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雑記

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#文学

「小林秀雄は永遠に新しい!」

今年は小林秀雄の没後40年だということで、講演会が開かれており足を運んだ。

小林秀雄の全集は一部を除いてほとんど読破したというのは私の数少ない自慢の一つなのだが、それでもこの講演会では多くの発見・学びがあった。

メモ書きにはなるが、その発見・学びを書き留めておこう。

大正期はベートーヴェンが人気だったが、小林秀雄と河上徹太郎によって日本におけるモーツァルトの人気が急上昇した。

小林秀雄の『

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西行の和歌

『西行全歌集』、家の中を2,3時間探し回ってやっと発見・・

たかだか1000円くらいだからもう一冊買えば良かったんだけど、なかなか見つけられなかったからこそ改めて愛着も湧いて来る。

それにしても和歌はやっぱり面白い。
この『西行全歌集』から1首引いてみよう。

茂りゆきし原の下草尾花出でて招くはたれを慕ふなるらん

「野原に茂っている草に、尾花がひょこりと顔を出し、風にそよがれている。そよいで

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文学についての小さなメモ

昔、太宰治の作品を読んで考えた文学についてのメモがあったので、何となく載せてみる。

【文学の定義】基本的に夢や希望は叶えられない。夢が潰えるからこそ、そこに物語がある。人間、生きているのが辛いからこそ、物語がある。甘い物語は都合のいいでっち上げでしかない。現実逃避をギリギリまで認識しつつ、それを超えていくのが文学。

かなり厭世的でこんなこと書いたっけと思うけど、太宰の作品を再読すれば、このこと

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乱読、乱聴、乱観!

昨日は丸一日使って、色んなものに触れた。色々読んで、聴いて、観て、とにかく何でもやってみた。

具体的には・・・

最晩年に病の中『男はつらいよ』の寅さんを演じた渥美清さんの胸中、悲哀と歓喜を同時に直視し続けたモーツァルトの世界観、愛に焦がれ愛に見放されたブラームスの人生、俗と聖に葛藤したドストエフスキーの宗教観、感情や愛とは何かについて論じたトマス・アクィナスの人間観など、様々な故人に思いを馳せ

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眠りを豊かに

17世紀の大作で、世界で最も売れている小説であるセルバンテスの『ドン・キホーテ』。3.4ヶ月ちまちま読み進めてようやく読了。

今回はその中から好きな一節を。

まったく、眠りってものを創り出したお人に幸いあれ、と言いたいね。だって眠りは、人間のあらゆる思惑を被い隠してくれるマントであり、飢えを取り除いてくれる食糧であり、渇きを癒してくれる水であり、寒さを暖めてくれる火であり、暑さを和らげてくれる

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趣味に貴賎はない!

音楽、美術、文学、映画などが好きというと、何やら高尚な趣味を持っているかのように思われる。それに被せるように「自分は漫画とかアニメにしか触れてなくて・・・」とよく言われる。いやー、趣味に貴賎なんてないでしょ!

漫画やアニメなども上に挙げたものと同じく芸術である。漫画家、作家、画家、作曲家それぞれに表現したいものがあって、その形式がたまたま漫画であり、文学であり、美術であり、音楽であるわけだ。

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ボブ・ディランを聴いてみる

最近ボブ・ディランを聴いている。僕が主に関心を寄せているのがその歌詞だ。というのも周知の通り、彼は2016年度にノーベル文学賞を受賞しており、僕の文学的関心が掻き立てられてしまうのだ。今回はそんな彼のあまりにも有名な曲”Blowin' in the Wind"についてのちょっとした感想を綴っていきたい。歌詞はこんな感じ。

How many roads must a man walk down
B

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文学作品を読むこと

文学作品を読むとはどういうことか。何が養われるのか。集英社新書から出ている『ことばの危機』はそんな疑問に答えてくれた。本書は毎年行われている東京大学のシンポジウムの文字起こしで、文学だけでなく納富先生の哲学的観点からも「ことば」を問う貴重な一冊。

ちょっと長いが、上記疑問を晴らしてくれた一節がこちら。

小説など虚構作品と接することで一番鍛えられるのは、文脈を推し量る能力です。登場人物の心境の想

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文学で広がる世界

昨日寝る前に松平千秋訳のホメロス『オデュッセイア』を読んでいて、なんとまぁ流麗な詩なこと、一人感動していた。ホメロスは詩のリズムの整えるために同じ表現を繰り返し使うが、その一つに「甘い眠り」という表現がある。寝る前に「今から甘い眠りだ〜」と思うだけで睡眠がただの睡眠以上の楽しみとなった。その上、アテナに眠りをふりかけられて。

文学は日常の行為一つ一つに彩りを付してくれるものなんだと直感した。

人はグラデーション!

タイトルの通り、人はみなグラデーションを持っている。前も書いたけど、誰かを″簡単に″説明する時にはその人の性格、職業などの特徴を一つか二つ挙げて説明することになる。ただそうなると、その人が持つ微細な特徴はすべて捨象され、実質を掴むことは到底できなくなる。

ある人は一人でいる時、誰かといる時、違う誰かといる時、書く時、読む時、歌う時、それぞれ違う自分が表出する。本来人はそういうものなのに、多くの場

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ドン・キホーテに学ぶ

日本人なら誰もが知る、驚安の殿堂ドン・キホーテ。名前の由来を調べてみたら、案の定セルバンテスの『ドン・キホーテ』で、その名に込められた願いが素敵でハッとさせられる。

これを解するには『ドン・キホーテ』の概要を簡単に触れておく必要がある。

中年のドン・キホーテは騎士道物語を貪り読み、現実世界もそうなのだと勝手に思い込んだ結果、弟子サンチョ・パンサとともに世の不正を正す騎士になるべく冒険(?)に出

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一つ一つの価値

世の中は便利になりまして、月額1000円程度でCDを買わずとも音楽を聴き放題、レンタル屋に行かずとも映画は見放題。信じられないほど豊かな時代です。

僕もその恩恵を大きく受けている一人ですが、どうも少し違和感があるのです。曲や映画が大量に溢れているからこそ一曲一曲、一作品一作品を深く味わう、味わい尽くすことが少なくなってしまったと感じるのです。昔はCDの発売日にCDショップに駆け込み、急いで帰宅し

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見過ごしやすい大切なこと

近頃文学についての本を色々読んでいて、これは文学作品をどう読むか?という問題に突き当たるのは不可避です。例えば、一文の「は」と「が」の助詞一文字から作品を考察したり、作中で雨が降っていれば何故「雨」なのかを考察したり、文学を読むことは面倒ながら奥深くて豊かな世界との交わることであることが朧げに分かってきました。

思い返せば、こういう一作品を丁寧になめるように読んでいく姿勢は高校の国語の授業で先生

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2.3月の予定

今年も早1ヶ月が経とうとしています。1月はレポート執筆に追われて授業の復習や参考文献用に論文や本を読んでいました。

そんな大学生活と1年弱お仕事させていただいたインターンも終え、2.3月は丸々自由に時間を使えることになっています。じゃあ何をするのか?ということになりますが、主に2つ予定しています。

1つ目は文学をひたすら読むことです。今まで何だかんだ触れてこなかった文学に踏み込んでみようという

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