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歴史の扉を開く3本の鍵『銃・病原菌・鉄』/ジャレド・ダイアモンド

 こんにちは!
「noteの本屋さん」を目指している、おすすめの本を紹介しまくる人です!

 なぜユーラシア大陸の人々が世界を支配するようになったのか……?
 なぜ文明は地域によってこれほどまでに発展に差が生まれたのか……?

 ジャレド・ダイアモンドによる『銃・病原菌・鉄』は、これらの根源的な問いに、地理的・環境的な根拠をもって考証していく壮大な試みです。

 この本は刊行以降、世界的ベストセラーで知られています。朝日新聞「ゼロ年代の50冊」でベスト1を飾り、低迷していた草思社を救った1冊といっても過言ではないでしょう。

 ゼロ年代の大学生なら、この本を読んだと思います。講義で必ず取りあげられる必読書とされていたからです。

 再脚光を浴びたのは、2020年のコロナ禍以降でしょうか?
 コロナの拡散とこの本を結び付けたオンライン記事であふれていたように思います。

 今日ではひろゆきがすすめまくっていることで知られていますね。
 
 個人的に、この本のスゴみは、全ての展開に緻密な調査があり、エビデンスが用意されているということだと思います。
 ぜひ、前に紹介した『サピエンス全史』や『利己的な遺伝子』とあわせて読んでいただきたい!

 それでは『銃・病原菌・鉄』を紹介していきます!

ニューギニアの友人からの素朴な疑問が出発点

「なぜ白人がこんなに多くのものを作り、ニューギニアにはないのか?」

 この疑問をきっかけに、ダイアモンド氏は1万3000年の人類史を紐解き、文明の不均衡な発展の謎に挑みます。


内容

『銃・病原菌・鉄』は、1万3000年の人類史を紐解き、なぜユーラシア大陸の人々が世界を支配するようになったのか、その理由を地理的・環境的な要因から解き明かそうとする壮大な試みです。

  • 疑問の出発点 ニューギニアの友人から投げかけられた「なぜ白人がこんなに多くのものを作り、ニューギニアにはないのか?」という疑問から出発

  • 地理的な優位性 ユーラシア大陸は、東西に広がる広大な大陸で、気候や環境が比較的均一であった。これにより、農作物や技術が東西に伝播しやすく、文明の発展を加速させた

  • 農耕と家畜 ユーラシア大陸には、農耕に適した植物や家畜化しやすい動物が多く存在した。農耕は食料の安定供給を可能にし、余剰食糧によって専門職を生み出し、文明を複雑化させた

  • 病原菌 家畜との密接な生活は、ユーラシア大陸の人々に病原菌に対する免疫を与えた。一方、他の地域の人々は免疫を持たず、ヨーロッパ人との接触で多くの命を落とした

  • 技術の発展 農耕や家畜の飼育によって生まれた余剰時間と資源は、技術革新を促進させた。金属加工技術の発展は、より強力な武器や道具を生み出し、征服を容易にした

「銃・病原菌・鉄」というタイトルの意味

  • 銃 ユーラシア大陸で生まれた高度な武器技術の象徴

  • 病原菌 ユーラシア大陸の人々が免疫を持っていた病原菌は、他の地域の人々にとって致命的

  • 鉄 ユーラシア大陸で発展した金属加工技術は、強力な武器や道具を生み出した


1万3000年前、世界は平等だった

 今から約1万3000年前、世界中の人類は狩猟採集生活を送っていました。食料を探し、移動しながら暮らす日々。道具は石器や骨角器など原始的なもので、どの地域の人々も似たような生活レベルでした。

農耕の誕生と文明の夜明け

 しかし、あるとき中東の肥沃な三日月地帯で農耕が始まりました。人々は麦や豆を栽培し、定住生活を始めます。農耕は安定した食糧供給を可能にし、人口増加と社会の複雑化を促しました。これが文明の始まりです。

 農耕と同時に、動物の家畜化も進みました。羊、ヤギ、牛、豚などは、食料だけでなく、毛皮、労働力、肥料をもたらし、農耕社会を豊かにしました。

ユーラシア大陸の有利な条件

 農耕と家畜化は、ユーラシア大陸全体に広がっていきました。ユーラシア大陸は東西に長く、気候が比較的温暖で安定していたため、農作物や家畜、そして技術が伝播しやすかったのです。

 一方、南北に長い南北アメリカ大陸やアフリカ大陸では、気候や環境の多様性が伝播を妨げ、農耕や家畜化の広がりが遅れました。

病原菌の脅威

 家畜と密接に暮らすユーラシア大陸の人々は、家畜由来の病原菌にさらされ続けました。天然痘、インフルエンザ、麻疹など、これらの病原菌は、ユーラシア大陸の人々に免疫をもたらしましたが、他の大陸の人々にとっては未知の脅威でした。

 15世紀以降、ヨーロッパ人が世界に進出すると、これらの病原菌は免疫を持たない先住民を大量に死に至らしめました。これが、ヨーロッパ人による征服を容易にした要因の一つです。

鉄と銃の時代

 農耕と家畜化によって生まれた余剰食糧は、人々に専門的な技術を開発する時間を与えました。金属加工技術の発展は、農具や武器の改良につながり、特に、の利用は、より強力な武器や防具を生み出し、軍事力の格差を広げました。

 そして、火薬の発明との登場は、戦争を一変させました。は、それまでの武器とは比べ物にならないほどの殺傷能力を持ち、ヨーロッパ人はこの圧倒的な武力で世界を征服していきました。

地理的条件が歴史を動かす

 このように『銃・病原菌・鉄』は、文明の不均衡な発展の要因を、地理的・環境的な条件に求めています。ユーラシア大陸の広大な東西軸、農耕と家畜化に適した動植物の存在、そして家畜由来の病原菌に対する免疫。
 これらの偶然の積み重ねが、ユーラシア大陸の人々に有利に働き、彼らが世界を支配するようになったと著者は主張しています。

現代社会へのヒント

  • 歴史の偶然性 私たちが享受している現代文明は、決して必然的なものではなく、偶然の積み重ねによって生まれたものであること

  • 環境問題の重要性 環境の変化が、文明の盛衰に大きく影響を与えること

  • 多様性の尊重 世界には多様な文化や価値観が存在し、それらを尊重することの重要性

感想

 ダイアモンドが人類史を壮大なスケールで捉え、なぜ文明の発展に地域差が生じたのかという根源的な問いに対する答えを探りだす作品だと感じました。地理的/環境的な要因が、いかに人類の歴史に大きな影響を与えたのかを、豊富な事例と詳細な分析を通して明らかにしています。

 特に印象的だったのは、私たちが当たり前のように享受している現代文明が、決して必然的なものではなく、偶然の積み重ねによって生まれたものであるという視点です。
 ユーラシア大陸の地理的条件や動植物相が、農耕や家畜化を促し、それが技術革新や社会の複雑化につながっていった過程は、実に興味深く、考えさせられるものがありました。

 また、病原菌が歴史の転換点に大きく関わっていたという点も衝撃的でした。ヨーロッパ人が新大陸に持ち込んだ病原菌が、免疫を持たない先住民を大量に死に至らしめたという事実は、征服の歴史の残酷さを浮き彫りにしています。

 ダイアモンドが提起する問いは、私たちが歴史や社会を理解する上で非常に重要なものです。

 なぜ文明は不平等に発展したのか、私たちは何を教訓として未来に生かすべきなのか。

 これらの問いについて深く考えるきっかけを与えてくれる作品だと思います。

 わたしはこの本を読んで、歴史に対する見方が大きく変わりました。
 そして、人に何かを伝えるときに、ダイアモンドのようにエビデンスを重視する性格になったと思います。
 本書を引き合いにゼロ年代のポストモダンを批判したいわけではないのですが、根拠に乏しく、知識人の言葉遊びになっている潮流は今でも感じています。

『銃・病原菌・鉄』は、これまで漠然と捉えていた歴史の流れが、地理や環境、そして偶然の要素が複雑に絡み合った結果であることを理解することで、より立体的に歴史を捉えられるようになった1冊です。

 こちらの本、単行本だと二千円前後ですが、Kindleだとほぼ半額なので、Kindleで読んでしまう、という手もあります。

この1冊で3つの要因が歴史をどう変えたかのかがわかる!
この壮大な物語を、あなたも体験してみませんか?

【編集後記】
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