すのはカッコ悪いし、そんな自分は嫌だ。 「んあ、でもだよ」 彼は顔を上げない。めげてはいけない。 「始めたのはさ、過去の自分じゃん、その時はその時のことを考えていたのであって、で、未来のことは未来の自分に丸投げしたわけじゃん、で、その、過去の自分と同じように今の自分には今の決定権があるとも言えるとおもうんだよ」 ようやく彼と目が合って、目を逸らした。やましいことがあるわけじ

          妄想百人一首(23)

          白熊杯 勝手に賞

           白熊杯に続き、勝手に賞にも参加いたします。勝手に直輝賞ですが百万円はでません。悪しからず。僭越ながらいくつか感想を綴ります。 俳句 一覧の番号順に三句ほど。(五七五!うまい!) 299 腕太き祖母万物をおでんとす  面白い。楽しい。このおでん絶対おいしい。「腕太き」が、素朴な描写でもあり、おでんを美味しくするスパイスにもなっていて本当に良い。 301 忘れられし者の気楽さ冬日向  酸いも甘いも味わった者の諦観と幸せ。冬日向には、主観的な喜悦と客観的な寂寥とが満ちる

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          俳句 息白し朝の玄関灯あえか 寒鴉鳴くや足場を解体す 燎原や落葉の一つひらめいて 短歌 真夜中の湖へ素足をひたす雪の行方を訊ねるために どれほどの雪の欠片を集めても空へ還せないことを知った ゆびさきにひとひらの雪ひもといて流れるものはきらめいていた 募集要項 初めての参加になります。 俳句三句は以前ツイッターに投稿したものですがご容赦ください。 よろしくお願いします。

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          妄想百人一首(22)

          「迷子」  狭く入り組んだ路地。四角く閉じられた空。右を見ても左を見ても家、家、家。スマホが示す現在地は、井の頭池のど真ん中。  ボート漕いでんじゃねぇええ。  落ち着け、落ち着くんだ、万が一のために余裕を持って出発している。実際、約束の時間まではあと三十分ある。地図を見ながら来ているんだし、そう遠く無いはずだ。表札を一つずつ見て回ればきっと辿り着く。大丈夫大丈夫。  広くておしゃれな建物が軒を連ねる閑静な住宅街。人の気配の無い路地に午後の穏やかな陽が差し込む。スマホが示

          妄想百人一首(22)