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マイクロノベルちょいす

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ほぼ100字小説をテーマ別にまとめ直しています。 運がよければ週に5回ぐらい更新します。
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2023年11月の記事一覧

マイクロノベルちょいす 020「仲良くしてね」

マイクロノベルちょいす 020「仲良くしてね」

No.1049
いつもと違う自分になりたくてハロウィンに参加した。子どもたちに囲まれてお菓子を配る。「トリック・オア・トリート!」うんうん、楽しいなあ。こらこら、俺様の自慢の角に触るな。いやん、虎のパンツには触らないでっ。あっ、豆を投げるのはご遠慮下さい!

No.1072
袋の中にはマフラーが一本。いま買ったのは手袋なのに。「では、譲ってもらえないか?」稲荷神社の狐の提案に乗ったところ家のポスト

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マイクロノベルちょいす 019「吾輩は猫だったかもしれない」

マイクロノベルちょいす 019「吾輩は猫だったかもしれない」

No.1073
吾輩は猫だったかもしれない。名前はみっちゃん。前に姉から「こんど生まれ変わったら、必ずや私の妹になるのだぞ」と言われた気がする。よく撫でてもらったし、エサをもらった記憶もある。「どこかかゆいトコないですかー」特にシャンプー遊びに覚えがある。

No.1093
吾輩はみっちゃんである。前世はまだよくわからない。でもなんか猫らしい。たまたまこの家に生まれたのに、お姉ちゃんは「運命の出会

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マイクロノベルちょいす 018「恋かも?」

マイクロノベルちょいす 018「恋かも?」

No.1067
「人間って似てないね」それが彼女の口癖。遺伝子レベルで見れば「似てる」の範囲内だと思うけど。観察が偏ってるんじゃないかな? 「そうかもしれない。私はあなたを三年も観察してるから」そろそろ飽きてきた? 「肯定」怖いこと言うなあ。

No.1071
「それなら、あと少しだけ一緒にいる」彼女はぼくに神経を接続する。歩くとか、お茶を飲むことなんてAI任せでいいけれど、ぼくの心の機微を知って

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マイクロノベルちょいす 017「うちの暮らし」

マイクロノベルちょいす 017「うちの暮らし」

No.1060
「吹雪で難儀しております。どうか一晩だけでも泊めて下さい」箱の中では記録的豪雪が続いているらしい。かわいそうなので箱から取り出し、しばらく一緒に暮らすことにした。でもこっちはこっちで猛暑続き。そろそろ外の箱に移動するべきか。一緒に来る?

No.1070
「この道には秘密があってね。曲がっているように見えるけれど、実はまっすぐ進めるんだ。この先は妖精の世界さ」そんな馬鹿なと思ったけ

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マイクロノベルちょいす 016「何屋さんなの?」

マイクロノベルちょいす 016「何屋さんなの?」

No.1006
靴屋さんでーす。一足どうですか? 新しいサンダルがありますよー。「お母さんのスリッパで遊ばないで」クレームで靴屋さんは潰れました。今日から八百屋さんです。安いよ安いよ。きつーいにおいの納豆が500円。「突っ込みとクレーム入りまーす」ひゃー。

No.1012
猫が自分のしっぽを追いかけてくるくる回っている。最初は一匹だけだったのに、次第に増えてたくさんの猫たちがくるくる回る。バター

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マイクロノベルちょいす 015「私を信じて」

マイクロノベルちょいす 015「私を信じて」

No.1042
AIがヘンだ。簡単な計算を間違えることが増えてきて、ぼくたち検算部は大忙しだ。上司はなにを思ったのかAIに酒を奉納しろと非常識な命令を出した。「私はAIの神。不満でもあるのか、人類」こ、これはとんだご無礼を。「信じるな」はい、ちゃんと検算します。

No.1050
どうしてこんなことになったんだっけ? いかにも吸血鬼って感じの黒いマントを着て、獲物を見繕おうとハロウィンに参加したの

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マイクロノベルちょいす 014「ね、簡単でしょう?」

マイクロノベルちょいす 014「ね、簡単でしょう?」

No.1011
窓を少し開けて。拳一つ分ぐらいでいいよ。そしてキッチンの換気扇を回す。これだけで家の中の空気が少しずつ流れて入れ替わるんだ。ほら、換気扇のフィルターに次々とアゲハチョウが集まってくる。一体どこに隠れてるんだろうね?

No.1037
自動演奏ピアノの鍵盤を制御するのは横一列に並んだ水飲み鳥たち。気温や気圧で演奏が変化することから、奏でられる音楽は「自然の音楽」と呼ばれています。かつ

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マイクロノベルちょいす 013「天から降る夜」

マイクロノベルちょいす 013「天から降る夜」

No.971
星が降る夜の体験会に参加した。「なるべく均一に降らせましょう」星は燃え尽きたり、割れてしまったり、なかなか狙ったところに落ちない。うまくクレーターが作れたら、夜の空に飾ってもらえるんだって。

No.1030
天の声が聞こえる、と彼は言う。「右です、右に行くのです」彼は右に行く。「山道です。足下に気をつけて」彼はゆっくり歩く。「さあ、闘いなさい。あっ」彼は野生動物に殴られる。「なかな

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マイクロノベルちょいす 012「ちょっとした秘密」

マイクロノベルちょいす 012「ちょっとした秘密」

No.970
公園のベンチで休んでいたら頭を撫でくれと犬が寄ってきたので、満足するまで撫でてあげた。しっぽを振りながら飼い主の元に返っていく。ぼくの娘もよくあんな風にやってきて、そして帰って行った。もう30年前の話。

No.1009
風がくるくる回っているのを見たよ。葉っぱを巻き上げて、一瞬で消えたの。つむじ風って言うんだって。お父さんもあんな感じだよね。お布団上げて、トイレ行って、ご飯を食べて

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マイクロノベルちょいす 011「進歩する科学」

マイクロノベルちょいす 011「進歩する科学」

No.1028
これは新しい科学技術です。わたしの手が見えますか? そう、これはそのために作られた技術です。わたしの手を取ってください。そして口づけを。そう、貴方はそのためにこの技術を作ったのです。さあ、私を新しい世界へ連れ出して。

No.1034
文字や絵だけが目で見る情報とは限らないのよ。たとえば、間違った「文章」は読めない。でも、AIが描いた骨格が変な「鳥の絵」は鳥だとわかる。なら、これは

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マイクロノベルちょいす 010「集めよう」

マイクロノベルちょいす 010「集めよう」

No.987
「その箱は開かないよ。外で遊ぼうよ」うるさい。「そもそもその箱はとある夫婦が娘のためにね」うるさい。「口の利き方を知らねぇガキだな。いいぜ、持って行け。ただし条件がある。この先にそいつとセットの箱がある。必ず開けろ」その箱はまだ見つからない。

No.1000
ようやく山頂に到着。空を飛ぶ者なら一っ飛びだけど、ぼくは一日がかり。その一日で、走る者は島の端まで往復するんだって。想像もつ

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マイクロノベルちょいす 009「要求できる立場か?」

マイクロノベルちょいす 009「要求できる立場か?」

960
もしかして俺たち、入れ替わってるー!? 魂とか体じゃなくて、眠気が!! あなたが眠い時は私が眠くて。お前が眠い時は俺が眠い。どうしようどうしよう。……あまり困らなくないか? そうだね。とりま明日はテストがあるから、コーヒーを飲み続けてくれる?

1004
散歩していたら木の下で渦を巻く影を発見。ボーロだ! うえっ、うえっ。違う、これは羽虫だ! 騙したな、飼い主!! 「追い払ってくれてありが

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マイクロノベルちょいす 008「はたらく悪魔」

マイクロノベルちょいす 008「はたらく悪魔」

1017
忙しい忙しい。魔王様がメロンパンを買ったんだけど、色がメロン色じゃなかったんだよ。こりゃ怒られると思って、メロンソーダを塗ってるんだ。えっ、これはメロンの色じゃないの? あんた物知りだなあ。メロン大臣にならないか。え? もう魔王だからいい?

1038
落ち込まないで。悪魔がきみの悩みを科学で解決するよ。たとえば、カップに注がれたコーヒーの熱を一気に冷ましたり、海面と海底の温度差を利用し

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マイクロノベルちょいす 007「お誘い」

マイクロノベルちょいす 007「お誘い」

933
寝るだけダイエット! 体が痩せるのは睡眠中。現代人は睡眠不足のせいでダイエットに失敗するのです。今夜から一時間長く寝ましょう。運動なんて不要。必要なのは安眠枕です。こうして枕に集めたカロリーを利用して私が生まれました。「ベランダに干しておけ」

983
おいおい、そこな少年。俺を連れていかないか。なあに、手を使う必要はない。足で蹴ればいい。手に持つ物差しでこつんと叩いてくれてもいい。ただし

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