水上 純

「#文学の森@bungakunomori(X)」ライター ←雑誌エディター&…

水上 純

「#文学の森@bungakunomori(X)」ライター ←雑誌エディター&ライター、大手教育出版、広告制作ディレクター 慶應義塾環境情報(江藤淳ゼミ)及び同文学部英文学科卒

最近の記事

『女ともだち』 『麹町二婆二娘孫一人』 中沢けい を読む

飯田橋文学会@東京大学駒場キャンパス にて 作家・中沢けい×日本語文学研究者・渡邊英理 対談 を拝聴した。 著作から3冊『女ともだち』『麹町二婆二娘孫一人』『楽隊のうさぎ』を著者が選び対談。中沢文学を敬愛する渡邊先生と中沢氏との信頼関係が感じられる和やかな雰囲気の中、リラックスされた中沢さんからは創作秘話が語られ大変有意義な時間だった。飯田橋文学会のnoteでアーカイブが配信される。 その中でも、『女ともだち』『麹町二婆二娘孫一人』が特に印象に残ったので2作品を中心に読書

    • 「彼女のいない部屋」心の苦しみを終始映像で表した映画 まるでウルフの意識の流れのよう

       公開初日は、ドライブマイカーの濱口竜介監督と、マチュー・アルマリック監督がオンライン登壇で対談された。「彼女のいない部屋」 には、97年の年代ものの赤い車のドライブ場面がよく出て来る。それはドライブマイカーを彷彿とさせる。そして母親である女性は、子供のピアノの練習曲の録音を聴いたり、チェリー、愛している♫というアメリカの曲を聴いて夫への愛を口ずさんだりする。車の中で思索し、混乱する感情を出したりするところも、ドライブマイカーと共通するところがある。  しかしドライブマイカ

      • 閉塞した格差社会の若者を考える    ー居場所の喪失と親ガチャ

        「親ガチャという病」 社会学者・土井隆義氏の考察は現代の閉塞した格差社会について、親ガチャというキーワードを使って若者への影響を明快に論考している。現代社会と若者の辛さを紐解き対応策を提示した内容が素晴らしいので、まとめてみた。 高原社会とは 現時点での日本社会を、土井氏は、”高原社会”と定義している。 この時期はインターネットの普及期にもあたっている。ネットの発達が人間関係の流動化を推し進めたが、技術の進歩があったからというより、人間関係の流動化が進んだ結果、ネット上

        • 生きた 書いた 愛した —書くこと70年

           瀬戸内寂聴さん99歳で死去(2021年11月) 女性の大学進学が難しい時代に、徳島から上京し東京女子大に通った。在学中、学者と見合い結婚。大学卒業までは、夫の理解のもと結婚しても純潔を通した。卒業後夫と共に満州へ。そこでの生活を元に書いた「女子大生曲愛玲(チュイアイリン)」や「花芯」が認められたが、批評家に子宮小説と揶揄され、ポルノ小説のレッテルを貼られ苦渋の日々を送った。私小説と誤解されたのも悔しかったという。妻子ある作家と若い男性との間を行き来する自伝的小説「夏の終り」

        『女ともだち』 『麹町二婆二娘孫一人』 中沢けい を読む

        • 「彼女のいない部屋」心の苦しみを終始映像で表した映画 まるでウルフの意識の流れのよう

        • 閉塞した格差社会の若者を考える    ー居場所の喪失と親ガチャ

        • 生きた 書いた 愛した —書くこと70年

          陰影礼賛 谷崎潤一郎

                             写真:大川裕弘  美しい日本語に出会いたい、美しい景色を見て心和ませたい、そんな時に手に取るとよい本です。  谷崎潤一郎の名文とそれを映し出す一片の写真が絶妙なタイミングと量で陰翳の世界を儚くも美しく形作っている。京都など古都に行けば見られる古式ゆかしい日本家屋は、現代の都会の生活からは想像し難い今において、写真を挿絵のようにいれた意味は多いにあると思う。  それにしても語彙の豊富な美しい日本語をゆったり読んで味わい写真をみるに優雅

          陰影礼賛 谷崎潤一郎

          人と人との繋がりがシナジーを生み出す

           コロナ禍で、東京では5月末まで緊急事態制限が延長され、飲食店でのお酒の提供も制限されている。 これまでのように直接会って話すというコミュニケーションがとれなくなっており、窮屈でフラストレーションもたまる日々だ。でもそれを打破するよい面も生まれてきている。  ズームなどのオンラインで話す機会が多くなり、これまでの友人の中で本当に大切な友達とよく繋がるようになったということを感じている。また、これまでは会うにはどこかに出かけて、あるいは会食してという、移動や空間の確保が必要だ

          人と人との繋がりがシナジーを生み出す

          向田邦子展 @青山スパイラル

           没後40年特別イベントが1月24日(日)まで青山スパイラルで入場無料にて開催されている。(会期中無休)向田邦子が住んでいた青山のマンションから300mほどの距離にある青山スパイラル。用事の帰りにふと立ち寄ってみた。  向田邦子の手書き原稿、台本、ドラマのキャストの写真、もちろん彼女のポートレート。そして年表、彼女の愛読書と洋服、集めていた陶器なども展示されていた。上記の写真は彼女が料理好きに勧める100冊の一部分。  戦後の成長著しい時代、女性の進出がまだまだこれからと

          向田邦子展 @青山スパイラル

          ベートーヴェンイヤー 2020

           今年は楽聖ベートーヴェン生誕250周年。本来なら多くのベートーヴェンのコンサートが催されていただろう。コロナで自粛が続き、生のオーケストラを聴きたいと熱烈に思う今日この頃。楽器からでる周波数は、人間の耳には聞き取れないけれど何らかしらの良い影響を与えている。オンラインのライブも選択肢が増えたという意味では良いが、クラシック、特にオーケストラはやはり生で聴きたい。  高校生の頃、ロマン・ロランの「ベートーヴェンの生涯」またベートーヴェンのことを書いた「魅せられたる魂」により

          ベートーヴェンイヤー 2020

          広告のコピー、文章、写真

          1. 写真の選び方 広告は写真の効果が大きいため、文章よりも写真ありきのことが多い。目を捉える、また商品や対象物が理解しやすく、ひきのある写真を選ぶ。または文章との関連と特色で選ぶ。広告の文章制限があり例えば600字程度であれば、写真を大きなもの一つで際立たせ、存在感を出す場合もあれば、ストーリー仕立ての文章の場合は順に文章に合わせて写真を掲載する時もある。ホテルや美術館などのさまざまシーンを複数見せたい場合は写真を情報として複数セットにして出す場合もある。プレスキットがある

          広告のコピー、文章、写真

          20年ぶりの江藤淳との再会        漱石と子規 俳句と私

           曼珠沙華の鮮やかさが彼岸の日に目に染み入る。暑さ寒さも彼岸までというがこの日は秋日和で爽やかな日だった。ときおり強い日差しが夏の余韻を残しつつも、自然豊かな青山墓地を通る風の心地よさは秋の気配を感じさせる。昼と夜の時間が同じ彼岸の日には霊界に通じる道があるという。故人を偲ぶに青山霊園まで赴いた。実に20年ぶりの師との魂の邂逅。  江藤先生との出会いは大学の「創作過程論」での授業であった。ある日キャンパスの坂道で江藤先生をお見かけした。漱石研究の権威である江藤先生に向かって

          20年ぶりの江藤淳との再会        漱石と子規 俳句と私

          ホーチミンの旅

           2月中旬友人のいるホーチミンに5日間行って来ました。コロナの緊急宣言が出る前、ベトナムでは日本人入国者が隔離措置を取られる前の滑り込みセーフでした。今の一変したwithコロナの世界状況を思えば、ベトナムの友人が危険地域東京に住む私を受け入れてくれて滞在できたことの幸せを思おう。  ホーチミンの空港につくと日本とは違う気候。熱い空気!機内ではSARSの時に購入しておいた(今頃役立つとは!)医療用N95マスクをつけていたけれど、空港では普通のマスクに付け替えて、夏のような気候

          ホーチミンの旅

          "élan vital"  いきいきと自然体で。

           これまでの経験や自分の考えなどをエッセイで書くことにしました。自分のことそのものを書くよりは、何か都度テーマを決めて経験から得られたことを書いていきたいと思います。また好きな本や感銘を受けた読書体験も書いたいと思っています。 表現するにあたり成長させていきたい点が2つあります。  まずは内面の問題。対象を表現するとしても、そこには「自分」というフィルターがあり、「自分」の経験に裏付けされた思考が反映されてしまうもの。そして表現することによって、共感を呼び同意者を得ること

          "élan vital"  いきいきと自然体で。