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ドラマ「うきわ -友達以上、不倫未満-」〜夢とうつつの間に

似てますよねぇ。うわきうきわ
サラッとそんな事を言う主人公・麻衣子。

ともするとドロドロの展開になりそうなテーマの中、ゆらゆら漂うような独特の雰囲気で物語は進んでゆく。

麻衣子はちょっと天然で、妄想が過ぎる(笑)。
彼女の数々の妄想シーンは、深刻なはずの現実をふわっと浮遊させる。
門脇麦さんは、少女っぽいかと思えば、生活感が滲み出ていたり、情感漂う表情をしたり、不思議な魅力のある女優さんだ。
麻衣子が話す "〜じゃろ" という広島弁や、すっぴんのパジャマ姿でゴミ出しして二葉さんに見られるのを恥ずかしがるところとか、全部が可愛いらしい。
ひたむきで、時に大胆だったり、そんな姿を見せられたら、二葉さんの心も揺れてしまうだろう。

二葉役の森山直太朗さんが、またいい味を醸している。
平凡な中年サラリーマン役が自然で、のんびりとした物腰と柔らかい話し方に、何だかこちらまで癒されてしまう感じ。
麻衣子から夫が浮気してると告白されて、一人で抱えるのはしんどいよねと慰め、僕も同じなんです、と妻に浮気されていることを告白する。時折見せる、諦めたような寂しげな表情に胸を突かれる。
陶芸教室の若い先生に見せる、久しぶりの妻の笑顔を見たら、問い詰められなくて、何ごともなかったかのように接する。その優しさがまた、妻を他の人の元へと走らせているのだけど…。

社宅で隣同士の二人が、ベランダで交流するっていう設定が面白い。しかもベランダを仕切るパーテーションの下からティッシュボックスやドーナツ!?をやり取りしたり。そんな人達いる?

二葉さんの妻・聖さんを演じているのは西田尚美さん。幾つになっても透明感のある、好きな女優さんだ。
聖さんが、仕事を辞めて不妊治療しようかなと言った時、今のままでもいいと思ってると二葉さんに言われてしまう。
二葉さんは聖さんが大切だから無理してほしくなかった、でも聖さんは自分を大切に思うなら二葉さんに無理してほしかった。そこから徐々にすれ違ってゆく二人。

だけど、浮気相手の陶芸教室で作った夫婦茶碗を、結婚記念日のプレゼントにする聖さんは、反則だと思う。茶碗を割ろうとした二葉さんが切ない。
陶芸教室の先生・田宮くん(田中樹さん)が女性と写っている写真に嫉妬したり本気のようなのに、「ずっと待ってるから」と言う田宮くんに、「そんなこと言われたら別れるしかないよ。あなたにはもっといい人がいる…」と答える聖さんは、若い田宮くんを思って、いつかは終わらせるつもりなのか?


浮気に気づいている麻衣子と、気づかれていないと思っている拓也(大東駿介さん)が、お面をつけた姿で向かい合い、食卓で食事するシーンは、象徴的だ。
平穏な日々をおくるために、時に夫婦は互いに見て見ぬふりする。


ベランダでの逢瀬?をする麻衣子と二葉さんの間にはいつも
緊急時にこの扉を突き破って隣にお逃げください。
と書かれたパーテーションがあり、何度も意味ありげに映し出される。

顔が見えんけん、ようわからん。
303号室と305号室の間に、(実際にはない)304号室があればいいのにな。
そうすれば気兼ねなく話せるのに。

互いの顔が見えないベランダで、相手の気持ちを推し量りながら、少しづつ距離が縮まってゆく麻衣子と二葉さん。

た、す、け、て
寝室から壁をコンコンと打った麻衣子に、隣からコンコンと打ち返してくれた二葉さん。
嫉妬や不安、孤独感、いろんな感情に溺れそうになっている麻衣子に、うきわを投げて救ってくれたのは、二葉さんなのだった。

第5話では、二人の間にあるパーテーションを突き破り、二葉の心に飛び込む自分を妄想していた麻衣子が、衝動的に手摺りを伝って隣のベランダにいる二葉さんの胸に飛び込んでしまう。
二葉さんは驚きつつも、せっかく来たんだからゆっくりしましょうと言う。
これまでの話で、いつもアクセルを踏むのは麻衣子で、彼女の気持ちは痛いほど分かったけれど、二葉さんはどこまで麻衣子のことを思っているのか、それはいまひとつまだ分からない。

ちょっとアホな拓也も、さすがに麻衣子の様子がおかしい事に気づき始めた。

次回は一波乱ありそうな展開で、これから物語はどう流れてゆくのか、興味深くもあり、怖くもあり。


エンディングで流れる三浦透子さんの「通過点」が、エモーショナルに沁みる。
じんわりと伝わってくるような声の温度が心地よい。



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