生きている実感がほしくて
雨を聴く、雨を耳で、生きている実感がほしくて
2年前の夏
コロナウイルスに感染したわたしは、友達から聞いていた話とまるで違って無症状だった
毎朝保健所から健康観察の電話があっても
特にこれといった症状がない
ただ、ひたすら自室に隔離され
ウイルス感染した弟とそれぞれが2階にこもり
実家にはお風呂が1つしかないので
母に感染させないよう気遣いした
ウイルス感染より、ヒマ死にするかと思った
外から聞こえてくるのは、近所のケンカ
「朝っぱらようやるなぁ」
娯楽として窓からひっそり眺めた
隔離から10日来る頃
明け方近い真夜中
郵便配達も牛乳配達も来ない時間に
玄関から庭へ出た
雨が降るのに庭へ出た
自分が生きてることを感じたかった
頭皮を伝いながら頸に逃げる水流
雨が目に幕を張る、鼻に入っても温く出て
唇を沿う雨垂れ
わたしを、草花を、アスファルトを叩く
雨を聴く
♪─── みなさまへ───♪
毎朝、短編小説をご覧いただき
誠にありがとうございます
小説は約5万字、5月に完成させました
拙筆ですが、私が社会へ問い掛けたいことを
小説に込めました
推理ミステリーのような謎解きはありません
しかし現代社会における怪奇を描いたつもりです
もう暫くお付き合い願えれば幸甚に存じます
よろしくお願い申し上げます