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1961年生まれ男性です。ロンドンに10年、香港に3年在住しました。仕事、海外経験、先…

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1961年生まれ男性です。ロンドンに10年、香港に3年在住しました。仕事、海外経験、先人たちにも導かれた本、マンガ、映画、演芸や様々な舞台を、自分なりに吸収してきました。現在進行形の事柄も含め、アウトプットしています。読んでくださる方の日々が、少しでも潤えば幸いです

最近の記事

本当に今さらですみません(その1)〜平野啓一郎に辿り着いた「マチネの終わりに」

Amazon Audibleに平野啓一郎の作品がアップされていることを発見した。ずっと気になっていたが、読めていない作家の一人である。聴き始めたのは「ある男」(2018年)。進むにつれ、これは凄い小説だと思い、書籍版を購入し並行的に読んだ。 今まで、どうして彼の作品を読んでこなかったのかと後悔。いや、“過去は変えられる“。すぐに感想を書こうと思ったが、その前に代表作の一つ「マチネの終わりに」(2016年)を読んでからにしようと思った。 ほとんど完璧な小説と言える「ある男」

    • 旅の記憶38〜ロンドン赴任直後の出張先はバルセロナ

      土曜日朝のバラエティ番組「サタプラ」を見ていたら、バルセロナが特集されていた。私は、ふとかつてのバルセロナ訪問を思い出した。 1996年9月、私は念願の海外赴任となり、ロンドンに降り立った。勤務地は、ロンドンの証券現地法人、日本で従事していた社債の引受関連業務を、その本場で行うことになった。 一つの役割は、欧州の発行体(債券発行で資金調達する会社や諸団体)を訪問し、市場や投資家の動向を説明しながら、我々の能力をアピールし、上手くいけば起債(債券発行)を取りまとめる主幹事を

      • 高校生の心理は難しい〜展覧会に触発され橋本治著「桃尻娘」を再読

        先日、神奈川近代文学館で開催中の「帰って来た 橋本治展」について書いた。展覧会を観たら、無性に「桃尻娘」(ポプラ文庫・講談社文庫電子版)を再読したくなった。 本作は1977年小節現代新人賞佳作となった、橋本治のデビュー作である。展覧会の掲示・プログラムには、<「野坂(昭如)が賞めてたよ」と友人に選評を聞かされて、心ひそかに「ザマアミロ」と言って泣く。>と書かれている。 当時高校生の私は、同じ世代が主役となる小説が出たと飛びつき、以来橋本治という人をフォローした。 あらた

        • 最上級のボクシング興行(その2)〜井上尚弥vsルイス・ネリ@東京ドーム

          (承前) そして第4試合、K-1から転向、9戦目にして世界に挑戦する武居由樹が、WBO世界バンタム級王者のジェイソン・マロニーに挑戦した。序盤は武居ペースに見えたが、徐々にマロニーが盛り返して来たように見えた。そして最終ラウンド、マロニーの猛攻に、武居は今にもダウンしそうに見えた。会場も騒然、とにかく逃げ切れという祈りのような歓声の中、武居は踏みとどまった。 もう、この時点でボクシングというスポーツの素晴らしさに感動していた私だが、判定はどうか。1Rにロー・ブロウで減点さ

        本当に今さらですみません(その1)〜平野啓一郎に辿り着いた「マチネの終わりに」

        • 旅の記憶38〜ロンドン赴任直後の出張先はバルセロナ

        • 高校生の心理は難しい〜展覧会に触発され橋本治著「桃尻娘」を再読

        • 最上級のボクシング興行(その2)〜井上尚弥vsルイス・ネリ@東京ドーム

          最上級のボクシング興行(その1)〜井上尚弥vsルイス・ネリ@東京ドーム

          淀川長治さんが、永六輔に「東京で一番おいしいステーキを探して食べてきなさい」と言ったそうだ。永さんは、帝国ホテルでステーキを食べ、「とても美味しかった」と淀長さんに報告した。すると、淀川さんは永さんを某社社員食堂に連れて行き、ステーキ定食を食べさせた。そして、「君は東京で一番いいステーキと一番ひどいステーキを食べた。これから、どんなステーキが出てきても、君は自分の価値観でものが決められるね」と。 私はボクシングを生で観たことがなかった。一度はと思っていたが、背中を押すボクサ

          最上級のボクシング興行(その1)〜井上尚弥vsルイス・ネリ@東京ドーム

          亀戸餃子から亀戸天神へ〜ゴールデンウィーク最終日

          二年前に義父の墓参帰りに亀戸餃子を訪れたことを書いた。ゴールデンウィーク最終日の朝、思い立ってお墓のある船橋法典まで出かけた。 お墓参りの後は、近くにある「楽天地天然温泉 法典の湯」に立ち寄る。墓参が主なのか、スーパー銭湯が本当の目的か。。。。 GW最終日ということもあって、疲れを癒そうとする人で大盛況である。さっぱりしたところで、ランチをどうするか。駅前の「讃岐饂飩 まるは」は入店待ちの人が相当いる。うどんは「釜竹」で食べたばかりでもあるので、いつものPlan B、亀戸

          亀戸餃子から亀戸天神へ〜ゴールデンウィーク最終日

          大阪から来た名店〜うどん「根津 釜竹」で釜揚げをいただく

          「大吉原展」の会場、東京藝術大学の最寄り駅は上野あるいは根津。ならば根津のあの店でランチを取ろう。うどんの名店「根津 釜竹(かまちく)」である。 大阪・羽曳野のあったうどん店「釜竹」の二代目が東京に進出、あっという間に名店として有名になった。「食べログ」によると、出店は2005年。もう20年近くが経過した。 11時半の開店だが、到着したのは11:05、既に10名以上の方が開店を待っている。昨日書いた通り、GWの祝日谷間の平日である。ただ、このくらいの人数の場合、外に置かれ

          大阪から来た名店〜うどん「根津 釜竹」で釜揚げをいただく

          東京藝術大学大学美術館は“大“賑わい〜「大吉原展」が示すもの

          東京芸大の美術館で開催されている「大吉原展」。本展を知ったのは、皮肉にも本展がネット上等で問題視されていたという報道だった。 例えば4月25日の朝日新聞「『大吉原展』に開催前から批判 負の歴史の見せ方は」という記事の中には、<「女性の性暴力の歴史に触れていない」「吉原を美化している」といった批判が上がった>と書かれている。どうも、開催前の広報の仕方にも問題があったようだ。 私は“吉原“が好きである。と書くと、誤解あるいは上記のような批判を受けるかもしれない。正確に言うと、

          東京藝術大学大学美術館は“大“賑わい〜「大吉原展」が示すもの

          クリント・イーストウッド初監督作品〜怖〜い「恐怖のメロディ」

          2022年に文藝春秋に掲載された、小林信彦「わが洋画・邦画ベスト100」。洋画については、配信されているものは殆ど観たと思っていたが、「恐怖のメロディ」(1971年)が未見だった。(U-NEXTで配信中) クリント・イーストウッドの初監督作品、主演も本人である。 イーストウッド監督作品は、「許されざる者」(1992年)、アカデミー作品・監督・主演女優・助演男優賞受賞の「ミリオンダラー・ベイビー」(2004年)、「ジャージー・ボーイズ」(2014年)などなど、観た映画は、全

          クリント・イーストウッド初監督作品〜怖〜い「恐怖のメロディ」

          ラジオネタをもう一つ〜NHK「ヤマザキマリラジオ」に萩尾望都登場

          ヤマザキマリととり・みきの「プリニウス」(新潮社)が、第28回手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞しました。おめでとうございます!  そのヤマザキマリが萩尾望都をゲストに迎えたNHK「ヤマザキマリラジオ」が5月2日に放送され、5月9日までradiko・NHKラジル★ラジルで配信されています。 この二人の対談が2時間近く聴くことができる番組、様々なトピックに会話が飛び跳ねていきます。 なお、以前にも書いた“萩尾望都クエスト“(入手可能な全作品を時系列に再読・初読という、個人的なプ

          ラジオネタをもう一つ〜NHK「ヤマザキマリラジオ」に萩尾望都登場

          「村上RADIO」特別編、まだradikoで聴けますよ(あと数日)〜小澤征爾さんの遺した音楽を追って

          月1で放送されている「村上RADIO」(TOKYO FM/JFN38局ネット)ですが、4月は2回の放送。4月29日、“昭和の日“の祝日は、特別編として“小澤征爾さんの遺した音楽を追って“と題して、2月に他界された小澤征爾さんの追悼番組が放送されました。 村上さんは、「小澤征爾さんと、音楽について話をする」(新潮文庫)というインタビュー本を上梓されていますが、お二人の親交を通じたエピソードも挟みながら、小澤征爾さんの録音を時系列で紹介するという構成になっています。 HPに内

          「村上RADIO」特別編、まだradikoで聴けますよ(あと数日)〜小澤征爾さんの遺した音楽を追って

          Netflix版「三体」は流石の脚色〜舞台は中国からイギリスへ

          中国テンセント版に続いて、3月から配信されたNetflix版の「三体」。この二つのドラマ化は、まったく違うアプローチだった。 原作となった小説「三体」については、こちらの記事を参照して欲しい。そして、テンセント版のドラマは今年の1月に記事にした。 今回の主題はNetflix版である。 WOWOWおよびU-NEXTで配信されているテンセント版は、基本的に原作に忠実である。それ故、原作を読むだけではイメージしづらい点を補完することができる。全30話で、「三体」三部作の第一部

          Netflix版「三体」は流石の脚色〜舞台は中国からイギリスへ

          「帰って来た 橋本治展」〜GWに神奈川近代文学館へ

          GWである。遠出することもなく、おとなしくしている。2日に1回はジムに行き、ウォーキングする。かつてはエアロビクスのレッスンに参加していたのだが、都合の良い時間のものがなくなり、単に歩いているだけである。 4月29日、祝日スケジュールで臨時レッスンが午前中にあり、本当に久方ぶりに参加してみた。ついていけるか不安だったが、結構体が覚えていて、なんとかこなした。一風呂浴び、自由が丘から東横線で元町・中華街駅に向かった。目的地は神奈川近代文学館である。 駅を降りエスカレーターで

          「帰って来た 橋本治展」〜GWに神奈川近代文学館へ

          二つの「砂の器」から感じる“腕力“〜橋本忍が生み出した松本清張の代表作

          春日太一著「鬼の筆〜戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折」(文藝春秋)については、すでに書いた。読む前に見た橋本作品についても記録した。 本書を読んだ後、再見した作品がある。「砂の器」(1974年松竹/橋本プロ)である。橋本忍はデビュー作「羅生門」(1950年大映)以来、数々の名作を脚本家として送り出したが、そのキャリアの頂点と言えるのが「砂の器」である。少なくとも、「鬼の筆」を読むとそう感じる。 改めて観ると、本当に面白い映画である。ミステリー小説を原作とする映画にあり

          二つの「砂の器」から感じる“腕力“〜橋本忍が生み出した松本清張の代表作

          「思い出横丁」、私は一択で「ささもと」〜ますます国際的に

          大学に入った年、新宿 西口の「思い出横丁」に連れて行かれ、初めてホッピーなるものを飲んだ。その“思い出“もはるか遠くになった頃、「思い出横丁」に出入りするようになった。鰻串の「カブト」、食事を取るなら「つるかめ食堂」、そして「ささもと」。 今では「ささもと」一択。とは言え、コロナ禍以降、すっかりご無沙汰していた。春になり、コートも脱ぎ、ついにジャケットも必要なくなった今こそ、「ささもと」再訪の時と「思い出横丁」に向かった。 時間は18時過ぎ、空席があることを祈りつつ、たど

          「思い出横丁」、私は一択で「ささもと」〜ますます国際的に

          父と息子のつらい物語〜「アイアンクロー」フリッツ・フォン・エリックの“鉄の爪“

          小学生の頃、プロレスに夢中になった。「プロレス入門」という本を買い、隅から隅まで何度も読んだ。当時の外国人レスラーの多くにはニックネームがつけられていた。 “鉄人“ルー・テーズ、“人間発電所“ブルーノ・サンマルチノ、“アラビアの怪人“ザ・シークなど、子供心に興奮をかき立てる異名が並んだ。“荒法師“ジン・キニスキーなどという、意味不明のものもあったが。 そして、“鉄の爪〜アイアン・クロー“フリッツ・フォン・エリックである。得意技は、“ブレーン・クロー“あるいは“脳天締め“と

          父と息子のつらい物語〜「アイアンクロー」フリッツ・フォン・エリックの“鉄の爪“