マガジンのカバー画像

姫崎ゆーの心に響いたnote

225
noteの本棚の姉妹マガジン心の琴線にふれたnoteを追加していきます。
運営しているクリエイター

#小説

常に追いかけられる人でありたい人

常に追いかけられる人でありたい人

対人関係苦手意識って、私ずっと苦手意識マンだったんです若いときって。30代くらいまで苦手でさ。30代からはむしろ得意に感じてたんだけど、それは仕事上とか、席がばちってきまってるときで、なんかフリー雑談みたいなのは苦手のままだったんだよね。
つまり私は根っから人と話すのが得意というかそういうんじゃないタイプなんだろうな、って。
で、そこで40代になって編みだしたのがインタビューって方式だったんですよ

もっとみる
今日が雨なら  (短編小説)

今日が雨なら (短編小説)

心地良い音量で「レットイットビー」が流れている。だけどこのカフェで流れるレットイットビーを歌っているのはビートルズ本人ではないと気づいたのは少し経ってからだ。

子供の頃、家では両親がビートルズのアルバムを繰り返し流していて、それを聞いて育ったはずなのに、このカフェに響くレットイットビーの変化に気が付かなかった。
「そういえば」と、音楽すら久しぶりに聞いていることに気づく。
家から徒歩10分くらい

もっとみる
生きている実感がほしくて

生きている実感がほしくて

雨を聴く、雨を耳で、生きている実感がほしくて

2年前の夏
コロナウイルスに感染したわたしは、友達から聞いていた話とまるで違って無症状だった
毎朝保健所から健康観察の電話があっても
特にこれといった症状がない

ただ、ひたすら自室に隔離され
ウイルス感染した弟とそれぞれが2階にこもり
実家にはお風呂が1つしかないので
母に感染させないよう気遣いした

ウイルス感染より、ヒマ死にするかと思った

もっとみる
エッセイ | noteで個人企画に参加するということ。企画への愛を語りたい。

エッセイ | noteで個人企画に参加するということ。企画への愛を語りたい。

 なぜ今なのかは自分でも不明ですが、偏見たっぷりに語ってみたいと思います。



はじまり

 わたしが自分で書いた文章を、恐れ多くも〝作品〟などと呼び始めたきっかけは、超ショートショートを書いたことでした。

 初めは自分で考えた〝お題〟で書きました。それに飽きてきた頃、知人から〝お題〟をもらうようになりました。
 それが楽しくなって、5作くらい出来上がったところでnoteにやって来ました。そ

もっとみる
小説: ペトリコールの共鳴 ③

小説: ペトリコールの共鳴 ③

←前半

第三話 ネズミへのわずかな恩を
沈痛と悲愴を抱き合わせた冬から、
若葉が目に優しい5月になった。時は疾走する。

「子どもの日か…」意識したのは何十年振りか。
今年は祝ってやりたいがケーキを食わすのも戸惑い、子どもの日と言えば兜や鯉のぼりだが高額な物を買ってやるだけの金はない。

俺は大きな損失を出す寸前に助けられた。
体長がわずか20センチ足らずのキンクマハムスターは、たった1匹で俺を

もっとみる
暑さが胸に刺さる

暑さが胸に刺さる

炎天下に溶けゆく影
猛暑が肌に刺さる

浜辺で聞こえる子どもたちの笑い声
夏ならではが 気持ちを満たす

あさがおが鮮やかに咲く
ここにも夏ならではの美しさが溢れる

海に広がるきらめき

遠くで聴こえる船の汽笛
音が思い出を運ぶ

海鳴りの音 波打つ心を奪われる瞬間
切なさがわたしを揺さぶる

「嫌いな人のようになりたくない」

過剰なエネルギー配分を置いている

暑い日差し
夏に溶け込む甘い罠

もっとみる
わたしのお気持ち表明

わたしのお気持ち表明

金魚鉢 捨て鉢 やけっぱち
ヤケのヤンパチ日焼けのナスビ
色は黒くて食いつきたいが
あたしゃ入れ歯で歯が立たないよときた

金魚鉢のお題で、映画「男はつらいよ」
寅次郎のセリフが出てくるほど
わたしは自分の『お気持ち表明』を抑えているつもりになっている

お気持ち表明をしたら
「あら、アタシへの名指ししない揶揄?」となり
『お気持ち奴隷』を作りそうで
他人へ気遣いさせるのもメンドクセー

現在、創

もっとみる
重すぎて洒落にならない女子の章(SS)

重すぎて洒落にならない女子の章(SS)

 タイトルが川柳みたいで出オチっぽいんだけど。やり場のないかなしみを創作に昇華してみましょう。

 主文、ショートショート。一分くらいで読めます。

 ⌨️

 いや、創作活動に限らない話なんだ。
 人間ってやりたいのにできないことが増えるほど行動するモチベーションも自信も低下しそう。事の次第によっては大切な青春のチャンスや愛すべき人々との信頼関係まで損なってしまうのではないか?

 率直に言うと

もっとみる
掌編小説 | ニセモノ | シロクマ文芸部

掌編小説 | ニセモノ | シロクマ文芸部

金魚鉢、ではなくてホルマリン漬けの瓶だ。
生きた金魚を悠々と泳がせる、それこそが金魚鉢の役目であり、あるべき姿なんだ。死んだ出目金を晒す容器と一緒にしちゃあいけない。

だいたい、どうして古着屋にこんなに沢山の出目金の死骸を並べているんだろう。その前に、これは本物? それとも偽物なの?

「ナニコレって思ってるでしょ」
若髭のオーナーが声をかけてきた。若髭って

もっとみる
小説: ペトリコールの共鳴 ②

小説: ペトリコールの共鳴 ②

←前半                  

第二話 一途に相手を想い過ぎ
布団から顔を出すのが、昨夜から愛羅に変わった。

キンクマが死に、俺は掌に乗せて涙を流すと、
「ネズミなんて汚い」
愛羅はキンクマをトイレに流してしまった。

「タツジュンさん、あなたは洗脳されてます。
動物は畜生です。ペットの葬式は搾取ですよ。
こうして自然に還すのが、普通で
真っ当な人間がするべきことです」

今朝まで

もっとみる
執拗な人には届かぬ声

執拗な人には届かぬ声

わたしの指紋は警察署に保管されていると思う

過去に2回、ストーカー被害に遭い
1度目の被害は夜逃げする羽目になった
2度目の被害は弁護士へも介入してもらった

1度目のストーカー被害は
ストーカーされているのを知らずに生活し
風呂上がりに玄関チャイムが鳴り
無防備にドアを開けた瞬間、人が乱入 

わたしは悲鳴をあげた
壁に頭を押しつけられて、物で叩かれた後
人は立ち去った

それからは神経質にな

もっとみる
小説:ペトリコールの共鳴 ①

小説:ペトリコールの共鳴 ①

【あらすじ】

妻の遥香が死去し、深い悲しみに包まれたタツジュンの前に、まさかのことが起きる。亡くなった妻の生まれ変わりのようなハムスター"キンクマ"が話しかけてきたのだ。キンクマの言葉に導かれるタツジュンは少しずつ心の重荷を下ろす。

しかし、SNSで出会った謎の女性"愛羅"が、タツジュンの生活に変化を及ぼし始める。愛羅の本性は一癖ある人物で、遂にはタツジュンを危険な状況に追い込む。

そんな中

もっとみる
5月は、うさまろと散歩

5月は、うさまろと散歩

5月は、うさまろと散歩

青空は
天宮から降り注ぐ恵みだね

心地良い風が今日を包む

爽やかな気分な五月の日々
花々が愉快に、新緑は跳ねる
鳥の声が耳へ軽快に響き
この瞬間を丁寧に進む

薫風によって心は開放され
五月晴れは「どうにかなる」望みを与える

美しい季節を共に楽しもう

心地良い言葉がひらめき
幸福感を胸に、うさまろは歩み続ける

掌編小説 | 家族

掌編小説 | 家族

 インターホンのカメラに映らないように顔を隠した。
「だれ?」と姉が訝しむ。
「わたし」とわたし。
「くだらないことやっていないで、上がってらっしゃい」
 勝手に上がれないからインターホンを押したんじゃないか、とつぶやきながらエントランスのドアを通過した。
 姉が住むのはマンションの三階フロアだ。廊下を歩きながら、ひとつひとつ、家の表札を読む。
「しばた…かなもり…にしだ…キム…さかもと……」
 

もっとみる