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マイクロノベルちょいす 012「ちょっとした秘密」

No.970
公園のベンチで休んでいたら頭を撫でくれと犬が寄ってきたので、満足するまで撫でてあげた。しっぽを振りながら飼い主の元に返っていく。ぼくの娘もよくあんな風にやってきて、そして帰って行った。もう30年前の話。


No.1009
風がくるくる回っているのを見たよ。葉っぱを巻き上げて、一瞬で消えたの。つむじ風って言うんだって。お父さんもあんな感じだよね。お布団上げて、トイレ行って、ご飯を食べて、いってきまーす。「この葉っぱは?」おまじないだよ。おかえりなさい。


No.1033
天狗にできることはタヌキにもできる。どろん、と透明になって闊歩する。むむ、なぜ人間たちは私を避けて歩くんだ? 偉大だからかな? おかしいな。私は見えてないはずなんだけどな。


No.1035
透明人間は実在する。さっきからぼくの髪に触れてくる。チクチク、チクチク。嫌がらせばかりしてくる。こんな時はトイレに入ってゆっくりする。狭いからね。透明人間も入れない。あれっ、トイレットペーパー切れてるじゃん! 「ごめん、さっき使っちゃった」


No.1036
「いままで黙っていたんだけど、実はあたしにはひげが生えているの。時々あごを撫でているでしょ? これは見えないヒゲなの」ぼくは彼女の告白を冷静に受け止めた。だって、口ひげにビールの泡がついていたから。

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