流水航己

ちっぽけな窓に写る宇宙へお越し頂きありがとうございます。徘徊、沈黙、蒸発ではなく治癒不…

流水航己

ちっぽけな窓に写る宇宙へお越し頂きありがとうございます。徘徊、沈黙、蒸発ではなく治癒不可のマイペース。晴れたら雨が好きなのです。雨なら晴れが好きなのです。上の画像は林檎の電話が海に落ちた写真です。

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掌編集【夜景点描】

悩める人 来たときには その首はもがれていた それさえも気づかずに 見開いた眼は 分かれた肢体を見つめていた 床の上の薔薇は 赤い唇で微笑した 日々の暮らし 君は…

流水航己
5か月前
8

近況のお話

流水航己
1年前
10

【詩】 路地裏の一群

吹く風に 行き先尋ね路地裏向う 足、足、足 鋭く睨む 逆さま頭のとんがりお耳 猫、猫、猫 にわかに現れ瞳孔に夜灯る 標識の矢印が回転する摩天楼 壊れた音のラッパの調…

流水航己
1年前
16

【詩】 菜の花ゆれた

春だよ、春だね、春ですね 一面に咲いた 菜の花たちが 風にゆられて 奏ではじめる わらべ歌 春だよ、春だね、春ですね 小川の流れ 鱗粉浮かべ 水面またたき 調べ…

流水航己
1年前
17

【詩】 信じられていた人々

私たちは確かに約束されていた 見渡す限りの猛炎の中 天の底が抜けたような雨の中 それは紡がれる糸のように つづれ織りからなる眼下の光景に結ばれる 海は覚えている 深…

流水航己
1年前
15

【詩】 宗教的回顧録

街に、画面に、言葉に 愛している 会いたい 大好きは氾濫するのに いつまで経っても 世界は冷え切ったままだった 真相を確かめるべく 重い腰を上げた酒場の警官 千鳥足で…

流水航己
1年前
7

【詩】 秘 蜜 裏

寝台の上の電球と 博士の異常な眼鏡         燦然と婚約いたる         ぎらぎらぎらり たなびく旗の裏の顔 天井桟敷の表顔         奇跡の出会…

流水航己
1年前
16

【詩】 春の淀み

春の淀みに駆り立てられる焦燥よ 麗らかさを裏腹に惑わす季節よ 香水に浸された銀色のナイフよ 瞬く間に地上の蕾を切り裂き 一変に花は開く 気もそぞろな人々が 一斉に歓…

流水航己
1年前
18

【詩】 白昼夢

私のちいさく迷い気な手は 温かくたしかな母の手をとり 午後の渚を歩いていた        ※ 寄せては返し高鳴る海が 弾けたソーダ水のように 辺りを浸す 黄色い声で…

流水航己
1年前
15

【詩】 春おもう

鈍重な暗い幕の隙間から 滑り落ちる陽の手に触れられ 長い夢見心地の童話は終わりを告げた 予感めいた蕾をつける梅の枝 待ちわびるその姿は 幹のうねりを止め 一心に血管…

流水航己
1年前
10

【詩】 船はゆく

弓なりにすすむ船はゆく きらきら輝く水平線 その先の僕らの生活へ 旅する人 働く人 悲しむ人 笑う人 ずっと続く僕らの日常 船は物を運ばない 知らない毎日を運んでいる …

流水航己
1年前
8

【詩】 末路

値札をつけたがる弁護人 汚れた川に浮かぶ生活の切り貼り 思いのない焦燥を訴える偽装 混じり気のない綺麗な欲の色 恍惚と人の血に映る自分をみつめる 物事は簡潔さが明確…

流水航己
1年前
10

【詩】 陽の下にある暮らし

人は太陽を模倣し光を得たんだ 幼い頃は母親を起こすほどに怖かった 真っ暗な夜も 今では明かりをつけるとまるで昼間のよう 人は太陽の光から知恵を授かったんだ 光は照ら…

流水航己
1年前
11

【詩】 星が生まれる時

この思いは 燃え尽きる感情です それとも 憧憬の追憶です であるならば 逃れきれない私です        ※ 夜明けを知らせる小鳥の翼 水面に照らされる朝の光 無限の…

流水航己
1年前
11

【詩】 忘れもの

流水航己
1年前
9

【詩】 静夜の記憶

私から吐き出される 言葉の生前の記憶は 怒りだ 嘆きだ 軋轢だ 確執だ 焦燥だ 衝突だ 軽蔑だ 嘲りだ 冒涜だ 呪いだ 幻滅だ 破滅だ 破壊だ 限界だ 無知だ 裏切りだ…

流水航己
1年前
8
掌編集【夜景点描】

掌編集【夜景点描】


悩める人

来たときには
その首はもがれていた

それさえも気づかずに
見開いた眼は
分かれた肢体を見つめていた

床の上の薔薇は
赤い唇で微笑した

日々の暮らし

君はまだいたのかい?
問い合わせ先からの問い合わせ
タッソーその道は危険だよ

薄明かりに照らされて
闇雲に手を伸ばし
僕は上昇を試みながら下降した
亀裂の先へ堕ちていた

俺の知らない時代であの時は
質量、熱量、重力、逆光
尚も

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【詩】 路地裏の一群

【詩】 路地裏の一群

吹く風に
行き先尋ね路地裏向う
足、足、足

鋭く睨む
逆さま頭のとんがりお耳
猫、猫、猫

にわかに現れ瞳孔に夜灯る
標識の矢印が回転する摩天楼

壊れた音のラッパの調べに
とぼけた青色バケツの酸えた匂い
打ち上げられた体と
残飯まみれの菜根譚

鈍い光を放つ宝石の中に
道化師がうっすら映るうすら笑い
交わされた約束と
破られた幼な写真

街の隅で語られる会話
嘘も真も入り交じるきらびやか
鈍色

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【詩】 菜の花ゆれた

【詩】 菜の花ゆれた

春だよ、春だね、春ですね

一面に咲いた 菜の花たちが

風にゆられて

奏ではじめる わらべ歌

春だよ、春だね、春ですね

小川の流れ 鱗粉浮かべ

水面またたき

調べにつれて 時移る

春だよ、春だね、春ですね

母のもとへと 駆け寄る子ども

まるで花束

腕いっぱいに 抱きしめる

菜の花が 風にゆれ

菜の花が 風にゆれ

在りし日の

いつかだれかの わらべ歌

春だよ、春だね、春

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【詩】 信じられていた人々

【詩】 信じられていた人々

私たちは確かに約束されていた
見渡す限りの猛炎の中
天の底が抜けたような雨の中
それは紡がれる糸のように
つづれ織りからなる眼下の光景に結ばれる

海は覚えている
深く神秘に満ちた水
あらゆる秘密に満ちた胎動
大きな揺り籠の中の揺らめき
望まれた極めて有機的な原初の煌めき

霊気に満ちた息吹きが織りなす
すべてはあるがままに抱かれる

森は見ている
赤褐色に熟れた無花果がなる季節
木陰の下で古の箴

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【詩】 宗教的回顧録

【詩】 宗教的回顧録

街に、画面に、言葉に
愛している
会いたい
大好きは氾濫するのに
いつまで経っても
世界は冷え切ったままだった

真相を確かめるべく
重い腰を上げた酒場の警官
千鳥足で事情聴取へ
それ以来
戻ることはなかった

囚われた愛は
少年刑務所の夢の中
幸せに服役している
今宵も失われた世界は恋をする

【詩】 秘 蜜 裏

【詩】 秘 蜜 裏

寝台の上の電球と
博士の異常な眼鏡
        燦然と婚約いたる
        ぎらぎらぎらり

たなびく旗の裏の顔
天井桟敷の表顔
        奇跡の出会いこれ幸い
        どきどきどきり

目玉を落した瞳の奥に
夜空に落ちた流れ星
        失われたものも気づかずに
        きらきらきらり

   すかさずに
    星に願いを
     いっぱい祈り
    

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【詩】 春の淀み

【詩】 春の淀み

春の淀みに駆り立てられる焦燥よ
麗らかさを裏腹に惑わす季節よ
香水に浸された銀色のナイフよ

瞬く間に地上の蕾を切り裂き
一変に花は開く
気もそぞろな人々が
一斉に歓喜をあげる
期せずして街はその強い香りに酩酊する

その不気味さ
その狂乱
つきまとう春の妖しいその胸騒ぎ

桜の大樹は見せ物のように
待ちわびた見物人たちが取り囲み
さも珍しそうに人だかりがしていた

奇怪にくねらす老木の枝先には

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【詩】 白昼夢

【詩】 白昼夢

私のちいさく迷い気な手は
温かくたしかな母の手をとり
午後の渚を歩いていた

       ※

寄せては返し高鳴る海が
弾けたソーダ水のように
辺りを浸す

黄色い声で鳴く海鳥が
青い空をどこまでも
高く翔けていく

見渡す限り続く浜辺の上で
両手にすくった銀の砂
指と指の間からこぼれては

さらさらと
光をなして
流れていく

変わることのない潮の香り
刻まれる二つの影
交差しながら揺れ動く

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【詩】 春おもう

【詩】 春おもう

鈍重な暗い幕の隙間から
滑り落ちる陽の手に触れられ
長い夢見心地の童話は終わりを告げた

予感めいた蕾をつける梅の枝
待ちわびるその姿は
幹のうねりを止め
一心に血管をみなぎらせる

今にも折れそうな
毛細な枝の隅々にまで
血を行き渡らせ
淡い紅色に染めあげる

街の戸口は開かず
空に轟く鐘の音はまだ鳴らない
風向きは以前として北をさし
遠くの山には濁った雪を残す

訪れを告げる梅の花
あたり一面

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【詩】 船はゆく

【詩】 船はゆく

弓なりにすすむ船はゆく
きらきら輝く水平線
その先の僕らの生活へ

旅する人 働く人
悲しむ人 笑う人
ずっと続く僕らの日常

船は物を運ばない
知らない毎日を運んでいる
いっぱいの思いを乗せている

夜、うねる海は真っ暗で
打ちつける高い波は教えてくれる
自然の言葉と厳しさを

されど船はゆく
僕らを乗せてどこまでも
放たれた矢のように
思いは闇夜を貫いて

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【詩】 末路

【詩】 末路

値札をつけたがる弁護人
汚れた川に浮かぶ生活の切り貼り
思いのない焦燥を訴える偽装

混じり気のない綺麗な欲の色
恍惚と人の血に映る自分をみつめる
物事は簡潔さが明確な力をもつ
肝心なのは
魅せることで見せないこと

死へと誘う確かな眼のドローン
駆り立てる回転パネル
住み家を隠す提供者

ええ、見返りはいりません
喜んでいただければ幸いですから

もはや人は歌うことをやめました
もはや人は見るこ

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【詩】 陽の下にある暮らし

【詩】 陽の下にある暮らし

人は太陽を模倣し光を得たんだ
幼い頃は母親を起こすほどに怖かった
真っ暗な夜も
今では明かりをつけるとまるで昼間のよう

人は太陽の光から知恵を授かったんだ
光は照らす
見えることと見えないことを
見えないことは
知恵で照らすことを教えてくれたんだ

太陽はすべてを明るみにさらす
人権や宗教は太陽からできたんだ
本来の人の内なる祈りを照らす
良心の結晶は光への憧れなんだ

なのになぜ争いは絶えない

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【詩】 星が生まれる時

【詩】 星が生まれる時

この思いは
燃え尽きる感情です
それとも
憧憬の追憶です
であるならば
逃れきれない私です 

      ※

夜明けを知らせる小鳥の翼
水面に照らされる朝の光
無限の闇に浮かぶ星の瞬き

この目で
この耳で
この肌で
収れんされる形なきもの
五感を越えて
重力を解き放ち
たしかな導きにいたる

      ※

前触れなく
光に射抜かれた慄える内感
憧れがノスタルジアの空に溶けていく
鳩の群れ

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【詩】 静夜の記憶

【詩】 静夜の記憶

私から吐き出される
言葉の生前の記憶は

怒りだ 嘆きだ
軋轢だ 確執だ
焦燥だ 衝突だ
軽蔑だ 嘲りだ
冒涜だ 呪いだ
幻滅だ 破滅だ
破壊だ 限界だ
無知だ 裏切りだ
無作法で 不愉快な
身に余る混沌だ

そんなものすべてが
散りばめられた愛へ向かう
悲しい矛盾に冷たくなりながら
振り向くことができない私に
気がつくと優しく降る雪が
足跡を残してくれた

クリスマスの夜だった
誰もいない静かな

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