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140文字小説

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Twitterで日々投稿している140文字小説をまとめたものです。
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#猫

失格者 (140文字小説)

失格者 (140文字小説)

 怒ってないよ。

 そう口を動かしながらも、表情は冷たい。

 楽しいね。

 そう声を発しながらも、口角は下がっている。

 人の表情と裏に潜む感情の不一致に、いつも戸惑う。

 僕がおかしいのかな。

 足元に猫がすり寄る。

 彼らは気まぐれだけど裏表がない。

 人を怖いと思う僕は失格者なのだろうか。

因果の罰 (140文字小説)

因果の罰 (140文字小説)

 イラついたときは「ボール」を蹴る。

 くそ課長め!

 帰るなり俺はボールを蹴飛ばした。

 ボールは呻き声をあげた。

 すっきりして眠り、目が覚めるとやけに目線が低い。

 手が猫?

 突如身体に悶絶するような衝撃が走った。

「痛いだろ」

 俺が、俺に話しかけてる。

「今度から、お前がボールだ」

ぶぎゃあ、と鳴く猫 (140文字小説)

ぶぎゃあ、と鳴く猫 (140文字小説)

 にゃあ、といえば猫の鳴き声だ。

 日本に住む人なら、にゃあ、といえば猫というだろう。

 でも、うちのはちょっと、いや、だいぶ違う。

 うちのは、ぶぎゃあ、と不細工に鳴く。

 その声に、私はいつも笑って突っ込みを入れる。

 不細工なんだけど、かわいい。

 私は、そんな夫をとても愛してる。

雨と猫と男と女と (エピローグ) (140文字小説)

雨と猫と男と女と (エピローグ) (140文字小説)

 うちには、おかしな遺影がある。

 おじいちゃんとおばあちゃんの遺影に挟まれている。

 昔、おじいちゃんが拾った猫のものだ。

 いまの私がいるのも、その猫のおかげらしい。

 よくわからないけど、よほど二人にとって大切な猫だったのだろう。

 三人の幸せそうな写真に、私はいつも癒されてる。

雨と猫と男と女と (下) (140文字小説)

雨と猫と男と女と (下) (140文字小説)

 今日は雨だにゃ。

 俺は雨だにゃ。

 雨の日に哲に会ったにゃ。

 哲は優しいにゃ。でも哲は哲が好きじゃないみたいにゃ。

 だけど哲が好きな雌もいるにゃ。

 雌が来たにゃ。俺は雌に向かって飛ぶにゃ。

 哲が追って来て、雌と目が合ったにゃ。

「貴方のお名前、教えてください」

 哲、勇気出すにゃ。

雨と猫と男と女と (中) (140文字小説)

雨と猫と男と女と (中) (140文字小説)

 視線をまた感じる。

 彼女は「雨」を見上げていた。

 雨は、猫だ。

 大雨の日に僕が連れ帰った。

 名前に似合わず、お日様が大好きで、ベランダで日向ぼっこを日課にしている。

 彼女は雨を見る時、僕と目がよく合う。

 その時、僕はいつも背を向ける。

 この醜い顔を、彼女には向けられないから。

雨と猫と男と女と (上) (140文字小説)

雨と猫と男と女と (上) (140文字小説)

 篠突く雨という形容がぴったりな、激しい雨の日だった。

 形が崩れた段ボールの中の仔猫を、雨から守っている人がいた。

 お世辞にも、顔は良くない。

 彼は猫を連れ帰った。

 猫は毎日、彼のアパートのベランダで日向ぼっこをしている。

 くすっ。今日はあくびしてる。

 彼は、いない、のかな。

私は貝になりたかったのか? (140文字小説)

私は貝になりたかったのか? (140文字小説)

 今日は蚊だった。

 今日は蝿だった。

 今日は亀だった。

 今日は鶴だった。

 今日は猫だった。

 次はなんだろう。

 なぜ、前の記憶があるのだろう。

 いつ人間になれるのだろう。

 物心がついたのは三歳の頃だ。

 母と遊んだ砂場が浮かぶ。

 お母さんごめん。この世はつら過ぎる。

 今日は貝だった。

尻軽vs尻軽 (Twitter140文字小説)

尻軽vs尻軽 (Twitter140文字小説)

 私の日課は猫の散歩。

 道行く人に、猫は都度愛想を振り撒き甘い声を出す。

 私は尻軽めと悪態を吐く。

 あの人も散歩してた。

 名前はまだ知らない。

 けど彼と話す時間は頬が熱くなる。

 ふいに足首に激痛。

 言葉にならない声を上げ、猫に目を落とす。

 この尻軽め。

 猫の目はそう言っていた。

悪戯心 (Twitter140文字小説)

悪戯心 (Twitter140文字小説)

 電気ストーブの前で彼は寝息を立てていた。

 極楽を感じる表情に、私も自然と口元が緩む。

 ふいに芽生える悪戯心。

 頬をツン。

 ピクリ。

 体をジャーキングのように震わせ、片目をうっすら開く。

 まどろむも私の帰宅に気づき、撫でてよとお腹を晒す。

 もお、今日も愛猫に仕事疲れが消える。

愛と怒 (Twitter140文字小説)

愛と怒 (Twitter140文字小説)

 温もりが欲しい。

 今年もこたつを愛でる季節が到来した。

 足元から頭の先まで、じんわりと熱が伝わる。

 この至福のひとときには、ホットミルクも目ではない。

 ふいに眼前5cmの距離に、地を踏む逞しい筋肉の塊。

 次はお尻に衝撃。

「んにゃ~、おまえら俺が中にいるにゃ~」

 猫は激怒にゃ。

傘猫 (Twitter140文字小説)

傘猫 (Twitter140文字小説)

 傘を叩く音が一分前より大きくなった。

 早く帰ろう。

 逸る気持ちが地を濡らす音と比例し大きくなる。
 
 ふと仔猫が見えた。

 彼か彼女はじっと真っ直ぐ目線を送ってくる。

 頼む木陰に雨が漏っている。

 吐息を漏らし彼か彼女に歩み寄る。

 そっと差し出す傘に一声鳴いた。

 ありがとうと言っているのかな?

あとがき

散歩中にふと見た風景が元です。

捨て猫を連れ帰ろうとしていた

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美食家への営業 (Twitter140文字小説)

美食家への営業 (Twitter140文字小説)

 猫だ。

 白を基調に所々黒斑を拵え凛として歩いている。

 気位が高い様に汗が垂れるが、こちらも人としての矜持がある。

 視線がこちらを射す。

 俺は胸ポケットに手を入れ鎮座する猫に中身を差し出す。

 一瞥し、ぷいと顔を背ける。

 嘲笑しているのか、また営業は失敗だ。

 美食家の猫は厄介極まりない。

あとがき

好みのエサ以外には見向きもしないうちの猫がモデルです。

教訓。猫はグ

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