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堕天狗
2021年1月16日 23:00
小学校の同窓会に呼ばれた。成人式の少しあとに開催されて以来なので二年ぶりということになる。いまも八王子に住んでいる連中はたまに会っているらしいが、引っ越してしまった僕は彼らと会う機会も減ってしまった。彼らと会うのも必然的に二年ぶりということになる。三月上旬には、出席者だけのLINEグループができた。発起人のユウヤを中心に、メンバーは七人しかいなかった。思ったより少数だなと思ったが、よくわから
2020年9月7日 00:26
就活が終わった。別段いい結果だとも思わないが、落ち着いた今となっては悪い結果だとも思わない。とにかく今は、来年から真っ当に働く社会人になれるのだと少し安心している。就職浪人を決めた昨年の夏、僕はそんなに焦りを感じていなかった。志望業界の納得できる企業から内定を貰えなかったら就職浪人しよう。そう思っていたから、ある程度の覚悟は出来ていたのかもしれない。元々、人を妬んだり羨んだりするタチでも
2020年5月31日 01:24
自粛期間が続き、家にいる期間が増えた。外に出る用事といえばたまの運動や買い物、郵便物の投函くらいのもので、家の周囲2km圏内にやんわり軟禁されているような状態が続いている。古着を買いに下北沢に行くことも、大学の近くのカフェにフラッと入ることもない。思い返してみれば、四月に入って以来飲み屋街もサウナも一度も足を踏み入れていない。ちょっとした金や莫大な無駄と引き換えに、僕たちは虚無の時間を手に入
2020年3月31日 19:00
なにはともあれ僕は出不精だ。なるべく理由なく家から出たくない。よって、病院に行くときはそれなりの気合を入れる必要がある。気合を入れないと通院の予約の電話すらできない。しかし、健康体であっても病院と関わる機会は多い。インフルエンザの予防接種、歯医者の定期検診、コンタクトレンズを買うための眼科の検査…と、定期的にXデーは訪れる。いざ病院に行くとなれば、その日は「病院の日」と称して何箇所かの病院
2020年2月3日 14:09
「お前そろそろバトル出てみたら?」「そうだな〜」サイファーにも通わず、独学でフリースタイルラップを始めて二年。友達からフリースタイルラップの大会に出てみたらどうだと薦められた。仲間内のカラオケや飲み会でラップするだけの状況に飽きつつあった僕にとっても魅力的な誘いではあった。ただ、これまでは踏ん切りがつかなかった。知り合いがいるわけでもなく、クラブカルチャーに馴染みがあるわけでもない
2019年11月20日 14:41
無言の時間は永遠に思えた。僕の目の前の巨大な鏡餅は怪訝そうな表情を浮かべるだけで、何も言葉を発さない。「What should I do?」鏡餅の顔を見上げながら僕は言った。1日目「この中にヘミングウェイはいない」はこちらから僕…著者。石川…最近彼女と別れた。こちらでは「タマキン」として登場。性豪。中村…留学経験あり。「僕」の母親の中では就職留年することになっている。吹野…人の心がない。
2019年9月2日 23:42
梅田駅近くのバス乗降場に降り立つと、むわっとした熱気が僕を包んだ。18時過ぎだというのに太陽の余熱は収まる気配もない。大阪に着いたらどのラーメン屋に行こう、と10店舗ほどリストアップした中で、僕は福島エリアの2店舗に目星をつけていた。9時間近い長旅は、めぼしいラーメン屋の選定には充分すぎる。僕が最初に行こうと決めたラーメン屋は福島駅から歩いて行ける距離にある「燃えよ麺助」という店だった。福島
2019年7月3日 11:49
中高と大学、男子校と共学、部活動とサークル。多くを異にする環境下で、僕たちは同じような会話を続けている。僕は、中学・高校と主に軟式野球部に属していた。いくつかの仲が良いグループがある中で、部活動で行動を共にするという事象は、その友達との仲の良さにも自身の人格形成にも多大な影響を及ぼす。現に、そのうちの二人は大学でもサークルが同じだし。もし、僕がずっと将棋部にいたとしたらこうはなっていないだろ
2019年6月27日 14:16
今月は三回も野球を観戦した。観戦した球場は、所沢、関内、水道橋と、それぞれ違う場所だった。幕張、外苑前も合わせれば、家からふらっとプロ野球を見に行かれる球場が五箇所もある。トーキョーに住んでいる利点というものはあらゆる場所に顔を覗かせる。中でも、横浜スタジアムで観た試合は横浜ベイスターズvs.北海道日本ハムファイターズの対戦カードだった。巨人ファンの僕は、関係ない試合だからこそ純粋に野球を楽し
2019年6月20日 12:06
元巨匠・岡野陽一のコラムが始まった。「岡野陽一のオジスタグラム」という名前で、概要は【毎週知らないおじさんと飲みに行って感想を書く連載】と記されている。既に公開されている初回では、岡野がネタで演じるようなおじさんが早速登場している。蘊蓄をこね回すよりも実物を見てもらった方が早いのでリンクを貼った。面白い。そのコラムのいちばん最後に、編集のアライと岡野のLINEのやりとりが公開されている。そ
2019年4月22日 22:36
高校時代も、ゴリゴリに鍛えているという訳ではなかった。それでも、運動の習慣が無くなるというのは恐ろしい。ベルトを締めた時に弛んだ腹の丸みは、如実に日頃の怠惰さを映し出している。大学生の太り方は、身体測定では測れない。脂肪が、勝手に筋肉とトレードされているのだ。毎日、気づいたら筋肉は他球団に移籍しているし、脂肪は自球団のファームに回されている。しかもコイツら、タチの悪いことに一軍で戦力になる気が
2019年4月1日 02:43
四月で大学四年生になる。否、なった。世間では改元改元と騒いでいるようだが、僕にとってより重要なのは「大学四年生」という冠の重さである。大学生活の締めくくり、そして社会という大海原の波音が徐々に大きくなってくる時期だ。小さい頃、誕生日がやってくるのが毎年楽しみだった。「誕生日おめでとう」と声をかけてもらい、プレゼントを貰う。夜になれば、部屋が暗くなってケーキが運ばれてくる。恥ずかしがりながらもロ
2019年1月24日 01:46
「小学校時代の貯金を切り崩しながら生きてるだけですよ。」謙遜混じりにそう言う機会が多い。実際、それは間違ってはいない。小学校時代、勉学において僕は紛れもなく周りから抜きん出ていた。中学受験が盛んな都心部と違い、八王子は公立中学校に進学する小学生が八~九割ほどだ。強い鼻っ柱を屹立させながら早稲田中学校に入学した。中学には、各地ですくすく鼻を伸ばしてきたピノキオが至る所にいた。その自由な校風