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門外漢かつ素人として教育学を探究することを生涯の趣味としています。 2024年の探究…

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門外漢かつ素人として教育学を探究することを生涯の趣味としています。 2024年の探究テーマ: 「ルソーの『エミール』のソフィの教育について考える」 born in the 80s. belonging to nowhere.

記事一覧

【感想②】共学化について語るときに我々の語ること

アメリカ教育史の中の女性たち  ジェンダー、高等教育、フェミニズム 坂本 辰朗 (2002年) 埼玉が、揺れているらしい。 埼玉の県立高校には、別学の学校(男子校・女子校…

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6日前
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【感想】あの時、先生が考えていたこと

アメリカ教育史の中の女性たち  ジェンダー、高等教育、フェミニズム 坂本 辰朗 (2002年) 結局のところ著者が一番言いたいこと を大胆に推測する 19世紀後半のアメリカ…

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7日前
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【要約】アメリカ教育史の中の女性たち

アメリカ教育史の中の女性たち  ジェンダー、高等教育、フェミニズム 坂本 辰朗 (2002年) 要約 第1章 ボストンラテンスクール共学化論争 1877年、アメリカ・ボストン…

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12日前
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【感想】とも呼べない雑文

どのような教育が「よい」教育か 苫野 一徳 (2011年) 結局のところ著者が一番言いたいこと を大胆に推測する 教育について色んな人が好き勝手に語りすぎて、教育界は迷…

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2か月前
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【要約】どのような教育が「よい」教育か

どのような教育が「よい」教育か 苫野 一徳 (2011年) 要約 0. 教育の世界の規範欠如 現代の教育学は、「よい教育とは何か」という素朴な疑問に答えることができない。 …

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2か月前
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【感想】数値や順位を追わない教育

もうひとつの教育 村井 実  (1984年) 結局のところ著者が一番言いたいこと を大胆に推測する 普段とは違う土地に来て違う景色を見ていると、いつも見ていたものが違って…

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4か月前
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【要約】もうひとつの教育

もうひとつの教育 村井 実  (1984年) ※画像とページ数は『村井実著作集7』(1988年)のもの 要約  ドイツ、ケルンからの手紙 五月のドイツは花盛りです。見慣れない…

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4か月前
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【感想③】フェミニズムの真の敵

もうひとつの声で 心理学の理論とケアの倫理 キャロル・ギリガン (2022年 日本語訳 出版) この本はフェミニズムの現代的古典とも呼ばれるほど有名になったと書いたけ…

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6か月前
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【感想②】自己犠牲を越えて

もうひとつの声で 心理学の理論とケアの倫理 キャロル・ギリガン (2022年 日本語訳 出版) (前回からの続き) ※「男性」「女性」という言葉は、この記事では「男性…

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6か月前
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【感想】「もうひとつの声」のダブルミーニング

もうひとつの声で 心理学の理論とケアの倫理 キャロル・ギリガン (2022年 日本語訳 出版) 結局のところ著者が一番言いたいこと を大胆に推測する 論理性。抽象的思考…

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6か月前
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【要約】もうひとつの声で

もうひとつの声で 心理学の理論とケアの倫理 キャロル・ギリガン (2022年 日本語訳 出版) 【要約】 第一章 人間/男性のライフサイクルにおける女性の位置 歴史…

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6か月前
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【感想②】〇〇力(りょく)を伸ばす教育

学校と生活を接続する   ドイツの改革教育的な授業の理論と実践 田中怜 (2022年) 教育の話で、 「今の時代、〇〇力(りょく)を伸ばすのが大事だ」という主張はとてもよ…

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8か月前
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【感想】どこにでもある「変化の激しい時代」

学校と生活を接続する   ドイツの改革教育的な授業の理論と実践 田中怜 (2022年) 結局のところ著者が一番言いたいこと を大胆に推測する 「学校は、社会に出てから役に…

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8か月前
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【要約】学校と生活を接続する

学校と生活を接続する   ドイツの改革教育的な授業の理論と実践 田中怜 (2022年) 【要約】 序章 なぜ、学校と生活の接続が問題となるのか 「学校の勉強は 実生活(実…

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8か月前
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【感想②】「囲い込むこと」と「飛び出すこと」

よい教育とはなにか 倫理・政治・民主主義 ガート・ビースタ (2016年 日本語訳 出版) 「社会化と主体化の間で明確に区別をすることが(まだ)可能なのかどうか、あるいは…

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10か月前
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【感想】教育の目的は主体化か

よい教育とはなにか 倫理・政治・民主主義 ガート・ビースタ (2016年 日本語訳 出版) 結局のところ著者が一番言いたいこと を大胆に推測する 「よい教育とはなにか」と…

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10か月前
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【感想②】共学化について語るときに我々の語ること

【感想②】共学化について語るときに我々の語ること

アメリカ教育史の中の女性たち
 ジェンダー、高等教育、フェミニズム
坂本 辰朗 (2002年)

埼玉が、揺れているらしい。

埼玉の県立高校には、別学の学校(男子校・女子校)が多い。その状況に対し、「県立の学校が女子の入学を拒むのは差別だ!」という意見が寄せられ、県の教育委員会は現在進行形で対応を迫られているという。

埼玉の件について詳しく知りたい方は、↑の記事などをチェックして欲しいのだが、

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【感想】あの時、先生が考えていたこと

【感想】あの時、先生が考えていたこと

アメリカ教育史の中の女性たち
 ジェンダー、高等教育、フェミニズム
坂本 辰朗 (2002年)

結局のところ著者が一番言いたいこと
を大胆に推測する

19世紀後半のアメリカで、女性のためのより良い教育を求めて努力した女性たちがいた。彼女たちが常に逆風にさらされながらも「女性にとって教育はどうあるべきか」を問い続けた姿は、現代の私たちにとってより深い問いーーつまり、「女性と男性双方にとって、より

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【要約】アメリカ教育史の中の女性たち

【要約】アメリカ教育史の中の女性たち

アメリカ教育史の中の女性たち
 ジェンダー、高等教育、フェミニズム
坂本 辰朗 (2002年)

要約

第1章 ボストンラテンスクール共学化論争

1877年、アメリカ・ボストンの教育委員会にある請願が届く。曰く、「ボストンラテンスクールに女子が入学するのを認めよ。」

ボストンラテンスクール(以下、BLS)は、ハーバード大学へ最も多くの入学者を輩出している名門男子校で、当時既に250年の歴史と

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【感想】とも呼べない雑文

【感想】とも呼べない雑文

どのような教育が「よい」教育か
苫野 一徳 (2011年)

結局のところ著者が一番言いたいこと
を大胆に推測する

教育について色んな人が好き勝手に語りすぎて、教育界は迷走しているけど、もうやめにしよう。教育の本質は、「「それぞれの人の自由」と「みんなの自由の相互承認」を実現すること」だと言って間違いないから、この定義を土台にして、議論を始めよう。

この本を読んで、
想起し発想し、
感想して思

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【要約】どのような教育が「よい」教育か

【要約】どのような教育が「よい」教育か

どのような教育が「よい」教育か
苫野 一徳 (2011年)

要約

0. 教育の世界の規範欠如

現代の教育学は、「よい教育とは何か」という素朴な疑問に答えることができない。
絶対的な価値観の押しつけを嫌うあまり、「人はそれぞれが決めるよさ(目的、価値)を追うしかない」という相対主義的ニヒリズムに陥っている。

教育について、相対主義的でない考えも一部にはある。しかしたいていは、「これが正しい教

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【感想】数値や順位を追わない教育

【感想】数値や順位を追わない教育

もうひとつの教育
村井 実  (1984年)

結局のところ著者が一番言いたいこと
を大胆に推測する

普段とは違う土地に来て違う景色を見ていると、いつも見ていたものが違って見える。
海外から日本の教育を考えた時、明治以降のそれがとても窮屈で型にはまったものだったことに気づく。国家(お上)の都合を優先させてきた教育から、教育を受ける子ども自身をもっと尊重する教育へ――「人はみな善くなろうとしている

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【要約】もうひとつの教育

【要約】もうひとつの教育

もうひとつの教育
村井 実  (1984年)
※画像とページ数は『村井実著作集7』(1988年)のもの

要約

 ドイツ、ケルンからの手紙

五月のドイツは花盛りです。見慣れない花、家々の庭の様子、深い森――教育というのは こうした自然の中の生活を抜きにして語ることはできません。そして「ワインもたっぷり、思索もたっぷり」でいこうと思います。ここはドイツなのですから。

子どもたちは学校で「この世

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【感想③】フェミニズムの真の敵

【感想③】フェミニズムの真の敵

もうひとつの声で 心理学の理論とケアの倫理
キャロル・ギリガン (2022年 日本語訳 出版)

この本はフェミニズムの現代的古典とも呼ばれるほど有名になったと書いたけど、この「フェミニズム」というモノ(思想?学問?運動?)に僕は最近とても興味を抱いている。

このnoteの、2024年のテーマを、
「ルソーの『エミール』のソフィの教育について考える」と掲げた理由も、フェミニズムに対する関心が大

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【感想②】自己犠牲を越えて

【感想②】自己犠牲を越えて

もうひとつの声で 心理学の理論とケアの倫理
キャロル・ギリガン (2022年 日本語訳 出版)

(前回からの続き)

※「男性」「女性」という言葉は、この記事では「男性性(女性性)の総体」として便宜的に使っているだけで、それぞれの言葉に人間の性別を限定する意図はない。

ギリガンは、女性に行った膨大で丁寧なインタビュー調査から、女性には男性と違う道徳性の発達の型があることを発見した。ものすごいシ

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【感想】「もうひとつの声」のダブルミーニング

【感想】「もうひとつの声」のダブルミーニング

もうひとつの声で 心理学の理論とケアの倫理
キャロル・ギリガン (2022年 日本語訳 出版)

結局のところ著者が一番言いたいこと
を大胆に推測する

論理性。抽象的思考力。普遍的で公正な権利…
これらの価値はもちろん大事だ。だけど、そうじゃない「もうひとつの側」に 今まで見落とされてきた価値もある。それは、ケア、自他への責任、つながり、非暴力…
これらの価値は、女性の声を丁寧に、真摯に聴くこと

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【要約】もうひとつの声で

【要約】もうひとつの声で

もうひとつの声で 心理学の理論とケアの倫理
キャロル・ギリガン (2022年 日本語訳 出版)

【要約】

第一章 人間/男性のライフサイクルにおける女性の位置

歴史的に、社会は「人間」という概念・イメージについて 明らかに男性(または男性性)を規準とし、それを人間一般に適用してきた。もっと言うと、「人間」という時 そこには男性しか想定されていなかった。男性に対し、女性はずっと非正規

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【感想②】〇〇力(りょく)を伸ばす教育

【感想②】〇〇力(りょく)を伸ばす教育

学校と生活を接続する
  ドイツの改革教育的な授業の理論と実践
田中怜 (2022年)

教育の話で、
「今の時代、〇〇力(りょく)を伸ばすのが大事だ」という主張はとてもよく聞くが、さあ、この「〇〇」には何が入るか?

思考力?判断力?表現力?
コミュニケーション能力、課題解決能力、応用力、行動力、忍耐力??

下手したら聞いた人の数だけ答えがあるかもね。

しかし、まだまだありますよー。マイナビ

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【感想】どこにでもある「変化の激しい時代」

【感想】どこにでもある「変化の激しい時代」

学校と生活を接続する
  ドイツの改革教育的な授業の理論と実践
田中怜 (2022年)

結局のところ著者が一番言いたいこと
を大胆に推測する

「学校は、社会に出てから役に立つことを教えよ」と言う批判(それは世間の大半だ)は、学校教育についての考えが浅い。学校と生活(現実・社会)はそんなに単純につながらないし、無理につなげるべきじゃない。学校は、現実や社会や生活そのものじゃなく、それらと切り離さ

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【要約】学校と生活を接続する

【要約】学校と生活を接続する

学校と生活を接続する
  ドイツの改革教育的な授業の理論と実践
田中怜 (2022年)

【要約】

序章 なぜ、学校と生活の接続が問題となるのか

「学校の勉強は 実生活(実社会、将来)の役に立たない」
「学校が実生活とかけ離れている」
などの批判は、近代的な学校が誕生してから、常に、あらゆる場所でなされてきた。このような「学校で学ぶことは生活に繋げられるべきだ」という言説と、それを取り巻く諸問

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【感想②】「囲い込むこと」と「飛び出すこと」

【感想②】「囲い込むこと」と「飛び出すこと」

よい教育とはなにか 倫理・政治・民主主義
ガート・ビースタ (2016年 日本語訳 出版)

「社会化と主体化の間で明確に区別をすることが(まだ)可能なのかどうか、あるいは我々は、全ての主体化が究極的に社会化の形式なのだということを容認するのかどうか」(152)

ビースタのこの言葉を見た瞬間、僕の記憶は10年以上遡り、学部生時代の先輩とのやり取りを思い出した。

その頃の僕は、どこにでもいる(少

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【感想】教育の目的は主体化か

【感想】教育の目的は主体化か

よい教育とはなにか 倫理・政治・民主主義
ガート・ビースタ (2016年 日本語訳 出版)

結局のところ著者が一番言いたいこと
を大胆に推測する

「よい教育とはなにか」という議論、つまり「教育の目的」についての議論が軽視されすぎ。教育の目的について、専門家や教師、親だけでなくあらゆる立場の人が議論すべきだよ。それは民主主義の根幹だからね。
学校教育は「主体化の機能」を最も重視すべき。つまり、子

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