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柏心の黄身の部分(おはなし系)

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見た夢を文章にしてみたり、言葉遊びだったり、世界を滑稽に遊んでしまえという気持ちで書いてます。お付き合いいただけると喜びます。
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記事一覧

ピエトロの冒険 「夜の中の朝 たぶんその1」

ピエトロの冒険 「夜の中の朝 たぶんその1」

背の高いススキが生い茂っている。ピエトロの背をゆうに超えている。向こうがどうなっているのか全然見えない。空はもうずいぶんと赤くなっていた。怖くてどうしたらいいのかわからない。だけどピエトロは甘い香りを頼りにススキを避けながら進んでいった。。。

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町の名前は、ポンテ ポルトゥス。「橋渡しの港」という意味があるらしい。ここは色んな

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短編物語「夢の中の人」

短編物語「夢の中の人」

ふと気づくと、私はどこだか知らない道のまんなかに立っていた。

深い緑色をした歩道橋。うっすらと青みがかった車道。白い鉄骨でできた背の高いビルが立ち並んでた。

なんだか雰囲気のちがうこの場所で、私は落ち着いた表情であたりを見渡していた。

両側にある歩道にたくさんの人がいた。音がとても静かだったので、こんなにたくさんの人がいるのに気づかなかった。

だけど、誰も喋っていないし息をしているのだろう

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短編物語「緑色をしたアップルティー」

短編物語「緑色をしたアップルティー」

アニエスは、天気が良かったので町へ出かけることにした。

外は夏の背中が見えるころで、うだるような暑さは通り過ぎた。風はひんやりと冷えはじめ、その風が髪を撫でていくのがアニエスは好きだった。

『誰かいるかしらね。ちょっとお茶したい気分だわ。』

お昼も過ぎて少し小腹もすいたので、町で友達を見つけたらお茶でも誘おうと、そんな気持ちで鼻歌を歌いながら町まで歩いた。

『そういえば、アルタの森の近くに

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短編物語「すき焼きの牛脂」

短編物語「すき焼きの牛脂」

すき焼きっていう料理は美味しい。

最初に肉を焼くために牛脂を鍋に入れ、脂を伸ばす。

その後、肉を焼き、割下を入れてお野菜を煮ていく。

旨味のために牛脂も入ってる。

一通り食事を終えると、鍋にはしぼみきった牛脂が残ってる。

脂は溶け出し、割下をずいぶん吸っている。

美味しいものって体に悪いよね?

だから、すき焼きに使うお肉はなるべく脂身の少ないところが良い。

なぜかって、最後に残った

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短編物語「部屋の掃除をしろと言われた」

今日も一日終わったので、私は眠りについた。割と夢は見ない方だ。いや、見てるのかもしれないけど覚えていない。

だけど今日は、夢を見た。

海辺に来ていた。私は砂浜を一人で歩いていた。特に冷たいわけでもなくぬるい感じ。いや、何も感じてないかもしれない。

浜辺に人が立っていた。

「部屋の掃除をしなさい。」

「そして真実を探しましょう。」

そして目が覚めた。

『なんか印象深い夢を見たな。誘われ

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短編物語「カステッロ・オレオの生誕祭」

短編物語「カステッロ・オレオの生誕祭」

カステッロ・オレオ。初代国王シュガーハイ・オレオが建国した国「ブラウンシュガー・オン・ザ・ヒル」の中心にある大きなお城だ。このお城を中心に半径50kmに城壁がぐるりと円を描いている。

城壁には5つの塔が立っている。北から時計周りに、大空の塔、太陽の塔、森の塔、泉の塔、月の塔がある。それぞれのエリアには特色があった。天文学や天気の研究所や大学のあるエリア、金属の扱いに優れたエリア、木材や農耕に優れ

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短編物語「ババロア味のガム」

短編物語「ババロア味のガム」

アニエスは、ババロアが好きだ。お父さんはパティシエで、彼の作るババロアが本当に美味しくて、お店が終わると余りをもらってよく食べていた。

だけど、いつも夜に食べていたからなのか虫歯ができてしまった。

だけどアニエスは歯医者が大っ嫌いだったので、病院には行こうとしなかった。お父さんが何とか病院へ連れて行ったものの、歯医者さんも最近虫歯の子供が増えてきていて困っていると話していた。

アニエスのお父

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短編物語「物憂げなゲナ」

短編物語「物憂げなゲナ」

ゲナは17歳。お年頃真っ只中の女の子だ。

ゲナは学校にいた。

窓の手すりに寄りかかり頬杖をついていた。

「はぁ・・・。」

窓の外は曇り空。ゲナもなんだか晴れない気持ちでヤキモキしていた。

「ゲナちゃん!クラス始まるからそろそろ窓閉めよー」

クラスメイトのビネルちゃんが話しかけてきた。

ゲナは返事をしようと振り向いた。

振り向いた時、なぜかジムンくんと目があってしまった。

ゲナは少

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短編物語「晴天のペキペキ」

短編物語「晴天のペキペキ」

朝、ベランダに出ると寒さに思わずフーッと息を吐いた。真っ白い息は視界を覆った。

昨日の大雪とは裏腹に、今日の空はまっさらの青だ。まさに真っ青。外は凄く寒いけど、日差しは凄く温かい。とても気持ちがいいので、朝からコーヒーを淹れる事にした。

私はコーヒーに”うるさい方”なので、豆をガリガリするところから始めた。このガリガリが心地いい。なんだか頭の中のいらないものをほっぽり出して、空っぽになるような

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短編物語「レモンサワーのアテ」

短編物語「レモンサワーのアテ」

小林、中林、大林の3人は仲がいいけど、良く喧嘩をしていた。

中林は、よく間を取り持つ良いやつだ。

今日はいつになく、小林と大林は揉めていた。

「レモンサワーには塩辛だろ!」

「だからお前はエセグルメなんだよ!チーズにサラミだろ!」

「だったら小指立ててワイン飲んでろ!」

「お前はレモンサワーのジョッキ小指立てて飲んでるじゃねぇか!」

「ジョッキの取ってが狭いから小指が出てるんだよ!」

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短編物語「ブランド・ブランドーの所作」

短編物語「ブランド・ブランドーの所作」

ブランドものを沢山身に着けている彼の名はブランド・ブランドー。

いつもブランド物を沢山身に着けてブラブラしているので、「ブラブラ」と呼ばれている。

夏休みに入ったそのころ、その町のみんなは遠くへ出かけた。

町に人はほとんどいなかった。

ブランドーは、いつもの様に沢山のブランドを身に着けて町へ出た。

しかし、誰もいない。

ブランドーは奇妙な気持ちになった。

「町に誰もいないんじゃ、服を

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短編物語「小粋な夜道」

月光(げっこう)に照らされた田舎道に、
拳の様なうんこが落ちていた。

通り道にあるもんだから、通りすがりに横目でチラリと見てみた。

「ゲッコーッッッ。」

そこには、こちらに気づいて驚いた顔をしているゴツゴツしたカエルがいた。

目を真ん丸にしてこっちを見てるもんだから、こっけいでひとりで笑ってしまった。

なんだか考え込んでいた事があほらしくなってきた。

「この世を難しくしているのは自分か

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短編物語「チラチラのネチコ」

短編物語「チラチラのネチコ」

ベランダから下をのぞいたら、今日も見つけた。

チラチラのネチコ。

いつも電柱の影から顔を出している。

チラチラのネチコはこの辺りをナワバリにしている野良ネコだ。

すぐ横の幼稚園に通ってるチコちゃんが見つけたネコだからネチコ。

チコちゃんも幼稚園のさくから背伸びしていつもチラチラ見てる。

でも時々、チラチラのネチコがいなくなる時がある。

チコちゃんはネチコに会うのが楽しみだから、ネチコ

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