記事一覧
『女ともだち』 『麹町二婆二娘孫一人』 中沢けい を読む
飯田橋文学会@東京大学駒場キャンパス にて
作家・中沢けい×日本語文学研究者・渡邊英理 対談 を拝聴した。
著作から3冊『女ともだち』『麹町二婆二娘孫一人』『楽隊のうさぎ』を著者が選び対談。中沢文学を敬愛する渡邊先生と中沢氏との信頼関係が感じられる和やかな雰囲気の中、リラックスされた中沢さんからは創作秘話が語られ大変有意義な時間だった。飯田橋文学会のnoteでアーカイブが配信される。
その中で
「彼女のいない部屋」心の苦しみを終始映像で表した映画 まるでウルフの意識の流れのよう
公開初日は、ドライブマイカーの濱口竜介監督と、マチュー・アルマリック監督がオンライン登壇で対談された。「彼女のいない部屋」 には、97年の年代ものの赤い車のドライブ場面がよく出て来る。それはドライブマイカーを彷彿とさせる。そして母親である女性は、子供のピアノの練習曲の録音を聴いたり、チェリー、愛している♫というアメリカの曲を聴いて夫への愛を口ずさんだりする。車の中で思索し、混乱する感情を出したり
もっとみる陰影礼賛 谷崎潤一郎
写真:大川裕弘
美しい日本語に出会いたい、美しい景色を見て心和ませたい、そんな時に手に取るとよい本です。
谷崎潤一郎の名文とそれを映し出す一片の写真が絶妙なタイミングと量で陰翳の世界を儚くも美しく形作っている。京都など古都に行けば見られる古式ゆかしい日本家屋は、現代の都会の生活からは想像し難い今において、写真を挿絵のようにいれた意味は多いにあると思う。
人と人との繋がりがシナジーを生み出す
コロナ禍で、東京では5月末まで緊急事態制限が延長され、飲食店でのお酒の提供も制限されている。 これまでのように直接会って話すというコミュニケーションがとれなくなっており、窮屈でフラストレーションもたまる日々だ。でもそれを打破するよい面も生まれてきている。
ズームなどのオンラインで話す機会が多くなり、これまでの友人の中で本当に大切な友達とよく繋がるようになったということを感じている。また、これ
向田邦子展 @青山スパイラル
没後40年特別イベントが1月24日(日)まで青山スパイラルで入場無料にて開催されている。(会期中無休)向田邦子が住んでいた青山のマンションから300mほどの距離にある青山スパイラル。用事の帰りにふと立ち寄ってみた。
向田邦子の手書き原稿、台本、ドラマのキャストの写真、もちろん彼女のポートレート。そして年表、彼女の愛読書と洋服、集めていた陶器なども展示されていた。上記の写真は彼女が料理好きに勧
ベートーヴェンイヤー 2020
今年は楽聖ベートーヴェン生誕250周年。本来なら多くのベートーヴェンのコンサートが催されていただろう。コロナで自粛が続き、生のオーケストラを聴きたいと熱烈に思う今日この頃。楽器からでる周波数は、人間の耳には聞き取れないけれど何らかしらの良い影響を与えている。オンラインのライブも選択肢が増えたという意味では良いが、クラシック、特にオーケストラはやはり生で聴きたい。
高校生の頃、ロマン・ロランの
20年ぶりの江藤淳との再会 漱石と子規 俳句と私
曼珠沙華の鮮やかさが彼岸の日に目に染み入る。暑さ寒さも彼岸までというがこの日は秋日和で爽やかな日だった。ときおり強い日差しが夏の余韻を残しつつも、自然豊かな青山墓地を通る風の心地よさは秋の気配を感じさせる。昼と夜の時間が同じ彼岸の日には霊界に通じる道があるという。故人を偲ぶに青山霊園まで赴いた。実に20年ぶりの師との魂の邂逅。
江藤先生との出会いは大学の「創作過程論」での授業であった。ある日
"élan vital" いきいきと自然体で。
これまでの経験や自分の考えなどをエッセイで書くことにしました。自分のことそのものを書くよりは、何か都度テーマを決めて経験から得られたことを書いていきたいと思います。また好きな本や感銘を受けた読書体験も書いたいと思っています。
表現するにあたり成長させていきたい点が2つあります。
まずは内面の問題。対象を表現するとしても、そこには「自分」というフィルターがあり、「自分」の経験に裏付けされた思