元気をもらった、歴史地区での試食会
金曜日の夜
いつものルーティンでKOTA LAMA歴史地区の〈SPIEGEL〉へ
カウンターでとりあえずビンタン・ビールを一杯もらい、飲みながら本を読んでいると、いつもの顔なじみの若い女性スタッフがオーダーを取りにきた
定番の〈BACON TRUFF FRIED POTATO〉を頼み、もう一品何かをとろうと考えていると、そのスタッフが辺りを素早く見回し、小声でこういった
ー”今夜はTRIAL DISHを用意できますが、食べてみませんか?”
TRIAL DISHー試作品
今夜は厨房で新作メニューの試食会が行われているらしい
料理の内容を訊くと、彼女は”うふふ”と茶目っぽく笑って、おまけにウィンクをして無言で踵を返そうとした
わたしも慌ててお返しのウィンクをしたが、死ぬほど後悔した
なぜなら両目を瞑ってしまったからだ・・・
しばらくしてその女性スタッフが片手で持ってきたのはー
訊いたところによると、ここスマランから車で2時間ほどの高原にある〈ディエン高原〉産の玉ねぎらしい
そこは高原を利用した寒冷地に無農薬栽培で野菜を作る農家が点在し、インドネシアで最も野菜の美味しい産地として知られているのだ
〈ナイフとフォークで玉ねぎを食べる〉、のもわたしにとってはかなり新鮮だし、岩塩だけで食べても玉ねぎの甘さとあって、これが信じられないくらいに美味しかった
満足して食事を終え、勘定を頼むとさっきの女性スタッフが現れ、明細を見るも試食ー〈玉ねぎのオーヴン焼き〉が入っていない
そのことを彼女に指摘すると
ー”TRIALなのでまだ正式なメニューではないのです。価格も決まってないから、今夜は無償で大丈夫ですよー”
この店にはなにかと便宜を図ってもらってばかりだ
そして彼女はスマートフォンを取り出し、あるフライヤーを表示させた
それによると、来週からはお店の〈開店128周年記念フェア〉が開催されるらしい
しかし、〈128周年〉とは凄い
わたしはその歴史の中では、まだまだ新参者であることは間違いないが、128年もこの地の筆頭レストランとして継続できるのはー
食事の質の他に、こうした温かみのあるスタッフを採用し、教育することで培われているに違いない
彼女はいった
ー”来週末はまたぜひお越しくださいね”
いわれなくても、必ずまた来るよ
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