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エッセイ

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日記とか回想とか
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#ひとりごと

レタスチャーハンの記憶

レタスチャーハンの記憶

火の通ったレタスを初めて食べたのは、よく覚えているのだが、サークルの飲み会でいつも行く居酒屋だった。先代の幹事長のお気に入りだったという、昭和の香り色濃い大衆居酒屋で、誰かが頼んだレタスチャーハン。

卵と、なにがしかの肉と一緒に炒められていたレタスは、しゃきしゃきとしんなりを兼ね備え、それはそれは美味しかったのだった。

火の通ったレタスは、透き通ってきれいだ。
生のレタスをばりばり噛みちぎるの

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精神的貴族とのお茶会

精神的貴族とのお茶会

大学時代の友達と久しぶりに会った。どれくらい久しぶりかと会話履歴を見てみたら、なんと今年の2月以来だった。たいていふた月に一度会っていたのだが、GWに会う約束をしていたのに、私が体調不良で反故にしてしまったのだ。でもなにも言わずにいてくれた。

彼は紅茶とバラを愛し、フランス語も嗜む精神的貴族である。ぽやぽやとわかめのように波に揺られて生きている私に対し、彼は溢れる教養で知的に学び、働き、遊んでい

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オランジーナと子どもの頃のこと

オランジーナと子どもの頃のこと

オランジーナという炭酸飲料が好きで、見かけると週に一本くらいは買ってしまう。一日にコップ一杯までと決めているので、500mlを飲み終えるのにいつも三日かかる。もともと微炭酸なので、三日目にはほとんど気が抜けている。それでもおいしい。

この飲み物を最初に見かけた頃は、濃い青のパッケージだったように思うが、最近は水色のパッケージの「Airy」というものしか見かけない。何が違うのか、私にはわからない。

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今朝見た夢と散歩とコーヒー

今朝見た夢と散歩とコーヒー

悲しい夢を見た。
4年前に相手から突然連絡を絶たれたきり繋がりの切れた、高校時代の大切な友達の夢だった。

夢の中で、彼女はなにかの病気で入院というか、休養している。
私は彼女が不在の間に、その施設を訪れ、彼女が書いたノートを盗み読みする。
しかしそこで彼女が帰ってきてしまい、私はまた強く拒絶されるのだ。

ここが夢特有のよくわからない要素なのだが、ノートには日記だけでなく、楽譜が記されていた。彼

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ポール・マッカートニーが好き

ポール・マッカートニーが好き

昨日実家に遊びに行ったら、「ビートルズのテレビがやってたから録画しといたよ」と、父がNHKの「映像の世紀」を見せてくれた。
私が初めて好きになった音楽が、ビートルズである。私の家族はみんな、ビートルズといえば私だと思っていて、なにかと情報をくれる。

小学生のときビートルズを好きになったが、高校以来邦ロックに浮気していて、ずいぶん聞いていなかった。テレビで久々にライブ映像を見て、やっぱりいいなぁと

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休日という概念の出現

休日という概念の出現

今日はバイトが休み。習性で6時に意識が浮上するが、意地で二度寝三度寝を決め込み、ようやく起きたのは9時だった。

朝ごはんは昨日から決めていた、トマトチーズトースト。今日のトマトはあまり熟していなくて、甘みよりも酸味がありしゃりしゃりしていたが、果物みたいでそれはそれで美味しかった。りんごや梨みたいな。
それからミニサーターアンダギーをひとつつまみ(近所のスーパーのベーカリーコーナーで売っているの

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労働の喜びを感じた話

労働の喜びを感じた話

午前中はバイトをして――本当はパートだが、何が違うのかわからないしバイトと呼ぶ方が慣れているので――、お昼は卵かけごはんで、バイト後のお決まりの昼寝をして、むくりと起き上がって夫の分のお米を研いだ。

いつもこの時間はアイスカフェオレを飲むのだが、突然アイスティーが飲みたくなって、リプトンのイエローラベルを2パック使って作った。しかし山盛りに氷を入れてもぬるくて、結局一口しか飲まずに冷蔵庫に放り込

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兄と映画館

兄と映画館

10歳年上の兄は、私に映画館の楽しみを教えてくれた。

友達は少なく、恋人はおらず、スポーツもゲームもしない兄の唯一といっていい趣味が、映画だった。
兄の部屋に行くといつも、小さな箱型のテレビに知らない洋画が映っていた。棚に、床に、ビデオテープとDVDが年々うず高く積もっていった。

私が小学校高学年の頃からだろうか、大学生の兄は時折、映画館に連れて行ってくれた。ポイントが余って仕方ないのだと言っ

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ダウナー系人間

ダウナー系人間

「○○くんのトークはアッパー系だよね。俺のラジオはダウナー系だからさ」
好きな声優が、ラジオでこんなことを言っていた。

対談相手の○○という声優は、「さあ、今回も始まりましたこの××ラジオ!」という感じで、ハイテンションに喋る。一方私の好きな声優は、「……はい、皆さんどうもこんばんは。声優の△△です」というふうに、淡々と落ち着いたトーンで喋る。

アッパー、ダウナーという言葉をドラッグ以外に使う

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男の子になって新宿を歩く

男の子になって新宿を歩く

私の私服には、主に2つのパターンがある。女の子っぽい服と、男の子っぽい服だ。
説明する必要はないかもしれないが、前者はふんわりしたスカートやカーディガン、花やレースのモチーフのブラウスで、後者はジーンズやパーカーや襟のついたシャツ等である。

人と会う予定のときは、たいてい女の子服を選ぶ。お出かけという感じで気分も上がるし、多少なりともフォーマルな方が相手に失礼がないと思うからだ。

一人で出かけ

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病んでもできる家事は洗濯

病んでもできる家事は洗濯

2023.5.3 11:15

今日も快晴。穏やかな風に洗濯物が揺れている。
私は洗濯が好きだ。この家での私の仕事は主に、料理、買い物、掃除、洗濯の4つだが、調子が悪くて他の3つができないときも、洗濯だけは苦にならない。
機械がやってくれるから、と言ってしまえばそれまでだが、ひとつひとつ広げて干したり、取り込んだり、畳んだり、意外とアナログな作業も多いのが洗濯である。なぜ好きなのかはよくわからない

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少女ではない私の二日酔い日記

少女ではない私の二日酔い日記

2023.4.29 10:53

窓際にいる。風が強い。レースのカーテンが、風をはらんでぶわりと膨らむ。
桜庭一樹の『ファミリーポートレイト』を読もうとした。16歳の私に、頭を殴られたような衝撃を与えたこの本は、ずっと心の中の特別な位置にある。
主人公が酒と煙草と文学に溺れる第二部から読み始めたが、ここ三日ほど何度も読もうとして、ついさっき諦めた。

読めないのだ。高校生の私の琴線に触れた言葉選び

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風呂上がりの水と透明な声

風呂上がりの水と透明な声

2023.4.28 14:43

予定通りスーパーでカレーの材料を買い、シャワーを浴びて髪を乾かした。
私は髪を洗って乾かすことがなにより苦手なので、それができた今日は自分を褒めてやりたいと思う。ただ、ドライヤーをしたら床が髪の毛だらけになったので、掃除機をかけた方がいい。なにせ、今週はまだ一度も掃除をしていないのだ。普段は三日に一度くらいはかけるようにしているのに。旅行ボケと言えば言い訳が立つだ

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酒と煙草は非日常

酒と煙草は非日常

2023.4.28 8:19

今日も快晴。なぜか5時に目が覚める。依然としてよく寝ても眠く、目の奥に痛みがあり(眼精疲労?)、頭が重いが、不思議と気分はいい。二人分の朝ごはんを準備して夫と食べ、洗濯をして、今日も窓辺でスピッツを聴いている。いまは、「裸のままで」がかかっている。爽快で好きなナンバーだ。

カフェインとアルコールに沈んで過ごしている。別に目を覚ましたいとか酔いたいと思っているわけで

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