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A piece of rum raisin - 第二ユニバース第8話 渡航、1986年10月12日(日) 第ニユニバース

第1話
  誘惑、1986年10月10日(金)第ニユニバース
→ 森絵美殺害(1985年12月7日)の1年後
第2話
  転移、1986年10月11日(土)第ニユニバース
→ 森絵美殺害(1985年12月7日)の1年後
 第一ユニバース、2010年
第3話
  交代、1986年10月11日(土)第ニユニバース
→ 森絵美殺害(1985年12月7日)の1年後
 第一ユニバース、2010年
第4話
  デート、1986年10月11日(土)第ニユニバース
→ 森絵美殺害(1985年12月7日)の1年後
 第一ユニバース、2010年
第5話
  神岡鉱山、2025年9月8日(月)、第三ユニバース
  高エネルギー加速器研究機構、2010年5月11日(火)、第三ユニバース
第6話
  買い物、1986年10月11日(土)第ニユニバース
→ 森絵美殺害(1985年12月7日)の1年後
  第一ユニバース、2010年
第7話
  融合、1986年10月11日(土)第ニユニバース
→ 森絵美殺害(1985年12月7日)の1年後
第8話
  渡航、1986年10月12日(日)第ニユニバース
→ 森絵美殺害(1985年12月7日)の1年後
第9話
 第一ユニバース、2010年
第10話
  洋子、1986年10月20日(月)、モンペリエ、フランス、第ニユニバース
→ 森絵美殺害(1985年12月7日)の1年後

1986年10月12日(日)、第ニユニバース

 メグミからホテルの部屋になんと午前四時半に電話がかかってきた。「このバカ者共!明彦と絵美と二人、じゃなくて、奈々も入れて三人でイチャイチャしてなさい、私はやってられないわ!今日はホテルに行きません!勝手に三人で楽しむがいいんだわ!じゃあね!明彦!」と言われて、ガチャリと電話は切られた。

「聞こえた?メグミ、怒り心頭なんだよね」とぼくの真横で電話に聞き耳を立てていたナナに言った。確かに、メグミが帰ってから、ぼくはナナと・・・あれ?絵美?と相当イチャイチャしていたのだ。絵美とは久しぶりだからしょうがない。ぼくも絵美(奈々)もかなり酔っ払っていた。それで、イチャイチャして、いつの間にか、寝てしまった。

「いいじゃない。恵美さんがそう言ってくれるんだから、お言葉に甘えて、イチャイチャしようよ。あら?私、寝起きだから、お口、お酒臭い。明彦、歯を磨いてくるわね」とお尻を左右に揺らして、バスルームに行ってしまう。

 あの口調は今は奈々だな?『恵美さん』なんて言っているんだから。ぼくも酒臭い。バスルームに行くと、鼻歌を歌いながら、奈々はシャワーを浴びて、歯磨きをしている。ぼくも歯を磨いた。さっさとシャワーカーテンを開いて、バスタブから出てきて体を拭いている。ぼくもシャワーを浴びた。

 バスルームを出ると、奈々がベッドにうつ伏せになって、枕を抱えてうつ伏せになっていた。バスローブがめくれ上がって、お尻が丸出しになっている。確かに、このお尻はすごい。ぼくは、奈々を仰向けにした。う~ん、とか唸っている。奈々、ゴメンよ、これで挿れたら、絵美に交代になっちゃうんだけど・・・

 ぼくは、奈々にキスした。舌を絡めてくる。「明彦、来てよ、ねえ、来て」と目をつぶって、奈々がぼくの舌をしゃぶりながら言った。ぼくは奈々だからかなり乱暴に挿れてしまった。よし、これで彼女は絵美だ。

 絵美だから、ゆっくりとした。奥までゆっくりと・・・「アッちゃん、いいわ。感じちゃう」と目をつぶって絵美が言う。「ああ、絵美、愛してる、帰ってきたんだね、絵美」と言った。

 急に、絵美が目を見開いた。「エヘヘ、アキヒコ、や~い、や~い、騙されたわね?私は奈々よ。さっきまでのが、絵美。絵美が引っ掛けてやろうって、言ったのよ。カン違いして、面白いわ。『アッちゃん』って言えば、もうこれは絵美だと信じると、絵美が言ってるの。アキヒコ、カワイイ。『絵美、愛してる』だって。ねえ、奈々、愛してるっていうのも言ってよ」

「キミたちは、二人して・・・」
「だって、二人じゃない?同じ体に二人、入っているんだもん」

「そういうことを言うなら・・・」とぼくは奥まで突いてやった。突いたまま止めてやった。ナナがひくひくして、脚をギュッと絡めて締め付ける。「アキヒコ、それダメ!」と言うが、両手をバンザイさせて、脇の下を吸ってやった。「ダメ、それって、絶対にダメ!」とあそこを締め付けながらナナは言う。「ナナ、絵美、二人共、おしおきしてあげるからね」と引っくり返したり、体を180度回転したりして、いたぶってやる。

「そう言えば、絵美が『奈々はバックから突いて、お尻を強く叩いてほしいのよ』って言っていたね?その通りにしてあげよう」とナナをひっくり返して、お尻を突き出させて、赤くなるほど叩いてやった。

 ナナは両手を広げて、ピクピクしている。「それで、ナナ、絵美が『これは恥ずかしくて私の口から言えないわ。後で、交代したら、自分で明彦に説明してちょうだい』って言っていたね?どうして欲しいの?え、ナナ?」と盛大にナナのお尻をひっぱたく。

「いわなきゃダメ?」
「ダメです。言いなさい」
「アキヒコ、どうぞ私のお尻の穴をなめて下さい」と真っ赤になってナナが言う。

「ナナの中の絵美、そういうのっていいのかな?キミはそうして欲しいの?」とナナに聞くと、「え、絵美が、それも経験したいよ、って言ってます、お願い、アキヒコ」とナナが潤んだ目をして答えた。ぼくは、ぼくのを抜いて「じゃあ、ナナ、自分でお尻を広げてご覧」と言った。ナナは両手でお尻を左右に広げた。「ナナ、丸見えだよ。お尻の穴がヒクヒクしているよ。じゃあ、遠慮なく」とぼくは舐めあげる。もうそれだけで、ナナは逝ってしまう。

 さんざん、ナナを虐めて、二人でハアハアいって、仰向けになった。「ナナ、こういうのって、インチキだよ」とナナに言うと、起き上がって抱きついてきた。「いいじゃない?絵美だと思って抱いてくれたのが私で、でも、絵美も感じていたんだから。え?お尻の穴が良かったですって?絵美、絵美、あなた変わっちゃったの?奈々の影響を受けてます、だって」

「それって、だんだん、融合してきたってこと?」
「そうみたいね。ねえ、アキヒコ、私にも『愛してる』って言ってよ。もう、私のことを間違いなく愛してるでしょう?」
「これは・・・絵美は気にしないのか、聞いてみて?」
「え~っとね、もう体も一緒だし、気にしません、逆に、奈々を愛してないっておかしいじゃない?と絵美は言ってるわ」
「やれやれ、確かにそうだ。奈々、愛してる」とぼくは言って奈々をしばらく抱きしめていた。

「え?絵美?何?二十分たったって?それが何?え?もう一回アキヒコのを挿れてみてって?なんなの?アキヒコ、絵美がね、もう一回・・・あのね、絵美が言うのは、アキヒコに犯してもらって、って言うのよ」
「もうできないよ」
「あら?できるじゃない?もう元気よ」

「仕方ないなあ」とぼくはナナを後ろ向けにして、横から後ろに挿れてみる。ゆっくりと挿れて、奥まで入った。「あ!ああ!」とナナがもだえた。「う~ん、これもいいわね」とナナが上半身を回して、キスをせがんだ。「ウフフ、明彦、交代しちゃった。私、絵美よ」「え?」「なるほど。セックスして、抜いた後に少なくとも二十分のインターバルで交代現象がおこるんだ。え?奈々、騙したわねって?何言っているんですか。実験よ、実験」と絵美らしくもなく腰をふって締め付けてくる。

「確かに、奈々の取引先の部長が夢中になるわけよね。男だけでなく、自分が感じているんだから。でも、奈々、その部長と別れる時は私が表よ。ビシッと言ってやりますから。あなたみたいにズルズル引きずらないわよ、私。ハニー・トラップはもう私が許しませんからね!」と絵美が言った。しかし、ナナのハニー・トラップの特技が役に立つ時があるのかもしれないな、とぼくは思った。おっと、何をぼくは考えているんだ?

「しかし、こうなったのは、奈々の責任とは言えないわね?」
「え?どういうこと?」

「明彦は、人間の人格、性格形成について何を知っている?」
「人格は、先天的な影響と後天的な影響で形成されるんじゃないか?その割合は諸説あるみたいだけど」

「漠然とした言い方ね。よくわかっていない心理学者の答えよ。じゃあ、先天的って何?」
「それはDNAとかRNAの影響じゃないの?」
「そのDNAとかRNAで何が形成されるのよ?」
「何が形成?」

「そう、DNAとかRNAで形成されるのは、人体の諸器官とボディーよね?その諸器官の中で人格にもっとも関わるものが脳の諸器官。大脳とか小脳とか脳幹などね。その中で、記憶を司るのがタツノオトシゴみたいな形の海馬と大脳皮質なの。じゃあ、後天的な影響って、なんでしょ?それは、外部環境とか知ったかぶった学者が漠然と言うけど、ズバリ、外部刺激でしょ?五感よね?」

「あ、なるほど。人体、諸器官、脳の諸器官、海馬、大脳皮質は、母体から受け継いだDNAとかRNAとかによって、性能が違う、スペックが異なってくる、ということか。それで、外部刺激、五感で感じた情報が脳に入って、記憶される。その記憶パターンが人格だ、ということか?」

「御名答です。だから、二人の人間が同じ物を見ても、目の悪い人の視覚情報は目のいい人のそれよりも少ない、というハンデがある。これが先天的なもの、五感の性能。五感というのは瞬時記憶だから、すぐ消えてしまう。その記憶データを海馬に送る。海馬は短期記憶を担当している。コンピューターで言えばRAMみたいなもの。だから、すぐ消えてしまう。しかし、膨大な五感からの外部刺激データを処理している。保存期間は一ヶ月とか言われている。Papez回路とか、扁桃体を通るYakovlev回路なんてあるけど、難しいから、海馬の中で短期記憶がグルグルしているうちに、どういう仕組なのか、それらで記憶すべきもの、という判断がくだされて、それが長期記憶を担当する大脳皮質に送られて、脳細胞とシナプスが組み合わされて、新たな記憶となる。と言っても、その記憶は行動パターン付き、サブルーチンのプログラム付のデータなのよ。つまり、海馬の性能、その記憶データの選り分けの癖次第で長期記憶の内容が決められる、ということ。これが先天的、後天的なんて言うあやふやな說明の意味」

「うん、なんとなく、わかった」
「だから、この奈々の体に入った私の人格付記憶データは私の五感と海馬と大脳皮質に由来していたけど、私が奈々に入った後は、奈々の五感と海馬と大脳皮質に依存している、ということ。つまり、私の元の体よりも、奈々の体は、性的な五感の刺激データが豊富で、奈々の海馬は、より性的な情報を選り分けて大脳皮質に送り込んでいるようなの。だから、奈々がこうなったのは、奈々の責任とは言えない、と言えるんじゃないかな?・・・え?奈々、何?私は生まれつき淫乱なの?違うわよ。奈々の五感、海馬、大脳皮質の特性、性能がそういう方向に・・・まあ、淫乱になる運命にあった、と言えるかもね。だから、『アキヒコ、私のお尻の穴をなめて下さい』という発想が生まれるのよ。でも、あれ、良かったわ。私もゾクゾクしちゃったの。元の私の体だったら、違った刺激なんだろうけど。お尻を叩かれるのも悪くないわね。痛覚の刺激情報の受け取り方が、私の海馬と奈々の海馬では違うのよね」

「やれやれ、ぼくの絵美が変わってきちゃってる」
「仕方ないわよ、体が違えば、記憶の受け取り方、整理整頓の仕方も違うんだから。だんだん、奈々に影響されてきちゃってるってこと。でも、奈々も私の記憶域を参照しているから、私に影響されているのよ。お互い様なのよ」

「・・・つまり、これからキミたちとセックスする時は、お尻を叩いたり、お尻の穴を舐めたりする技も実行するんだね?やれやれ」
「あら?明彦、奈々がまだ言っていないもっと変態的な行為もあるのよ。私の口からは恥ずかしくて言えない。こんど奈々が表に出てきたら、彼女があなたにお願いすると思うわ。明彦に見せて上げなさいよ。あなたのマンションの鍵付きの引き出しに何が入っているのか?・・・え?恥ずかしいから止めてですって?あなたが見せなかったら、私が見せちゃうからね。これからは、部長さんじゃなくて、明彦に使ってもらうんだから」
「絵美、そんなにナナを虐めちゃダメだよ」
「大丈夫よ。もう、私と奈々の間には秘密なんてないんだから。全部正直に明彦に話しちゃうわよ」
「やれやれ・・・」

 それから、彼女たちが何度交代したのか?よくわからない。ホテルをチェックアウトして、ナナのマンションに行って、月曜日の朝まで彼女たちは交代し続けた。ぼくは死にそうになった。メグミの怒った顔が脳裏に浮かんだ。

1986年10月13日(月)、第ニユニバース


 メグミはプンプンしていた。昨日は、明彦と絵美と二人、じゃなくて、奈々も入れて三人でイチャイチャしてなさい、と彼らのホテルに電話した。ホテルをチェックアウトした後、明彦は奈々のマンションに泊まったそうだ。

 まったく、どうせ死んだ絵美が記憶を転移するなら、私に転移してくれてもいいじゃない?と思った。あれ?私の中に絵美がいる?そりゃ、喧嘩になるわね、奈々と絵美ほど仲良く融合できないわよね?と思い返した。

 今日は、彼らは普通に出勤しているようだ。私は有給をとって、いつ会社を辞めてもいいようにと会社をでっち上げる準備をしている。私ばかり働いてますね。まったく。手っ取り早く、幽霊会社を買収した。登記変更をした。銀行口座はその会社の物を引き継いだ。

 帰宅すると、アメリカから国際電話がかかってきた。「メグミ、ビルだ。こういう場合、久しぶりなんて言えないな。どう言えばいいんだ?この体のビルは三十一才だぜ?信じられないな」とビル・ゲイツが言う。

「ビル、私だって、二十八才ですからね。若くてピチピチよ」
「そうなんだよなあ。おまけにぼくは独身だよ」

「あら?」
「だって、メリンダがマイクロソフトに入社するのは来年なんだぜ。彼女と結婚するのは1994年だよ。それまで、独身。どうしようかなあ?」
「ふ~ん、だったら、私と付き合えば?」
「おいおい、ぼくとメリンダは結婚して、子供を三人つくるんだよ」
「いいじゃない?それまで、私と遊んでいれば。この記憶転移の秘密を知っている同士で」

「メグミ、そういうことを電話で言っては・・・」
「ビル、今は1986年、こういう電話回線の通信傍受なんて、さすがにファイブアイズでもまだやってませんよ」
「ああ、なるほどね。この体は知っているけど、第一のぼくの記憶域はまだこの世界になじんでいないんだよ」

「ビル、本題に入るけど、私は会社を買収して、その会社の口座を引き継いだの。ドル口座も開設したわ。口座番号を送りたいけど、メールなんてないし、あなた、FAXもってるの?」
「そんなもの、日本じゃあ普及しているかもしれないが、アメリカの、それもワシントン州にそんなものがあると思うのかい?」

「面倒くさいわね。じゃあ、メモできる?」
「ちょっと待っててね。オッケー、メモ、用意した」
「ええっとね、三井銀行の・・・、あれ?SWIFTコードがないわ?」
「あのね、メグミ、SWIFTコードなんて、80年代のアメリカの銀行に言っても、それなんのことですか?と言われるよ。口座名義人、銀行名、支店名、住所と電話番号、キミの連絡先、それだけでいいよ。それで、今日手続きしても、国際銀行間送金はこの時代、二週間かかるからな。三百万ドルでいいんだね?まったく、第一のぼくは自分のふところが傷まないと思って、勝手に言っているけど、まだぼくはビリオネアじゃないんだからね」

「なに言ってるの。80年代のアメリカの株式市場の動向を明彦が記憶転移したら、教えてあげるから、それで三百万ドルなんてすぐ取り返せるわよ。あなたは、第一でも第二でも質素倹約、日本語で『ケチ』なんだから」

「うるさいな。『ケチ』ってどういう意味だい?まあ、いいや、そうそう、絵美が転移した奈々さんって女性はどんな人なんだい?」
「そうねえ、かなりグラマラスで、蠱惑的だわ。365日発情しているみたい。絵美が苦労しているわ」

「ほぉ、会いたいな」
「ビル、冗談はよしてよ。将来のビル・ゲイツのことを知ったら、奈々は早速あなたを誘惑するわ。また、絵美が引き止めないといけないわよ。でも、絵美もだんだん影響されて淫乱になってるけどね。そっちに行ったら会うことになるわね。頭がいたいわよ」

「ふ~ん、楽しみだ。いつ、こっちに来るの?」
「あなたからの資金が入金されたら、すぐに。会社を辞めたり、ビザを取ったりしないといけないから、数週間後かしらね」
「ああ、そうだ、ビザ取得用のぼくの紹介状を送るよ。この時代、ビザを取るのは面倒くさいんだよ」
「原始時代よね、この時代は」

「さて、そのくらい?」
「そのくらいかしらね?ねえ、ビル、メリンダと会う前に、私とどう?明彦は絵美・奈々にとられちゃったし・・・」
「遠慮しておきます。第一のキミの若い頃なら、かなりのもんだろうけれど、ぼくはメリンダを愛してますから」
「ふん、どいつもこいつも。わかりました。じゃあ、近いうちに」
「楽しみにしているよ、メグミ」

 やれやれ。将来の世界の大富豪に振られちゃったわ。明彦、取り返そうかしら?

1986年10月27日(月)、第ニユニバース


 パスポートの申請に有楽町の東京交通会館に奈々(絵美)と行った。明彦は会社がパスポートを取得させているので持っているのだ。去年もニューヨークに行っている。予め一般旅券発給申請書は入手、記入しておいた。もちろん、有効期限は五年だ。十年有効旅券が導入されるのは1995年からである。

 未来(2015年)も今も必要書類は同じ、戸籍謄本/抄本原本一通、住民票の写し一通、写真一葉、本人確認書類で健康保険証/運転免許証だ。東京交通会館のニ階に旅券発給窓口の東京都旅券課有楽町分室がある。

 二十一世紀のパスポート、パスポートサイズを想像しないで欲しい。昭和の時代のパスポートは、平成以降のパスポートよりも二周り大きかった。もちろん、男性のシャツの胸ポケットなどに収まりきらない。

 メグミは日曜日に奈々のマンションに電話をかけた。翌日の待ち合わせ場所の確認だ。「もしもし、神宮寺さんのお宅でしょうか?私、加藤と申しますが」と話す。「もしもし、メグミ?神宮寺です、奈々です」と奈々の声が答える。「ちょっと、奈々じゃないでしょ?絵美でしょ?」と言うと「なんでわかったの?」と絵美が聞く。「奈々は『メグミ』とか言わない。『恵美さん』と言うもの」

「メグミはどっちだかわかるのね?」
「女の勘です」
「明彦はわからないのよ。ええっと、今、奇数回だっけ?偶数回だっけ?と回数で判断するの。間抜けよ」
「絵美、その奇数回とか偶数回ってなに?」
「エッチの回数。奇数回で私が出るでしょ?偶数回は奈々の番なの」
「・・・」
「もしもし?」
「ハイハイ、わかりました。それで、あなたの間抜けさんは?」
「今日は身辺整理だって言って、飛び回っているみたいよ」
「そうね、会社辞めるからね。で、必要書類は揃えた?」
「ああ、奈々がみんなやってくれました。私は事務仕事に疎いから」
「そうよねえ、絵美は昔からそういうところがあるからねえ」

 有楽町の京橋口で待っていると、十時五十五分に奈々が改札口に現れた。服装で奈々だとわかる。前髪がカールしたロングヘア。体のラインを強調した白のミニワンピース。月曜日の朝から奈々はディスコに行く気でいるらしい。行くのは東京交通会館のパスポートセンターなんだよ?とメグミは思った。

「オハヨウ」と奈々が改札口から出てメグミに駆け寄った。
「オハヨウ、奈々」
「あれ?なんで奈々だとわかったの?」
「あなたがディスコに行く気だからよ。パスポートセンターに行くのにね。誰を誘惑するおつもりでしょうか?まさか、下着はヒョウ柄じゃないでしょうね?」
「メグミ、なんでわかるの?」と目を真ん丸にして奈々が驚く。メグミも当てずっぽうが当たったので呆れた。
「ええ?本当にヒョウ柄?わかりやすい人だこと。こりゃあ、絵美が苦労するはずだわ」
「え?絵美、何?・・・メグミ、絵美がね、ヒョウ柄はよしなさい、食い込むから、って止めたのよ、と言っているわ。でも、私、これ好きなんだもん」
「・・・」


第8話 渡航、1986年10月12日(日) 第ニユニバース

第9話 第一ユニバース、2010年

第10話 洋子、1986年10月20日(月)、モンペリエ、フランス、第ニユニバース


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