眠りを豊かに

17世紀の大作で、世界で最も売れている小説であるセルバンテスの『ドン・キホーテ』。3.4ヶ月ちまちま読み進めてようやく読了。

今回はその中から好きな一節を。

まったく、眠りってものを創り出したお人に幸いあれ、と言いたいね。だって眠りは、人間のあらゆる思惑を被い隠してくれるマントであり、飢えを取り除いてくれる食糧であり、渇きを癒してくれる水であり、寒さを暖めてくれる火であり、暑さを和らげてくれる涼気であり、要するに、ありとあらゆるものが購える万国共通の通貨にして、羊飼いを王様と、またばか者を賢者と同じにしてくれる秤、あるいは分銅というものだからね。(牛島訳)

ホメロスは困難の連続である日常の中の眠りを、「甘美な眠り」と表現した。僕は眠るときにこれを思い出しては、自分が甘美な経験の中にいることを感じ、幸せになる。上記に引用した『ドン・キホーテ』も眠りの体験を豊かにしてくれるに違いない。文学を読むことの良さの一つは、何気ない日常に豊かな色を差してくれることだという確信はより強くなった。

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