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フルライフの時間戦略とは? DoingからBeingへ、後悔を回避する充実した人生の歩み方

「DoingからBeingに時間の使い方をシフトしていくことが充実した人生には必要ということか」

人はみな誰しも「より良く生きていきたい」と思っています。この何となく想像する「より良い人生」をもう少しはっきりさせるために役立つ本があります。

その本には、「充実した人生=フルライフ」という言葉が登場します。

この一見つかみどころのない「充実した人生」とはどういったものなのかを学びたいと思います。

「充実した人生=フルライフ」とは

「どうしたら一度きりの人生がフルになるのか?」これは人生きる上で考える永遠のテーマのように深いテーマです。このテーマに考察を与えてくれるのが予防医学研究者の石川善樹さんが書かれた「フルライフ」という書籍です。石川さんは思考を深く深く掘ってその真意とは何かを探り出すのが非常にうまい方です。人生100年時代と言われる今、どの世代の方が読んでも発見や気付きが得られる素晴らしい一冊です。おススメです。

この本のコンセプトは、「時間の使い方に戦略を持つことで、フルライフ(充実した人生)を実現する」というものです。

そもそもの問いとして「フルライフって何?」とぽかんとしてしまいそうです。「充実した人生」、わかるようでわかりにくい言葉です。この言葉を腹落ちするために石川さんらしいアプローチをされます。それは逆を考えるということ。フルライフが分からないのなら、その逆、つまり「エンプティ(空っぽ)な人生」とは何か?を想像してみます。

エンプティ(空っぽ)な人生
➡空っぽな人生
➡何も誇ることがない、後悔だらけの人生

このように思考を巡らせます。ここで「誇ること」は人生にプラスとなるものです。積み上げです。逆に「後悔」はマイナスです。回避するもの。たとえ誇ることを積み上げたところで、後悔が多ければそれはフルにはなりえません。そこで、「後悔」というマイナスを減らすことができればフルに近づくのではないかと発想します。

そして、次に「後悔」を分解します。「やってしまった後悔」と「やらなかった後悔」に二分できます。この両者を比較したとき、人生に大きく影を落とすのはおそらく「やらなかった後悔」ではないでしょうか。

人の人生は様々な分岐点があり、その中から「1つの道」を選ぶことを繰り返して今の自分に至っています。そう考えると、「やりたくてもできなかったこと」は誰しもいくつか思い当たるのではないでしょうか。「やった後悔よりも、やらなかった後悔」に後ろ髪を引かれながら、生きている人が多いのではないかと思います。

「後悔」が生まれる原因

石川さんは「後悔」をテーマに考えた時、「人生を悩ませる2つのジレンマ」があると言います。それは「選択のジレンマ」と「総取りのジレンマ」

「選択のジレンマ」:A or Bで発生

AかBかどちらか一方を選んだら、もう片方を捨てることになるという後悔です。そのジレンマを乗り越えるには、「A and B」しかありません。


「総取りのジレンマ」:A and Bで発生

AもBもCも、あれもこれもと心のままにやりたいことを全部やっていくと、キリがありません。結局どれもやりきれず、中途半端に終わるという後悔が生まれます。これが「総取りのジレンマ」です。

狭く深くの「選択」か、広く浅くの「総取り」か、いずれにおいても後悔は生まれるということです。そう考えると、人生というものは「絶対に後悔が生まれる構造」になっているとも言えます。結局「後悔のないフルライフ」などないということになります。それはなぜか?

その答えは「時間が有限だから」です。

「狭く深く」、「広く浅く」ではなく、理想は「広く深く」です。しかし、やりたいことが増えていくと、それぞれに割く時間は少なくなります。どうしても浅くなってしまう。

つまり、この「時間」という有限のリソースをどういうウェイトで使うかが後悔の「より少ない」人生につながっていくということです。石川さんは時間に対して戦略を持つことを提案されています。

たとえ後悔が残るとしても、限られた時間の中、確信を持って進んでいくための「時間戦略」が必要であると説きます。「戦略」とは色々な定義がありますが、石川さんは「重心」という言葉で説明されています。

フルライフのための「時間戦略」

この書籍の中で「フルライフとは何なのか?」という問いに対して、「Well-DoingとWell-Beingの重心を見つけること」と石川さんは答えています。

フルライフに向けた時間戦略を考える上で、時間の中身を次の2つに分けています。

1.Doing(する)の時間
  明確な目標に基づき役割や責任を果たす「Doing(する)」の時間

2.Being(いる)の時間
  特に目標なく過ごす「Being(いる)」の時間

これは石川さん独自の考え方です。とてもユニークな視点ですが腹落ちする感覚があります。Beingは「居る」、「在る」とも言えます。無意識、あるいは習慣的に時間を過ごすことです。隙間の時間や何気ない休憩時間のことを指しています。

現代社会においては、「Doing」と「Being」の時間のバランスは個人一人ひとりに委ねられています。ここのバランスのとり方が時間戦略上重要なポイントです。「自由」と「規律」がセットになることで、人は「自律」して生きていけます。

石川さんは若いころはWell-Doing>Well-Beingで、100歳に近づくにつれWell-Doing<Well-Beingになっていくと説きます。人生の前半は、勉強したり将来に悩んだりしながらバリバリ働く、つまりよくやる、Well-Doingの時間に多くのリソースを取られます。

気の合う仲間ができたり、恋人ができたり、あるいは新しい家族ができたりすれば、Well-Beingに過ごしたくなります。一方で、大きな目標や眼の前の仕事が大変なときは、Well-Doingに傾く。歳を取れば体力や集中力の低下といった問題も出てきます。そうなると自然にWell-Doingは減らざるを得ない。このようにライフステージによってこのバランスは変わっていきます。

いくら今はバリバリ働いていたいといえども、それをずっと続けてWell-Doingな時間ばかり過ごそうとすると、やがてバランスが崩れてしまうということです。今まさにバリバリ働いている人も、Well-Doingの時間をすこし抑えて、Well-Beingの時間を招き入れるぐらいの感覚を持たなければ、人生の後半戦で歪みをもたらすことになります。

忙しい毎日を送っているWell-Doing寄りの生活をしている若い人からすると、仕事の結果に直結しないように思える時間を過ごすのは、「もったいない」、「時間の無駄だ」と感じるかもしれません。しかし、年齢を重ねて行くと、「Well-Being」の時間を意識して取り入れることは重要な視点となってきます。

この本の中に、経営者の働き方を支える「エグゼクティブコーチ」という職業が紹介されています。この人の仕事の一つが「経営者に休みの予定を入れさせること」だそうです。言い換えれば「攻めの休暇」ですね。Well-Beingの時間を創ることで、結果、長期的に高いパフォーマンスでWell-Doingできるようになるとのこと。

我々はつい目の前のやらなければならないこと(Doing)に意識を奪われがちです。しかし、Well-Beingの時間を戦略的に持つことで、後悔しない人生に近づけるのかも知れません。

まとめ

人は皆、誰もが「どうしたら一度きりの人生を充実したものにできるのか?」と無意識に考えています。

充実した人生をフルライフとした時に、その対極にあるものがエンプティライフ、つまり後悔ばかりの空っぽな人生です。そうならないように「後悔」を回避する生き方をしようと石川さんは提案しています。

とはいえ、狭く深くの「選択」か「広く浅く」の総取りか、いずれのケースでも後悔は生まれ、完全に後悔を回避することはできません。それは時間が有限だからです。だからこそ、我々は時間の使い方に戦略を持つべきです。

人生のライフステージでWell-DoingとWell-Beingの重心(バランス)を見極めることが重要です。若いころはDoing一辺倒の人生になりがちですが、歳を重ねると徐々にWell-Beingの時間が価値を作っていきます。一見無駄に思える時間も、充実感を上げてくれる時間の使い方だったりします。

この「時間の重心」を意識して、後悔の少ない人生を歩んでいけたらいいですね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。


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