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【詩】 陽の下にある暮らし

人は太陽を模倣し光を得たんだ
幼い頃は母親を起こすほどに怖かった
真っ暗な夜も
今では明かりをつけるとまるで昼間のよう

人は太陽の光から知恵を授かったんだ
光は照らす
見えることと見えないことを
見えないことは
知恵で照らすことを教えてくれたんだ

太陽はすべてを明るみにさらす
人権や宗教は太陽からできたんだ
本来の人の内なる祈りを照らす
良心の結晶は光への憧れなんだ

なのになぜ争いは絶えないのか
なぜ涙は乾き、熱は冷め
渇望に溺れるのか
  
なぜならば太陽が照らすから
人は時に深い矛盾を抱え
陽の下で乾きを覚えた人間は弱く
傲慢な姿をさらけ出す

太陽はさらす
今日も人は人を殺め
求めれば求めるほどに満たされず
自分に自分がそそのかされて
バベルの塔の頂上の高笑いは鳴り止まない

地上では
慈悲に満ちた母の目と小さな産声
街角に溢れる人を思う切なさと
願いが叶う歓喜
風景が醸し出す郷愁
死を前に涙する人々

この世は一度切りであると割り切り
人に寄り添えない者は
現世の荒野を狡猾に力任せに駆けて
幻の中で声だけが木霊する

この世は一度切りであると気づき
悲しみを強くする者は
尊さに感謝を知り
物質ではない喜びを覚える

優しさは手垢だらけだ
幾度も一途に反芻し
もはやそれであると思えないように
どうしても顕わになる感情です

本当の悲しみは強い
確かな優しさを生む
優しさは時を紡ぐ力だ
優しさは力学だ

なぜならば
僕らが今ここにいるから
現に太陽は
地上に立っている僕らの奇跡を照らしている




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