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門外漢かつ素人として教育学を探究することを生涯の趣味としています。 2024年の探究…

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門外漢かつ素人として教育学を探究することを生涯の趣味としています。 2024年の探究テーマ: 「ルソーの『エミール』のソフィの教育について考える」 born in the 80s. belonging to nowhere.

最近の記事

【要約】もうひとつの教育

もうひとつの教育 村井 実  (1984年) ※画像とページ数は『村井実著作集7』(1988年)のもの 要約  ドイツ、ケルンからの手紙 五月のドイツは花盛りです。見慣れない花、家々の庭の様子、深い森――教育というのは こうした自然の中の生活を抜きにして語ることはできません。そして「ワインもたっぷり、思索もたっぷり」でいこうと思います。ここはドイツなのですから。 子どもたちは学校で「この世界」の事を学びます。彼らが学校で教わる言葉、知識、技術、文化、そして感性も、それ

    • 【感想③】フェミニズムの真の敵

      もうひとつの声で 心理学の理論とケアの倫理 キャロル・ギリガン (2022年 日本語訳 出版) この本はフェミニズムの現代的古典とも呼ばれるほど有名になったと書いたけど、この「フェミニズム」というモノ(思想?学問?運動?)に僕は最近とても興味を抱いている。 このnoteの、2024年のテーマを、 「ルソーの『エミール』のソフィの教育について考える」と掲げた理由も、フェミニズムに対する関心が大きく影響している。 ※1:ソフィとは、かの有名なルソーによる、有名な教育思想書『

      • 【感想②】自己犠牲を越えて

        もうひとつの声で 心理学の理論とケアの倫理 キャロル・ギリガン (2022年 日本語訳 出版) (前回からの続き) ※「男性」「女性」という言葉は、この記事では「男性性(女性性)の総体」として便宜的に使っているだけで、それぞれの言葉に人間の性別を限定する意図はない。 ギリガンは、女性に行った膨大で丁寧なインタビュー調査から、女性には男性と違う道徳性の発達の型があることを発見した。ものすごいシンプルに言うと、女性の道徳性の発達とは、「誰をケアするか」の考えが深まることと、

        • 【感想】「もうひとつの声」のダブルミーニング

          もうひとつの声で 心理学の理論とケアの倫理 キャロル・ギリガン (2022年 日本語訳 出版) 結局のところ著者が一番言いたいこと を大胆に推測する 論理性。抽象的思考力。普遍的で公正な権利… これらの価値はもちろん大事だ。だけど、そうじゃない「もうひとつの側」に 今まで見落とされてきた価値もある。それは、ケア、自他への責任、つながり、非暴力… これらの価値は、女性の声を丁寧に、真摯に聴くことで見えてきた価値だが、決して女性に属するものではない。権利の視座とケアの視座、両

        【要約】もうひとつの教育

          【要約】もうひとつの声で

          もうひとつの声で 心理学の理論とケアの倫理 キャロル・ギリガン (2022年 日本語訳 出版) 【要約】 第一章 人間/男性のライフサイクルにおける女性の位置 歴史的に、社会は「人間」という概念・イメージについて 明らかに男性(または男性性)を規準とし、それを人間一般に適用してきた。もっと言うと、「人間」という時 そこには男性しか想定されていなかった。男性に対し、女性はずっと非正規的、従属的な存在とされてきたか、あるいはシンプルに無視されていた。女性の不在は、

          【要約】もうひとつの声で

          【感想②】〇〇力(りょく)を伸ばす教育

          学校と生活を接続する   ドイツの改革教育的な授業の理論と実践 田中怜 (2022年) 教育の話で、 「今の時代、〇〇力(りょく)を伸ばすのが大事だ」という主張はとてもよく聞くが、さあ、この「〇〇」には何が入るか? 思考力?判断力?表現力? コミュニケーション能力、課題解決能力、応用力、行動力、忍耐力?? 下手したら聞いた人の数だけ答えがあるかもね。 しかし、まだまだありますよー。マイナビさんが大変丁寧にまとめてくださっている記事からちょこっとだけ紹介しましょう。

          【感想②】〇〇力(りょく)を伸ばす教育

          【感想】どこにでもある「変化の激しい時代」

          学校と生活を接続する   ドイツの改革教育的な授業の理論と実践 田中怜 (2022年) 結局のところ著者が一番言いたいこと を大胆に推測する 「学校は、社会に出てから役に立つことを教えよ」と言う批判(それは世間の大半だ)は、学校教育についての考えが浅い。学校と生活(現実・社会)はそんなに単純につながらないし、無理につなげるべきじゃない。学校は、現実や社会や生活そのものじゃなく、それらと切り離された特殊な機関だ、教育のための。 家庭や職場、公園や野山で行う(生まれる)学習と

          【感想】どこにでもある「変化の激しい時代」

          【要約】学校と生活を接続する

          学校と生活を接続する   ドイツの改革教育的な授業の理論と実践 田中怜 (2022年) 【要約】 序章 なぜ、学校と生活の接続が問題となるのか 「学校の勉強は 実生活(実社会、将来)の役に立たない」 「学校が実生活とかけ離れている」 などの批判は、近代的な学校が誕生してから、常に、あらゆる場所でなされてきた。このような「学校で学ぶことは生活に繋げられるべきだ」という言説と、それを取り巻く諸問題を「学校と生活の接続問題」と呼ぶ。 ここで言う接続には二つの種類がある。一

          【要約】学校と生活を接続する

          【感想②】「囲い込むこと」と「飛び出すこと」

          よい教育とはなにか 倫理・政治・民主主義 ガート・ビースタ (2016年 日本語訳 出版) 「社会化と主体化の間で明確に区別をすることが(まだ)可能なのかどうか、あるいは我々は、全ての主体化が究極的に社会化の形式なのだということを容認するのかどうか」(152) ビースタのこの言葉を見た瞬間、僕の記憶は10年以上遡り、学部生時代の先輩とのやり取りを思い出した。 その頃の僕は、どこにでもいる(少々頭でっかちの)教員志望の学生だった。僕の関心は、「よい教師とは何か」とか「道徳

          【感想②】「囲い込むこと」と「飛び出すこと」

          【感想】教育の目的は主体化か

          よい教育とはなにか 倫理・政治・民主主義 ガート・ビースタ (2016年 日本語訳 出版) 結局のところ著者が一番言いたいこと を大胆に推測する 「よい教育とはなにか」という議論、つまり「教育の目的」についての議論が軽視されすぎ。教育の目的について、専門家や教師、親だけでなくあらゆる立場の人が議論すべきだよ。それは民主主義の根幹だからね。 学校教育は「主体化の機能」を最も重視すべき。つまり、子どもをして既存の秩序や価値を飛び出したり、作り替えたりできるように働きかけること

          【感想】教育の目的は主体化か

          【要約】よい教育とはなにか

          よい教育とはなにか 倫理・政治・民主主義 ガート・ビースタ (2016年 日本語訳 出版) 要約第1章 教育はなんのためにあるのか? 過去20年、教育の効果を測定することへの関心が高まっていきているが(例:PISAなどの国際学力調査)、この風潮には注意が必要である。数値や測定について議論する前に、我々は教育の価値や目的について考える必要がある。しかし、教育の目的についての議論は盛んではない。 その一番の理由は、教育という営み自体の複雑性と困難性にあるのは間違いないが、別の

          【要約】よい教育とはなにか

          【感想②】人間主義的教育の系譜(近代初期)

          (2024年3月、追記) 勉強不足が露呈し、内容について自ら疑義が生じたためコメントを追加した(※の部分)。いっそのこと記事を削除しようかとも思ったが、勉強の足跡という意味で残しておこう。よりしっくりくる、より包括的な内容の文章が書けるまでの間は… ヒューマニティーズ 教育学 広田照幸 (2009) 人文学一般において、歴史は重要だ。いや、その全てと言っていいかもしれない。 子どもの頃から歴史が大の苦手であり嫌いだった私は、こうして大人になり、かつての自分の愚かさと浅はか

          【感想②】人間主義的教育の系譜(近代初期)

          【感想】教育への畏れと敬い

          ヒューマニティーズ 教育学 広田照幸 (2009) 結局のところ著者が一番言いたいこと を大胆に推測する 教育学って大事よ。教師や親にとってはもちろん、そうでない一般市民にとっても教育は社会のあり方/あるべき姿と直結してるから、とっても大事だよ。でも教育学ってバカにされがち。それじゃダメだよ。教育学者はもっと自信持って、思い切って研究して発言しようよ!そしてそれを社会(われわれ一人ひとり)は尊重しようよ! この本を読んで、 想起し発想し、 感想して思い出す 学部生の時

          【感想】教育への畏れと敬い

          【要約】ヒューマニティーズ 教育学

          ヒューマニティーズ 教育学 広田照幸 (2009) 要約 1. 教育論から教育学へ 教育学というのは、とかく軽視されがちな学問である。しかし、その重要性を甘く見てはいけない。教育学の価値は、実用性(例:教師がすぐ使えるようなノウハウ)のみにあるのではないからである。 教育の定義は様々あるが、学問として教育を語る際に大事なのは、そこに価値判断を入れないということである。なるべく客観的に、ドライな定義をすることが大切である。本書では、「教育とは、誰かが意図的に、他者の学習

          【要約】ヒューマニティーズ 教育学