森山智仁

脚本家・フリーライター。NovelJam2018で小説家デビュー、山田章博賞受賞。劇団…

森山智仁

脚本家・フリーライター。NovelJam2018で小説家デビュー、山田章博賞受賞。劇団バッコスの祭(2002年結成→2016年解散)の脚本・演出でした。

記事一覧

固定された記事

日本縦走――39歳、徒歩で日本縦断登山旅

はじめに「今日はどこまで行けるか……」 「テントを張れる場所は……」 「次はどっちへ行こうか……」 「出会いに感謝!」  徒歩で日本縦断と聞いて、そのような冒険を…

500
森山智仁
7か月前
62

塔ノ岳の大倉尾根が富士登山の予行練習におすすめの理由

関東にお住まいで、「登山はやらないけど一度は富士山に登ってみたい」という方に、神奈川県の塔ノ岳(1491m)に大倉尾根ルートで一度登ってみることをおすすめします。以…

森山智仁
2週間前
3

高校生の精神年齢について

旅行記に、高校生の頃は「典型的な陰の者だった」と書いた。 端的に言えば、Twitterで人気のチー牛である。  ◆ ◆ ◆ 最近、「高校生の精神年齢なんてまぁそんなも…

森山智仁
3週間前
6

偉大な二人の冒険家

角幡唯介さんの『書くことの不純』を読み終えたタイミングで、阿部雅龍さんの訃報を知った。 お二人のことは著書でしか存じ上げないけれど、対極的だと思う。 角幡さんは…

森山智仁
1か月前
8

大人になってから改めてドラクエ5を遊んだ感想

何年生の頃だったでしょうか。小学生時代、初めて遊んだ当時は、自分自身が勇者になりたい男子だったので、「自分じゃなくて息子が勇者であること」を少し残念に思った記憶…

森山智仁
2か月前
4

バイトの現場で仕事の説明が上手い人、ほとんど存在しない説

これはリアル、対面・口頭での話です。いくらでも時間をかけて準備できる文章や動画は対象外とします。 世の中、アルバイトの現場において仕事の説明が上手い人って、ほと…

森山智仁
2か月前
4

ホームレスに差し入れをした話

いつかの夏、とある駅前でフラフラと台車を押しているホームレスのばあちゃんがいた。僕は「あのままでは熱中症で死ぬ」と思い、コンビニでポカリを買ってきて、「いらんか…

森山智仁
4か月前
13

好きなことで生きなくてもいいよね

「好きなことで生きていく」というキャッチフレーズがキャッチーである背景には、「好きなことで生きていくのは難しい」という現実がある。プロのスポーツ選手になれるのは…

森山智仁
4か月前
9

「個性を出そう」VS「自我を出すな」

模倣が創造の第一歩である、という話はここでは述べない。 消費者・視聴者目線の話をしていく。 YouTubeはかつて若者のメディアだったと思うけれど、最近の若者は(知らん…

森山智仁
5か月前
8

登山動画は誰が見ているのか

ぶっちぎりのチャンネル登録者数を有する「かほの登山日記」に憧れて登山動画を始めた人はきっとめっちゃ多い。 僕は、自分で登山動画をやってみようと思い立つまでほとん…

森山智仁
5か月前
17

そこそこの登山暦の人が今さらYAMAPを使って感じたこと

山行計画はヤマケイオンラインの「ヤマタイム」で組み、スマホにメモして、現地の地図アプリはジオグラフィカを使うーーというやり方をしていた登山者が、YAMAPを使ってみ…

森山智仁
5か月前
15

継続したら力になった話

日本縦走では、山ではなく下界を歩く日、YouTubeでショート動画を毎日投稿すると宣言していた。 羽田空港から始めて、しばらくは本当に毎日投稿していた。しっかりと編集…

森山智仁
6か月前
12

日本縦断を終えて自宅までどうやって帰ったか

「ゴール!」の熱が冷めないうちに旅行記を発表するため、道中ちまちま書き溜め、8〜9割できたところで知人たちに送ってフィードバックをゲット。最後の登山も無事に終わり…

森山智仁
6か月前
21

日本縦走計画

2023年4月から半年かけて、鹿児島の開聞岳から北海道の羅臼岳まで、各地の山に登りながら、ほぼ徒歩で日本を縦断します。 目的日本中のいろんな山に登ることです。 元々は…

森山智仁
1年前
9

退団宣言

「わかった」  そう聞いて、ホッとした。  でも次の言葉でギョッとした。 「次の公演は君をヒロインにする」 「は?」と、喉まで出かかったのを飲み込んだ。  ああ、だ…

森山智仁
2年前
8
日本縦走――39歳、徒歩で日本縦断登山旅

日本縦走――39歳、徒歩で日本縦断登山旅

はじめに「今日はどこまで行けるか……」
「テントを張れる場所は……」
「次はどっちへ行こうか……」
「出会いに感謝!」

 徒歩で日本縦断と聞いて、そのような冒険をイメージされた方には、この本はおそらく期待外れだと思います。
 あらかじめ細かくスケジュールを立て、キャンプ場やテント場、旅館に行儀良く泊まり、あまり人に頼らず、なるべく静かに歩いてきました。
 さらに断っておくと、完全な徒歩ではありま

もっとみる
塔ノ岳の大倉尾根が富士登山の予行練習におすすめの理由

塔ノ岳の大倉尾根が富士登山の予行練習におすすめの理由

関東にお住まいで、「登山はやらないけど一度は富士山に登ってみたい」という方に、神奈川県の塔ノ岳(1491m)に大倉尾根ルートで一度登ってみることをおすすめします。以下、その理由や注意点を説明していきます。

①標高差が同じぐらいだから「大倉」のバス停から塔ノ岳の山頂までの標高差と、富士山の五合目から山頂までの標高差がどちらも1300~1400mぐらいです。大倉尾根の紹介の看板にも「富士山に匹敵」と

もっとみる
高校生の精神年齢について

高校生の精神年齢について

旅行記に、高校生の頃は「典型的な陰の者だった」と書いた。

端的に言えば、Twitterで人気のチー牛である。

 ◆ ◆ ◆

最近、「高校生の精神年齢なんてまぁそんなもんじゃないか」と思う出来事があり、あとで「いやそれは自分が極端に幼かったせいでは?」と気付いた。 

3年のクラス演劇で脚本・演出をやらせてもらい、最終的には文化祭最優秀賞を取って胴上げまでしてもらったのだけれど、思い返すとあの

もっとみる
偉大な二人の冒険家

偉大な二人の冒険家

角幡唯介さんの『書くことの不純』を読み終えたタイミングで、阿部雅龍さんの訃報を知った。

お二人のことは著書でしか存じ上げないけれど、対極的だと思う。

角幡さんは内省的で哲学的。とある記者の「探検って社会の役に立つんですか?」というたった一つの問いに、本一冊分のレスを返すほど、物事を突き詰めて考える。他人が容易に近付けない仄暗い細道を歩き続けていて、我々はその背中に対価を支払っている。

一方で

もっとみる
大人になってから改めてドラクエ5を遊んだ感想

大人になってから改めてドラクエ5を遊んだ感想

何年生の頃だったでしょうか。小学生時代、初めて遊んだ当時は、自分自身が勇者になりたい男子だったので、「自分じゃなくて息子が勇者であること」を少し残念に思った記憶があります。

逆に言えば、そう思うほどに夢中でしたし、ほとんどすべてのRPGにそのぐらい感情移入していました。ドラクエ5とは違って、自分が勇者ではあるんだけど「指揮官」という役割で、画面の中では戦えない『ダウン・ザ・ワールド』という作品で

もっとみる
バイトの現場で仕事の説明が上手い人、ほとんど存在しない説

バイトの現場で仕事の説明が上手い人、ほとんど存在しない説

これはリアル、対面・口頭での話です。いくらでも時間をかけて準備できる文章や動画は対象外とします。

世の中、アルバイトの現場において仕事の説明が上手い人って、ほとんど存在しません。だから、次の春から初めてバイトをする学生の皆さん、説明を聞いて一発で飲み込めなくても、たぶんあなたの理解力が低いせいではないです。安心してください。

それでは、説明の上手い人が少ない理由を説明していきます。

①全体像

もっとみる
ホームレスに差し入れをした話

ホームレスに差し入れをした話

いつかの夏、とある駅前でフラフラと台車を押しているホームレスのばあちゃんがいた。僕は「あのままでは熱中症で死ぬ」と思い、コンビニでポカリを買ってきて、「いらんかったら捨てといてください」と、足元に置いた。

その時、名前を聞かれ、「忘れません」と言われたことが、こちらこそ忘れられないほど深く心に残っている。こんな品性のある人が何故、と。

恩を受けた時に名前を聞く。そして忘れないと伝える。品位ある

もっとみる
好きなことで生きなくてもいいよね

好きなことで生きなくてもいいよね

「好きなことで生きていく」というキャッチフレーズがキャッチーである背景には、「好きなことで生きていくのは難しい」という現実がある。プロのスポーツ選手になれるのはほんの一握りだし、漫画や音楽で生計を立てられる人はごく一部で、YouTuberは登録者1000人さえ難しい。僕は7年前、劇団を解散した。

いわゆる夢追い人を長い間やっていたせいか、こんな思い込みがあった。好きなことそのもので生きている人が

もっとみる
「個性を出そう」VS「自我を出すな」

「個性を出そう」VS「自我を出すな」

模倣が創造の第一歩である、という話はここでは述べない。
消費者・視聴者目線の話をしていく。

YouTubeはかつて若者のメディアだったと思うけれど、最近の若者は(知らんけど)TikTokとかを見ていて、YouTubeの視聴者は高齢化しつつある。

よく知られているように、人は歳を取るとだんだん新しい娯楽を摂取できなくなる。
脂っこいものを食べられなくなるのに近いだろうか。
好き嫌いの問題ではなく

もっとみる
登山動画は誰が見ているのか

登山動画は誰が見ているのか

ぶっちぎりのチャンネル登録者数を有する「かほの登山日記」に憧れて登山動画を始めた人はきっとめっちゃ多い。

僕は、自分で登山動画をやってみようと思い立つまでほとんど人の登山動画を見たことがなく、別ジャンルでキャストが自己主張せず商品だけをテンポよく見せていくチャンネルが何万人も登録者を集めていることから、「登山動画界のそういうポジションを狙おう」と考えていた。

みんなヒトではなく山を見たいはずだ

もっとみる
そこそこの登山暦の人が今さらYAMAPを使って感じたこと

そこそこの登山暦の人が今さらYAMAPを使って感じたこと

山行計画はヤマケイオンラインの「ヤマタイム」で組み、スマホにメモして、現地の地図アプリはジオグラフィカを使うーーというやり方をしていた登山者が、YAMAPを使ってみて感じたことをまとめました。

寸感便利です。ヤマケイと同じ感覚で計画が立てられ、作った地図を現地で使えます。

キャッシュ(地図データ)を落としておけばオフラインでも利用可能で、ジオグラフィカはこの作業がアナログ気味なので十分な範囲・

もっとみる
継続したら力になった話

継続したら力になった話

日本縦走では、山ではなく下界を歩く日、YouTubeでショート動画を毎日投稿すると宣言していた。

羽田空港から始めて、しばらくは本当に毎日投稿していた。しっかりと編集するロング動画は公開までにどうしてもタイムラグができるから、実況みを出すためにはショート動画が必要だと考えていたのだ。

収益効率は低いけど再生数は付きやすいから励みにもなった

しかし、だんだん負担になってきた。わずか1分未満の動

もっとみる
日本縦断を終えて自宅までどうやって帰ったか

日本縦断を終えて自宅までどうやって帰ったか

「ゴール!」の熱が冷めないうちに旅行記を発表するため、道中ちまちま書き溜め、8〜9割できたところで知人たちに送ってフィードバックをゲット。最後の登山も無事に終わり、帰りのフェリーも手配済み。やはりおれは旅が上手い。最後まで抜かりなく終えられると思っていた。

しかし、穴はあった。北海道を公共交通機関で移動するのにどれだけ時間がかかるか、よくわかっていなかったのである。知床から苫小牧まで、途中で2泊

もっとみる
日本縦走計画

日本縦走計画

2023年4月から半年かけて、鹿児島の開聞岳から北海道の羅臼岳まで、各地の山に登りながら、ほぼ徒歩で日本を縦断します。

目的日本中のいろんな山に登ることです。
元々は各地方に一定期間滞在して周辺の山に登りまくるという形を考えていたのですが、そんな都合のいい拠点はなかなかなく、無駄に宿泊費・交通費が嵩みそうだったので、それならいっそ縦断しようということになりました。

メンバーひとりです。

移動

もっとみる
退団宣言

退団宣言

「わかった」
 そう聞いて、ホッとした。
 でも次の言葉でギョッとした。
「次の公演は君をヒロインにする」
「は?」と、喉まで出かかったのを飲み込んだ。
 ああ、だめだ。
 やっぱりこの人は何もわかってない。
「いつも瀬菜がヒロインって正直マンネリ化してきたし、君も入団してもう三年になるよね。実力は十分だと思う」
 思うってなんだよ。あんたが決めるんだろ。なんで断定しないの?
 カフェラテを一口飲

もっとみる