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ドラマ・シネマローグ

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日本のドラマ・映画を中心に感想と思ったこと考えたこと。
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映画「ツユクサ」~ありふれた日常の小さな奇跡

映画「ツユクサ」~ありふれた日常の小さな奇跡

小林聡美さん主演の映画「ツユクサ」を観た。

海辺の町でつつましく暮らす五十嵐芙美(小林聡美さん)はある日、運転中に落ちてきた隕石と衝突する。
冒頭からこんな事件が起きると、非日常を描いてゆくのかと思うけれど、物語は終始、田舎町の平凡な日常の中で進んでゆく。

芙美の年の離れた親友である航平(斎藤汰鷹くん)の将来の夢は、天文学者になることで、「隕石が人間に当たる確率は1億分の1なんだよ!」と芙美に

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映画「花束みたいな恋をした」~あの頃の風景

映画「花束みたいな恋をした」~あの頃の風景

遅ればせながら、映画「花束みたいな恋をした」を観た。

この作品は坂元裕二さん脚本にしては、サブカル好きのカップルを主人公にしながらも、拗らせずに素直というかマイルドで、これはこれでスッと心に入ってきた。
"これって自分たちのことですか?" と思った人も多いんじゃないか、というような、普遍的なラブストーリーだと思った。

ところで、学生時代の恋愛がそのままスムーズに結婚へと成就したカップルというの

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ドラマ「僕の姉ちゃん」にクスッと、ほぐされる

ドラマ「僕の姉ちゃん」にクスッと、ほぐされる

姉と弟による束の間の二人暮らしの記録は、30分にも満たないドラマだけれど、毎回ショートコントみたいな情景が面白い。

弟の順平(杉野遥亮くん)は、素直でスレてなくていい子だとは思うのだが、あまり特徴がないというか…どこか夢見がちでポケッとしてる感じ。
姉は弟には辛辣で、アンタは女のことナンも分かってない、みたいなことをズケズケ言ったり、弟はそんな姉にタジタジなのだが、恋や女性についてのアドバイスを

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ドラマ「初恋の悪魔」〜ルービックキューブ仕掛けの謎は深まるばかり

ドラマ「初恋の悪魔」〜ルービックキューブ仕掛けの謎は深まるばかり

脚本家・坂元裕二さんが刑事物×ミステリーを書くという意外性と、タイトルからして「初恋の殺人者」みたいなインパクトで(こちらのドラマは未見)、今期ドラマの中でもかなり期待を寄せていた「初恋の悪魔」。

回を重ねるごとに謎は深まるばかりで、ルービックキューブのように片面が揃ったと思ったら他の面はバラバラになり、考えがまとまられない状態だけど立ち止まることも出来ず、ストーリーを追うだけで毎週精一杯だった

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映画『ドライブ・マイ・カー』〜喪失と再生のロードムービー

映画『ドライブ・マイ・カー』〜喪失と再生のロードムービー

私の住む国でも映画館で『ドライブ・マイ・カー』の上映が始まった。
だけど何度か見直したい作品だと思ったので、私は配信で鑑賞した。

冒頭、窓の外に広がる夜明けの空を背に、家福の妻・音(霧島れいかさん)は寝物語を家福(西島秀俊さん)に語る。その様子はまるでトランス状態にある巫女のようで、天から物語が降りてくるかのようだ。
しかし音は、翌日になると自分が話したことを覚えていなくて、今度は家福が昨夜の物

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三浦春馬 映画「アイネクライネナハトムジーク」~小さな夜、ささやかな幸せ

三浦春馬 映画「アイネクライネナハトムジーク」~小さな夜、ささやかな幸せ

『アイネクライネナハトムジーク』は、春馬くんが旅立ってから何度も観た。
ずっと感想を書こうとしていたけれど、もう春馬くんの新しい作品はないのだと思うと、残された一つ一つの作品を惜しみながら噛みしめるように、その感想を丁寧に書いてゆきたいという気持ちが強くなった。

◇ ◇ ◇

この作品の主役は春馬くんだけれど群像劇なので、一人だけ突出するでもなく、これまで春馬くんが演じた中でも一、二を争うくらい

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三浦春馬 映画 「東京公園」 ~ファインダー越しに見つめる世界

三浦春馬 映画 「東京公園」 ~ファインダー越しに見つめる世界

秋も深まり、紅葉した木々の葉が散り始め、地面は黄色や赤の落ち葉の絨毯が敷き詰められたようで美しい。
この国はすでに晩秋で、もうすぐ長い長い冬がやって来る。
そんな季節が来る前の秋日和の休日に『東京公園』をまた観た。
春馬くん21歳(撮影時は20歳)の時の公開作品だ。20歳の頃というと、高校生を演じたかと思うと高校教師になったり大学生になったり、春馬くんは演じる年齢も変幻自在だ。

はじめに
この作

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ドラマ「うきわ -友達以上、不倫未満-」〜夢とうつつの間に

ドラマ「うきわ -友達以上、不倫未満-」〜夢とうつつの間に

似てますよねぇ。うわきとうきわ。
サラッとそんな事を言う主人公・麻衣子。

ともするとドロドロの展開になりそうなテーマの中、ゆらゆら漂うような独特の雰囲気で物語は進んでゆく。

麻衣子はちょっと天然で、妄想が過ぎる(笑)。
彼女の数々の妄想シーンは、深刻なはずの現実をふわっと浮遊させる。
門脇麦さんは、少女っぽいかと思えば、生活感が滲み出ていたり、情感漂う表情をしたり、不思議な魅力のある女優さんだ

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三浦春馬 ドラマ「ブラッディ・マンデイ」 ~ファルコンよ、永遠なれ

三浦春馬 ドラマ「ブラッディ・マンデイ」 ~ファルコンよ、永遠なれ

この作品は、まだ10代の美少年・春馬くんを主役(しかも連ドラ初主演作)に据えておきながら、恋愛ものではなく本格派アクションサスペンスというのが意外であり、先が読めないスピード感のあるストーリーも飽きさせない。
面白くてシーズン1、2と一気に2回も観てしまった。

キャスト陣は今見てもかなり豪華だ。
折早マヤ役の吉瀬美智子さんは妖艶でクールな工作員、J役の成宮寛貴さんは狂気を秘めたカリスマ的な役が似

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三浦春馬 ドラマ「サムライ・ハイスクール」

三浦春馬 ドラマ「サムライ・ハイスクール」

サムライ小太郎、かっけえ!
とにかくサムライ小太郎様にまず魅了された。

ヘタレ小太郎との二役は、顔つき・声色・姿勢や歩き方まで変わって、まるで別人。なんなら眉毛や目や口などの造作まで違って見えるんですけど…。
二つの人格が入れ替わる時のスイッチの入り方と切れ方も凄まじく上手い。
勇ましく目力がありキリリと緊張感あふれるサムライ小太郎様の「おのれ、姦物どもが!」「笑止!」「口惜しゅうて仕方ないわ!

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三浦春馬 映画「真夜中の五分前」~エトランゼ・異邦人

三浦春馬 映画「真夜中の五分前」~エトランゼ・異邦人

ずっと観たかった「真夜中の五分前」。やっと日本からDVDを送ってもらい観ることが出来た。本当は映画館で観たい作品だけれど、海外生活の身では難しいのでホームシアターで鑑賞。

上海〜静謐な映像美と音の世界ステンドグラスの窓から漏れる陽の光、壁に掛かる沢山の柱時計の影、間接照明だけの仄暗い室内、光と影の対比を捉えたような一つ一つの映像がとても美しい。
セピアがかったノスタルジックな色調のフィルムがヨー

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