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短編物語「カステッロ・オレオの生誕祭」

カステッロ・オレオ。初代国王シュガーハイ・オレオが建国した国「ブラウンシュガー・オン・ザ・ヒル」の中心にある大きなお城だ。このお城を中心に半径50kmに城壁がぐるりと円を描いている。

城壁には5つの塔が立っている。北から時計周りに、大空の塔、太陽の塔、森の塔、泉の塔、月の塔がある。それぞれのエリアには特色があった。天文学や天気の研究所や大学のあるエリア、金属の扱いに優れたエリア、木材や農耕に優れたエリア、水力や浄水などに優れたエリア、政治や情報に優れたエリアだ。

この大きな町は、年に6回もお祭りがある。

6月17日の『カステッロ・オレオの生誕祭』、8月17日の『太陽の生誕祭』、10月17日の『大空の生誕祭』、12月17日の『月の生誕祭』、2月17日の『泉の生誕祭』、4月17日の『森の生誕祭』だ。

お祭り当日の一週間も前から、お祭りは始まる。

そして今日は6月10日だ。カステッロ・オレオの周りにお祭りの屋台が立ち始めた。そして、初代国王シュガーハイ・オレオの石像の前には大きなかがり火がたかれ、お祭りの間はずっと燃えている。

このお祭りの日は、近隣の町からもたくさんの人が訪れる。みんなのお目当ては「カステッロ・オレオ」だ。そう、お城の名前と同じお菓子だ。

ココアを混ぜて焼かれた丸くて薄いクッキーの間にカスタードクリームとミルククリームが挟まったお菓子だ。カスタードのオレオなのだが、初代国王が大好きだったのと、お城の名前にも似ているので、カスタード・オレオならぬ「カステッロ・オレオ」とみんなは呼んでいる。

「フォレスト・ホワイトローズミルク」という名前の森の塔ブランドのミルクをよく冷やして一緒に飲むと凄くおいしい。濃すぎないその牛乳はのど越しと口当たりががよく、最後に白いバラのような香りが残る。そこにカステッロ・オレオのカスタードの甘い味が見事に調和するのだ。

「美味しいお菓子をみんなで楽しみながら味わえるような、そんな世の中にしたい。争うことがないよう、よく学び、違いを受け入れ、協力し合おう。そして、よく働き、みんなでこの世界を祝おう」

初代国王シュガーハイ・オレオは、このように言った。だから、この街にはお祭りが多い。

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