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妄想百人一首(33)

連作短歌十二首『岩』


雨垂れが岩へ穿った穴一つ口笛吹いてイントロとする

初めての春も次の春も過ぎた 風は冷たくても構わない

「かざはな」と言えば嵐の痛みさえ忘れてしまうことを忘れて

椅子に座るしぐさも膝掛けを掛けるしぐさもペンのノックのしぐさも

冬のあさ結露結露がちらついて実存を否定できなくなった

もし仮に例えばだけど万が一君の視界へ入れていたら

妄想の農作物が喉を突く つついた君の肩は冷たい

はらわたをトロ火で炙られる理由(わけ)がわかれば炙られてなどいない

君の喉の震えは見られないけれど震えることを喜べるから

ハイライト灯らないとき灯るとき 法則は知りたくなかった

けっこう真面目に積み上げたジェンガが根元から崩れたって感じ

穏やかな波が最後の岩削りきる叫び声アウトロとする


今回の一首

風をいたみ岩うつ波のおのれのみ砕けてものを思ふころかな

この歌について

 三十六歌仙の一人、源重之が詠んだ歌で、
「強風にあおられた波が岩を打ちつけるとき、岩はびくともせず波だけ砕け散るように、私だけが物思いに悩んでおります」
という意味。
 競技かるたを始める際、語呂合わせを活用する人がいるが、この歌は「風を砕け」となるためかっこよくて覚えやすいらしい。

あとがき

 現代短歌にハマり数ヶ月読み漁った結果、百人一首って馬鹿でしょうもない歌が多いなと思うようになっていたのですが、歌作をしたことで「人間は恋の歌を詠むと頭が悪くなる」と判明しました。平安貴族は間違っていなかった。

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4月19日 投稿

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