マガジンのカバー画像

140文字小説

306
Twitterで日々投稿している140文字小説をまとめたものです。
運営しているクリエイター

#結婚

珈琲の雨 (140文字小説)

珈琲の雨 (140文字小説)

 ポタリ、ぽたりと滴が落ちる。

 落ちるたび滴が跳ねる。

 それはまるで、子供がはしゃいでいるようだ。

 くすっ、はしゃいでいるのは私か。

 ドリップされる珈琲を眺めて、私はうきうきしている。

 珈琲の雨にうたれたいと、一度彼に話した。

 火傷しそうだなと笑った彼と、私は今日、式を挙げる。

見つかった写真 (140文字小説)

見つかった写真 (140文字小説)

 結婚後、初の失態を犯した。

 威厳ある夫であるための奮闘が、全て水泡に帰した。

 処分したはずの、昔の恋人との写真が発見された。

 とても、その構図は人様には言えないものだ。

 妻がわなわなと震えている。

「あははははは!」

 怪我とはいえ、女性にお姫様抱っこされた一枚。

 男の威厳が…

理想の夫婦 (140文字小説)

理想の夫婦 (140文字小説)

 結婚25年、妻の思いがわかりませぬ。

 長く連れ添うと、阿吽の呼吸と言いますか、お互いの心がわかるらしいのです。

 どうやら、私にはその力が欠如しているようです。

 今日の妻は冷麺の気分だったそうです。

 私は鍋を作りました。

 今日も罵声を浴びました。

 嗚呼、理想の夫婦とはなんぞや。

三十女とミルフィーユ (140文字小説)

三十女とミルフィーユ (140文字小説)

 三十になった。

 1Kの部屋で、一人ミルフィーユを頬張る。

 パイとクリームが幾層も積んでいる。

 重なる様は、まるで人生のよう。

 でも私は人生の甘味を知らない。

 恋が未経験だ。

 まわりはどんどんと結婚する。

 けれど、焦る感情はない。

 なるようになるさと、私は今日も気楽に一日を終える。

恋は突然 (140文字小説)

恋は突然 (140文字小説)

 瞼が動かない。

 僕の目は一瞬で固まった。

 透き通ったように輝く金色の髪。

 純白の真白い皮膚。

 澄んだ海のような碧い瞳。

 つり革で揺れる僕は、正面の女性に恋をした。

 結婚してください。

 僕は囁くように想いを告げた。

 彼女はにこりと答えた。

「あなたのランドセルが取れたら考えるわ」

あの頃は、臆病だった(後編) (140文字小説)

あの頃は、臆病だった(後編) (140文字小説)

「元気にしてますか?」

 スマホにメッセージが浮いた。

 部活の後輩。何年ぶりだろう。

 俺は彼女の記憶を手繰った。

 あの頃は無謀にも、彼女に惹かれていた。

 でも自信がなかった俺は、無言で卒業した。

「元気だよ」

 気軽な思いで返信した。

 これが、彼女の薬指が煌めいた、きっかけだった。

あの頃は、臆病だった(前編) (140文字小説)

あの頃は、臆病だった(前編) (140文字小説)

 私は後輩で、あの人は先輩だった。

 決して頼りになる人じゃない。

 でも、なぜか気になる人だった。

 気持ちは伝えず、学園生活を終えた。

 社会に出たら時折、どうしているだろうと思い起こす。

 LINEの友だちをスクロールする。

「元気にしてますか?」

 私は勇気を込めて、矢印に指を落とす。

最強は誰だ!? (140文字小説)

最強は誰だ!? (140文字小説)

 鋭いジャブが来た。

 俺は蝶のようにかわす。

 この試合は敗けられない。

 俺には誓いがある。

 隙あり!カウンターだ。

 王者がリングに倒れた。

 勝った。

 俺はリンクサイドの彼女に叫ぶ。

「結婚しよう!」

「いや。ボクサー収入安定してないし」

 俺もリングに伏す。

 ダブルノックダウンだ。

運命ってなに? (Twitter140文字小説)

運命ってなに? (Twitter140文字小説)

 食器が割れる音がした。
 見ると、初めて両親がケンカしていた。
 理由を訊くと、二人を運命と言った占い師が詐欺で逮捕されたらしい。
「私達は運命じゃなかったのよ」
 母が顔を覆って泣いている。
「結婚したなら運命じゃないの?」
 私がそう言うと、両親は納得して抱擁した。
 アホな親だ。

寄りかかる運命の人 (Twitter140文字小説)

寄りかかる運命の人 (Twitter140文字小説)

 揺れるバスの中、俺は眠る女性に肩を貸している。

 余程眠りが深いのか、肩を揺らす程度では目を開けない。

 次の停留所で降りないと行けない俺は女性の頭をトントンと叩く。

 バスの停車と同時に目を覚まし、女性は俺と降りてしまった。

 そして二人は結婚を……

 という恥ずい夢で目が覚めた。

月がきれい (Twitter140文字小説)

「今日は月がきれいですね」と晶子の同僚教師である前田が呟いた。

 晶子は平静を装うが心拍は通常より力がある。

 単純に風景を愛でたのか、「今なら手が届きますよ」と返すか逡巡する。

 晶子は意を決し後者を選ぶ。

 「じゃあ翳してみましょう」

 言われて翳す晶子の薬指にすっと小さな月が煌く。

あとがき

ハロウィンの夜空に輝くブルームーンを見て頭に浮かんだ作品です。

色々と手順を省略して

もっとみる