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雨の日の美術館Ⅳ

「雨の日の美術館」は、2017年のレールガン開発の顛末(サドガシマ作戦の4、5年前)を書いたものですが、なぜか、日本人男女のお付き合いという脱線になってます。

エレーナ少佐のサドガシマ作戦、時系列 R1
マガジン『エレーナ少佐のサドガシマ作戦

■「付き合う」とはいったいなんなのか。

「釣る」側の男性と「釣られる」側の女性というジェンダー非対称な構図を前提に、互いにその性別に期待される役割を演じ合いながら「付き合う」に至る関係を模索していく。

たとえ女性側から実質的にアプローチを開始したとしても、女性が男性に告白するのは望ましいこととは思っていないのだという。

女性のほうは特に、特定の異性といい感じになっていった場合、前提として「付き合う/付き合わない」をはっきりさせるべき、という強い意識がある

口には出さずとも、おそらくお互い好き合っているという雰囲気になっているとして、男が女に対して「付き合おう」と確認して関係を確定するべきだ、という規範意識があるようだ。

だから契約を成立させるために、女性が最終的な意思決定者である男性が「付き合おう」と言いやすいように「私のことどう思ってるの?」などと伝えるなど、「匂わせ」を用意するのだという。

雨の日の美術館Ⅳ

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雨の日の美術館Ⅳ
2017年11月12日(日)、美香

 いつの間にか、自然に自宅のベッドの上で尾崎さんと抱き合ってキスしていた。人生で初めて。ドキドキする。尾崎さんはダメだ、ダメだと拒否した。でも、私が「人生で最初で最後の機会かもしれません!」とお願いしたら渋々承諾してくれた。「こんなにキスをおねだりされたのは初めてだ」とブツブツ言ったが不器用に口を尖らせて待っている私に親切にこうするものだ、と教えてくれた。「絶対にキスまでだからね!それ以上はなしだぞ!」と念を押された。確かに、知り合ったその日にキスまでしてしまうのはいきすぎかも。私、はしたない女と思われていないかしら?

 分銅屋で飲んで尾崎さんに駒込までタクシーで送ってもらった。マンションに着いて、彼は俺はここでとタクシーの窓越しに手を振ってそのまま帰ろうとする。え?部屋に来ないでこのまま帰っちゃうの?という顔をしたらしい。尾崎さんが私の顔をジッと見て、運転手さんに「俺もここで降ります」と言ってタクシーを降りてしまった。

 エレベーターで5階の私の部屋の階にあがった。エレベーターの中でキスでもされるかな?と淡い期待があったのに、尾崎さんは私の顔を見てアーカード風にニコニコしている。

 部屋の前で私はガチャガチャと鍵を開けようとした。私は不器用なのだ。なかなか開かない。尾崎さんが「キーをかして」と私の手から鍵を取り上げてサッサとドアを開けてしまう。「さて、じゃあ。俺はここで・・・」とまた帰ってしまう素振り。「あの、お茶でも飲んでいかれませんか?」と私が言うと「ダメだよ、会ったその日に見も知らない男性を部屋に入れては・・・」と言ったが「・・・わ、わかった、わかりました。お茶を頂きます」とやっと部屋に入ってくれた。

 尾崎さんが「じゃあ、ここで」と言ってダイニングテーブルに座った。私は台湾で買ったこげ茶の茶器セットをお盆に並べてテーブルに持っていった。ちょうど頂き物の鳳凰單欉という御大層な名前の潮州市(テオチュウ)の銘茶があった。今日食べようと思っていた近所の和菓子屋で買ったみたらし団子もお出しした。
 
「美香さんは烏龍茶の淹れ方をご存知なんですね」と尾崎さんは小ぶりの湯呑をあおって言う。「台湾に旅行に行った時に教わったんです」「ちゃんと洗茶されている」「どうなんでしょう?洗茶した烏龍茶のほうが私はおいしく思うんですけど」「俺も烏龍茶は洗茶します。なんとなく埃っぽい気がする。このみたらし団子、うまいね?」

「これ、近所の小さな和菓子屋さんで買ってきたものです。大量生産じゃない手作りの味が好きなんです」「烏龍茶にみたらし団子も斬新な取り合わせだ」「今日食べようと思って買ってきたんです。取り合わせ、斬新かな?」「俺はそう思う。美香さんは斬新だろうな」「・・・あの、ひとつお聞きしてもいいですか?」

「ああ、なんです?」
「さっき、タクシーを降りないで帰ろうとなさったでしょ?それが降りて玄関まで来ていただいて、でも、『さて、じゃあ。俺はここで・・・』とまた帰ってしまう素振りをなさった。『お茶でも』と私が言ったら『ダメだよ、会ったその日に見も知らない男性を部屋に入れては・・・』と言われたけど最終的に『わかった、わかりました。お茶を頂きます』って二転三転されたでしょう?なぜ気が変わったのかな?と思いまして。不躾ですみません」

「そうか!お付き合いをしましょうというのは、自分の行動原理を説明するという手間も増えるんだな、って面倒な手間じゃない。まずね、タクシーを降りたのは美香さんが下唇を噛んでウルウルした目で両手を組み合わせて俺を見たからだ。玄関まではいいだろう、と思って。エレベーターの中でも美香さんはモジモジしていた。で、今日初対面の相手だからさすがに部屋に入るのは躊躇した。そうしたら、玄関まで『お茶でも』と俺を見上げて、口をへの字に曲げてすがるように見るものだから、美香さんの顔に負けて今ここに座っているってわけだ」

「・・・それって、私、また尾崎さんの言われる変顔していたんですか?」
「ああ、今もそうだけど、その顔、もうちょっと見ていたいな、と思った」
「どんな顔を私しているんだろう?今までそんなことを言われたのが初めてで・・・」
「そうだなあ、その理由は1)美香さんの周囲のみんなが当然当人もわかっているだろうと指摘しなかった、2)普通そんな表情は見せないしないのに、俺相手だと変顔を見せてしまう、このふたつだろうな」
「今度、手鏡を持ち歩いて自分の顔を観察します!」
「ムキになることはないよ」
「でも、尾崎さんが変顔だって言うものだから・・・」
「いいや、俺にとっては可愛い表情という意味なんだ。変顔は使わないようにしよう」

「尾崎さん、お聞きしていいですか?」
「何?」

「今日、尾崎さんは『お試しに俺とお付き合いしませんか?』って言われた。私はうれしかったんですけど・・・『私なんかと?私でいいんですか?』というのはおいておいて、私がお付き合いさせて下さい!と言ったのは本心なんですが・・・私、経験がないでしょ?だから『お付き合い』って具体的にどうするのかわからないんです」

「そうだなあ、まず、定期的に連絡を取って会うことから始める」
「メモを取っていいですか?」メモ取るの?という顔を尾崎さんがした。だって、忘れたら困るもん。

「つまり、まずはよそ行きの相手を観察する。会話が合うか、話題が合うか、一緒にいて楽しいかどうか、確認する」
「私、経験がないから比較のしようがありませんが、尾崎さんとご一緒していて飽きません」
「ま、飽きないというのはいいことだ。俺も美香さんと一緒で飽きないよ」
「変顔するから?」

「それだけじゃないって。え~っと、フランス料理店で料理とワインの組合せを考えるのをマリアージュと言うんだ。英語のマリッジ、結婚。どんなに美味しい料理とワインでも合わないこともある。鴨料理に冷やした甘口の白ワインは似合わない。もっとスパイシーでタンニンが残る赤ワインが似合う。また、マリアージュの基本は、同じ地方で造られているもの同士を合わせるということ。同じ地方でなくてもいいけど、例えば石垣島と横浜とか、合わせるのが難しくなる」
「ウンウン」

「ワインと料理なら表現は美しいが、人類の男と女なんだから、もっと形而下的な要素が多々ある。美香さんの部屋はキチンと片付いていて綺麗好きなのがよくわかる。建築のパース図とか考えてレイアウトしてあって人となりがわかる。俺も綺麗好きだ。しかし、俺か美香さんが相手を超えてしまう潔癖症だったらどうだろうか?今まで一人の完璧に整理清掃されていた空間で生活していた。それが異分子が入り込む。風呂場に抜け毛が散乱したりする。どう思う?」
「私はそこまで潔癖症じゃないです。抜け毛があれば掃除しておけばいいことだし、いちいち尾崎さん抜け毛!とか言いません」

「じゃあ、俺がウンコがついているパンツを平気で脱衣かごに入れたら?」
「う~ん、それは・・・私だって生理ショーツを洗面器の水に浸して入れてます・・・それはお互い是正するポイント、なのかな?」
「俺もウンコの付いたパンツは脱衣かごに平気で入れないけどね。まあ、そういうように形而下的なすり合わせポイントが無数に出てくる」

「なるほど・・・だから、『お試し』しないとわからないポイントが有る、それを明確にしないといけない、ということですね?」
「そうそう。それから、セックスだってある」

「あ!それ、まったくの未経験です!わかりません!」
「まずね、ロマンチックじゃないんだよ。基本は子孫を残す生殖行為。体液を交換する行為だ」
「生々しいですね?」

「夢中になれば気にならないけれど。冷静だとかなり気になる行為では有る。プルースト効果という現象がある」
プルースト効果?」
「目で見た景色などよりも、料理の匂いや味などの方が人の記憶には残りやすい。友人がいつも同じ香水をつけていて、街中でその匂いがすると、その友人のことをふと思い出してしまう。特定のにおいが、それに結びつく記憶や感情を呼び起こす現象は、プルースト効果と名づけられている。フランスの作家マルセル・プルーストの『失われた時を求めて』という小説の中で、主人公がマドレーヌを紅茶に浸した際、その香りで幼少時代を思い出す場面があってその描写が元になっている」
においと記憶

「石垣島の港の潮の香りとか?」
「そうそう、それだよ。俺の場合は潮の香りというと、ちょっと油臭い東京湾の山下公園の香りだ。同じ潮の香りでも石垣島とは違う。それで、仲のいい友人同士は体臭も似通っているという実験結果がある。人間は自分や他人の匂いを嗅いで無意識のうちに体臭の類似性を見つけ、それが友情を促進している可能性があるという説だ。それは、仲の良い恋人同士、夫婦同士にも言えるんじゃないかな?お互いの体臭が似通っていなくて生理的な嫌悪を催すケースも有るかもしれない。その体臭自体は嫌な匂いじゃなくても、どうしても馴染めないという。関西人が関東の納豆の匂いをあまり好まないとか」

「私、尾崎さんからよく乾いた干し草の匂いがして、それ好きです」
「ほほぉ。俺も美香さんから似たような植物性の匂いを感じたよ」
「じゃあ、お互い体臭は合格ですよね?」

「まだあるぞ。口臭とか。キスするとどうしてもお互いの唾液の交換が起こるだろ?それが生臭く感じられたりして、生理的な嫌悪を持つ場合だってある」
「それは・・・キスしてみないとわかりません・・・あの、尾崎さん、今からそれ、お試ししません?」

「え?今から?今日会ったばかりだぞ?」
「今日だって明日だって来週だって、試してみないとわかりません!」
「いやぁ、科学博物館のオムライスとかハンバーグランチ、大統領のモツ焼き、分銅屋のブリカマ、牡蠣と白子の天ぷら、あん肝ポン酢、ほうれん草のおひたし、それに黒ホッピーと日本酒の水戸泉の味がするかもしれんぞ?」
「その表現、嫌だなあ・・・私の初キスが白子の天ぷらと日本酒の味・・・でも、お試しがうまくいかなかったら、私、このままキスも知らないで死んじゃうのかもしれませんよね?・・・イヤです!」

「美香さんの初めてのキスの相手が俺でいいのかなあ・・・出会ってその日にキスするのは初めてだ。相手の女の子にキスして欲しいと言われたのは初めてだ。本州の女の子以外でキスするのは初めてだ」
「お刺身三点盛りですね。私が3つの点で尾崎さんの初めての女になるんですね。素敵!」
「大丈夫かなあ」
「ど、どこでいたしましょうか?ここ?」
「いや、ダイニングテーブルでって座りが悪いでしょ?」
「じゃあ、ソファー?ベ、ベッド?」
「美香さん、声がうわずってる。キス以上しませんよ。ベッドで試します?」
「ハ、ハイ!」

 私、頭がおかしくなっちゃったのかしら?初めて出会った男性にキスをお願いしているんだもの。まさか、それ以上?う~ん、尾崎さんはそれ以上は今日してくれなそうだなあ。あれ?どうすればいいんだろうか?聞いてみないと。尾崎さんがベッドに座った。私もその横に。
 
「初めてのキスか。そんな女の子、大学生の時以来だな。忘れてしまったよ。え~、美香さん、もっと近寄って」
「こうでしょうか?」
「密着しないと」
「こ、こうですね?」私は尾崎さんの左側に座っていた。彼の左手で腰を抱き寄せられた。ああ、ドキドキする。恥ずかしい。尾崎さんの顔が見られない。下を向いてしまった。

「そうそう・それで俺の顔を見て」
「こんな感じですか?」と彼は右手で私の左肩も抱き寄せた。うわぁ、顔が近い。私は目をつぶって顎を上げた。口を突き出す。くるかな?

「美香さんの両手を俺の首に回すんだ」
「こ、こうかな?」
「それじゃあ、俺を突き放している。引き寄せるようにして・・・」
「恥ずかしい・・・顔近いです・・・」
「近いって・・・密着するんだぜ・・・」

「お互いの息がかかるんですね、キスって」
「言っておくがね、キスしている時に息を止めちゃいけないよ」
「お口がふさがっていてどう息をするの?」
「お鼻ってものがあるじゃないか?」
「なるほど・・・あの、ハァハァしたら鼻息が荒くなるでしょ?」
「それはいいことだよ。だって、お互い興奮しているのがわかるんだから」
「そっか」

「言っておくけれど、俺がリードするが、興奮してきても口を大きく開けないこと」
「中位で?このくらい?」
「そういうこと。それでだね、唇を吸ったりちょっと噛んだり、舌を絡み合わせる。相手の唇に意識を集中させること。自然に唾液が出てくる。俺が吸うこともあり、美香さんが吸うことも有るけど、溢れるほどになる前に口を離して唾液は飲み込む。口から唾液が溢れ出るからな」

★ プルースト効果 - 仲のいい友人同士は「体臭」も似通っている


雨の日の美術館Ⅳ
2017年11月14日(火)、優子

 一体何時間立ちっぱなしだったんだろう?

 昨日月曜日の08:40に東京駅の社のロッカーで制服に着替え出社して、ワゴンの準備をした。09:30ののぞみに乗車。私はシニアパーサーだが、今日はワゴンサービスに回った。3人1組の乗務。クルー・マネージャーは智子にやってもらった。クルー・マネージャーと聞こえはいいが、車内のトイレの掃除、お客様の忘れ物の確認、不審物・不審者のチェック、お客様への対応、ワゴンサービスの補充などの手伝いなどで忙しい。私は接客ができてお客様と会話のできるワゴンサービスの方が好きだ。

 昨日の乗務は、09:30→12:00ののぞみ21号で東京-新大阪。15:09→17:36ののぞみ30号で新大阪-東京。20:00→22:27ののぞみ109号で再び東京-新大阪。新大阪では社の指定旅館で1泊。そして、今日はぐずる智子を04:00に叩き起こして旅館を出て、05:00新大阪に出社。06:00の始発のぞみ200号で東京へ。東京駅着08:23だった。東京駅で引き継ぎ、次の業務確認をして09:30に勤務終了。翌日朝までオフ。乗務する車輌はずれてくるがだいたいこの予定で週3回ローテされて、1日オフだ。もちろん日曜日が休みとは限らない。

 私や智子は大卒でJR小会社の正社員だから月給は17~18万円ほど。まだ恵まれているが、一緒にチームを組んでいる由紀恵は派遣会社所属。月14~15万円程度にしかならない。ハッキリ言って薄給でブラックな仕事なのだ。最初の1年で半数は止めていく。私と智子は入社から4年目。もうこれでベテラン組扱いされてしまうのだ。

 女性ばかりの職場で、やっていることはキャビンアテンダントや看護師の仕事と似ている。ようするに体育会系のサークルみたいなもの。上下の関係に厳しく自分に優しく人に厳しく、お局様ごとの派閥がある。30才を超えたパーサーはお局様なのだ。

 こんな収入だから一人住まいなど望めない。私は智子と大井町の2DKのアパートをシェアしている。それから会社に内緒でバイトも。

 同僚や先輩の中には水商売に走る人もいる。智子もそうだ。彼女は恵比寿駅近くのガールズバーで働いている。営業時間が早い店なので、新幹線の今日みたいな朝勤の場合、昼から仮眠して夕方にバーに出ていく。私も勧められたが私のスタイルじゃないと断った。智子は男好きのする容姿と性格だ。私はオフの夜まで接客業で笑顔を振りまく気はサラサラない。

 私の副業は不定期な企業コンサル会社のお手伝い程度。英文翻訳やら録音データからの文字起こし、コンサルさんの書類や雑誌記事の代筆などをしていて、そこそこ月に十万円ほどになるのだ。

 智子は心配だ。次の日に新幹線の始発便勤務が入っているような時、午前0時に部屋にへべれけで帰ってくることが有る。朝無理やり起こすが、目の下に隈ができ顔色は土気色になっている。なんとか手伝って化粧で誤魔化すが、先輩のお局様たちに何を言われるかわかったものじゃない。

 朝になっても帰ってこないこともある。彼女は出先から直接出社する。私の勘だけど枕営業をしてるんじゃないか?と疑っている。彼女に言わせたら自由恋愛と言うだろうが。そういう時の週はやけに羽振りが良い。よしなというのだけれど食事代をすべて出そうとしたり。高価な服やバッグを買ってしまう。二ヶ月前に本命の彼氏に振られてから朝帰りが増えた。

 私と智子は25才になった。ダラダラと卒業以来四年過ごしてしまった。

 私はホテルのコンシェルジュかソムリエの職に転職したいと思っている。検定試験はまだ合格していないが。同じ接客業でもパーサーよりはマシだろう。もちろんパーサーの職が嫌いというわけではない。この仕事をしていて、いつの間にか鉄道オタクになってしまった。1日中列車に乗れる職業など女性の場合あまりない。でも、車掌は嫌だな。

 智子にもコンシェルジュとソムリエの話をしたが興味がなかった。

 最近彼女が専念しているのは婚活なのだ。乗車勤務がオフでガールズバーの仕事がない時は必ず婚活パーティーに参加している。「優子も婚活したら?このまま年をとっていって望みもないでしょ?それよりも条件のいい男性と結婚して養ってもらうのが一番。もうアラサーなんだから売り時を逃しちゃうわよ」と言う。

 私はと言えば結婚願望がないとは言わないが、婚活パーティーに行って品評会みたいに選別されることに耐えられない。

 彼女は必ずパーティーで男性をゲットする。確かに容姿端麗で多少派手だが彼女はかなりの美人の部類に入るのだ。でも、知り合った男性とデートして部屋に帰ってくると私に今日の相手の愚痴をこぼす。私は聞きたくないのだけど。

「今日デートした男ってさ、食事の予約をしてないのよ。仕事の接待だったら普通するよね?」
「私の名前を覚えてないのよ。覚えてないどころか別の名前で呼ぶんだよ?失礼しちゃう」
「今日の食事、割り勘よ!あっちが誘って予約したのに割り勘にしましょう、だってさ」
「今日のヤツ、自分のことばかり話していて退屈だったわ」
「デートしてから1日何本もLINEしてくるのよ!今どこ?とか何してる?とか。それで既読がつかないと怒りだすのよ。やってらんない」
「食事中、何度も携帯に着信が来るのよ。着信、切っておくのがマナーでしょ?」
「いいな、と思って1回寝たらもう自分の女扱いで、こっちは下僕みたいになってる」
「ブ男だけどいいところの出なのよ、でも、態度が上から目線過ぎるんだなあ・・・」
「シャツの襟の裏が汚かった」
「体臭がキツイの」
「時間にルーズなのよ」

 私が、その愚痴の中で智子にも同じことが当てはまるじゃないの?相手のあら捜しばかりしていたら、付き合えた相手でも付き合えなくなるわ、と言うと「優子は私の味方になってくれない!」と泣き出すのだ。それでお酒を飲みだす。私も付き合わされる。

「智子は相手に求めることが多過ぎるのよ。じゃあ、相手の立場になったらどう?もしも、理想的な男性と知り合ったら、その男性が感じる智子の魅力って何なの?」と聞いてみる。すると、彼女はしばらく黙り込んだ後、突然また涙を流し始める。

「分かんないよ」と一言。彼女は泣きながら「婚活はゴールが見えない。いくら頑張っても成果は見えない。このまま私はずっと独身なの? と思ってしまう」と。

 自分が頑張っているのに、なかなか結果が見えなくて、自信がなくなってしまった裏返しの愚痴だったのかな。パーサーの仕事ではバリバリとしっかりやっているんだけど。後輩の面倒見もいいんだけどなあ。
 
 智子はちょっとだけ必要以上に依存心と所有欲が強いんだろう。だったら、自分も同じように依存させて所有させれば良いのだけれどそれは嫌なのだ。自分自身は共有されたくないのだ。

 私も智子もレズじゃない。でも、そういう愚痴を言って泣き出す夜は決まって私の部屋に忍んできて私の体を求める。長い付き合いで無下にも断れなかったので1回許したら、その後はたびたび私の部屋に来るのだ。私も性欲がないわけじゃないので、智子に付き合うけど、男とうまくいかないからって、女の私の体に慰めを求めるのもどうなんだろう?
 
・・・このまま、二人とも、相手を見つけられずに、お互いの体に慰めを見出す、という未来は・・・嫌だなあ・・・

★ 女性新幹線パーサー

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フランク・ロイドのリンク

参照:フランク・ロイドのマガジン

私のトップページを見ても、続き物が多いので、何がなにやらわかりません。できれば、下記のマガジン一覧から追っていただければ幸いです。


マガジン「縄文海進と古神道、神社、天皇制

マガジン「ヒンズー教と仏教の原風景

マガジン「フランク・ロイドのエッセイ集」

マガジン「フランク・ロイドのサイエンス」

マガジン「フランク・ロイドの音楽」

マガジン「エレーナ少佐のサドガシマ作戦」

マガジン「フランク・ロイドの『総集編』」

マガジン「フランク・ロイドのヰタ・セクスアリス」

マガジン「性同一性障害と勘違いして悩む義理の妹に悩むぼくの物語」


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