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クラシック音楽歳時期 2021-2024

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毎日聴いたり演奏したクラシック音楽のためのノート。どんな音楽に触れて思い書いたかを思い出せば、あの頃の自分を思い出すことができる。もちろん誰に読んでもらえてどんな感想をいただける…
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記事一覧

ハイフィンガー奏法の悲劇

ハイフィンガー奏法の悲劇

これまでピアノのバッハのお話を30話+番外編3話を書き続けて、特に知見を深められた点は次のことです。

フォルテピアノがピアノへと変わってゆくにつれて(4オクターヴから7オクターヴまで音域が広くなり)

鍵盤の重さは次第に増してゆき(弦を叩くハンマーアクションが進化したため)

最初期のフォルテピアノから19世紀半ばに完成された現代ピアノに至ると、なんと鍵盤の重さは八倍にもなったということでした(

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ピアノのバッハ30:翻訳されるバッハ

ピアノのバッハ30:翻訳されるバッハ

前回からの続きです。今回も14000字強。

長いですが、引用が多いので読みやすいはずです。

楽しんでいただけると幸いです。

最後にバッハのデジタル肖像画付き(笑)。

外国語で書かれた音楽を(バロック時代の手法で書かれた音楽を)ピアノの言葉に翻訳する(ピアノというチェンバロとは異質の楽器で演奏する)ことには多くの困難を伴います。

チェンバロとピアノの言葉の違いチェンバロの言葉

チェンバロ

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シューマンの「歌の年」を考える

シューマンの「歌の年」を考える

秋も深まる11月。なかなか心穏やかに…とはいかない今年の秋ですが、変わることなく季節を運んでくれる自然に、ほっとする思いがします。

先日、なにげなく発信したツィートが思いもかけず拡散する…という経験をしました。なぜこのツィートが…?と驚きを感じるとともに、切り取られた短いツィートが、受け止めようによっては、自分の意図を越えた解釈を招きかねないことにも気づかされました。私が前提としている土台があっ

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牛肉を愛した偉人たち ⑯・フランツ・シューベルト

牛肉を愛した偉人たち ⑯・フランツ・シューベルト

 手元に『シューベルトの手当て』という一冊の新刊本がある。クレール・オペール著、鳥取絹子訳、アルテスパブリッシング社。著者は1966年パリ生まれ、チェロ奏者、アートセラピスト、作家。本の帯によるとオペールは自閉症の若者、認知症の高齢者、終末期の患者たちに寄り添い、チェロを奏でつづける。音楽がもたらした奇跡の物語。
 彼女の演奏によって、患者の痛みは10~50%軽減し、不安解消の効果は90%近く、看

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手の中の音楽36〜マレイ・ペライアのJ.S.バッハ「ピアノ協奏曲」

手の中の音楽36〜マレイ・ペライアのJ.S.バッハ「ピアノ協奏曲」

暑ーい夏の午後、BGMに選んだのはバッハのピアノ協奏曲でした。

バッハの時代ですから、元々はハープシコード用に作られた作品、1台用、2台用など何曲か作曲していますが、私が愛聴するのはマレイ・ペライアとアカデミー・セント・マーチン・イン・ザ・フィールズが2000年から01年にかけて録音し、ソニークラシカルからリリースした2枚のアルバムです。

ハープシコードをピアノに替えて、1番から7番までが収録

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【ライプツィヒ】バッハの街って聞いたけど,本当?

【ライプツィヒ】バッハの街って聞いたけど,本当?

私の音楽家職場見学,第2段です。

こんにちは!きりぎりすです。
お忙しい日々の貴重な時間をありがとうございます。

今回もライプツィヒです。

前回の記事で申しました通り,
私はある人が好きで好きで堪らんので,
ライプツィヒに行ったと言っても過言ではないくらい
この人が好きです。

誰ですか!
J.S.バッハさんです!

いやあ感動しました。

町のピアノ教室に通っていた
小さな私はある日先生に

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バッハ 無伴奏チェロ組曲 を聞いて

バッハ 無伴奏チェロ組曲 を聞いて

雑談

こんばんは。

最近はもっぱらヴィオラを練習している昨今です。
これは別に、ヴィオラ専攻になったわけではなくて、先生と自分の都合がなかなか合わず、ヴァイオリンのレッスンが入れられないからです。

ヴァイオリンのレッスンが入れられないから、まあヴィオラでも練習するか、という感じです。

今、ヴィオラで練習しているのは

・ SITT 音階(Amoll, Emoll, Ddur)、重音33番

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黄昏のまばゆい光 -オペラの演出を巡る随想

黄昏のまばゆい光 -オペラの演出を巡る随想



私は、若い時映画を沢山見ていたせいもあり、舞台や演劇を観に行く楽しみを、正直そこまで味わっていない人間です。

とはいえ、演劇の中でもオペラは、ジャンルとして自分が大好きだというのと、昔の貴重な演出が結構映像ソフトとして残っており、今でも色々と見る楽しみがあります。

今日はこのオペラの舞台における印象深い演出について、少し語りたいと思います。

私が好きな演出家の一人に、1997年に

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宮沢賢治はどの程度バッハを聴いたのか?(ひょっとすると…)

宮沢賢治はどの程度バッハを聴いたのか?(ひょっとすると…)

宮沢賢治は日本のアマチュアチェリストの先駆者、大先輩だと思っている。
「セロ弾きのゴーシュ」の作者だから、ということではなく、賢治自身が20代後半に突然チェロをやりはじめ、当時にしては最高級の楽器を入手し、あてもないのに寒い冬にわざわざ東京まで重いチェロケースーーー今みたいに軽いケースがなく大きな木箱のようなものだったらしいーーーをかついで上京、飛び込みでレッスンをうけ、故郷に戻った後も農業や仕事

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ピアノのバッハ29: チェンバロ音楽をピアノ音楽に翻訳する

ピアノのバッハ29: チェンバロ音楽をピアノ音楽に翻訳する

前回からの続きです。

一万二千字を超える長文ですが、外国語の詩の引用、お勧め録音なども含んでいるために、読みやすいはずです。段落分けも工夫したのでスマホでも快適に読めると思いますが、タブレットやPCで読まれるのが最適です。

楽しんでいただけると幸いです。

フリードリヒ大王の主題ヨハン・セバスチャン・バッハが最晩年の数年間にジルバーマン製ピアノに親しんでいたことは、状況証拠と生前のバッハを知る

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シルヴィウス・ヴァイスのファンタジア

シルヴィウス・ヴァイスのファンタジア

ヨハン・セバスチャン・バッハやゲオルグ・ヘンデルやドメニコ・スカルラッティが生まれた一年のちの1686年に生まれて、バッハが死んだ同じ年の1750年に天に召された、演奏家として音楽教師として当時はバッハ以上の名声を博していたシルヴィウス・ヴァイス Sylvius Weiss (1686-1750) をご存知でしょうか。

今回は彼の代表作を紹介する短い投稿です。2200字。

バッハがそうであった

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アーノンクール/CMWによる「若き日の神童モーツァルト」~初期交響曲集

アーノンクール/CMWによる「若き日の神童モーツァルト」~初期交響曲集

アーノンクールらしいこだわりに満ちた2枚組アルバム―モーツァルト10代の初期交響曲集の第2弾。家族のように最も信頼のおけるウィーン・コンツェントゥス・ムジクス (CMW) との共演で、しかも手紙の朗読付きという点は第1弾と同じコンセプトだが、こちらは名曲「小ト短調」K.183を含むとあって、より注目できるアルバムとなっている。

アーノンクールが早くからモーツァルト演奏に力を注いできたことはよく知

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オーケストラ版より「第九」のティンパニの凄さが良くわかる。ベートーヴェン「第九」初演200周年(2024年)

オーケストラ版より「第九」のティンパニの凄さが良くわかる。ベートーヴェン「第九」初演200周年(2024年)

フランツ・リストが、ベートーヴェンの「第九」を2台のピアノで演奏するために編曲したバージョンについて以前書いた。

オーケストラと、4人の声楽ソリストと合唱という大規模な作品を、ピアノ2台のみで表現するという大胆なこの試みについて「リストはうまく再現したものだ」と思っているのだが

それでもまだ何か、もの足らない・・・

と思った人がいたようで、そこで加えられたのが、なんと「ティンパニ」なのである

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バッハを聴く フランチェスコ・トリスターノ

バッハを聴く フランチェスコ・トリスターノ

フランチェスコ・トリスターノのピアノリサイタルを横浜のフィリアホールに聴きに行ってきました。

フランチェスコ・トリスターノってどんな人?ルクセンブルク出身の異才ピアニスト。ルクセンブルク音楽院、パリ市立音楽院等で研鑽を積んだ後、ジュリアード音楽院にて修士号を取得。
ラ・ロック・ダンテロン国際ピアノ・フェスティヴァルをはじめ著名な音楽祭に参加するほか、ヨーロッパ、アジア、アメリカで演奏活動を展開し

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