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【詩】 路地裏の一群

吹く風に
行き先尋ね路地裏向う
足、足、足

鋭く睨む
逆さま頭のとんがりお耳
猫、猫、猫

にわかに現れ瞳孔に夜灯る
標識の矢印が回転する摩天楼

壊れた音のラッパの調べに
とぼけた青色バケツの酸えた匂い
打ち上げられた体と
残飯まみれの菜根譚

鈍い光を放つ宝石の中に
道化師がうっすら映るうすら笑い
交わされた約束と
破られた幼な写真

街の隅で語られる会話
嘘も真も入り交じるきらびやか
鈍色に流れる川と
暗い底でうごめく大きな鯉

けたたましいネオンの中で
裸の足は絡ませあう
熱は奪われ
足はもつれる

真っ暗な部屋
行くあてもなくぶつかる
壁、壁、壁

吹き溜まり

その時
はたと気づくのです
どこからともなく
風になったのです

今日も行き場のない風たちは
ビルの間を吹き抜けて
束の間の現世を彷徨い歩く


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