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詩の集まりみたいなもの

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詩、詩みたいなものをまとめてみました。
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#自由詩

【詩】 山と空

【詩】 山と空

山が明るい
  満ちた悲しみ
     すくい上げ

空が青い
  生きた喜び
    投げ出して

雲がゆるりと動いてく
影が山を確かめる

山が息をのむ
  空の青さを
     受け止めて

空が飛んでいる
   山の明るさを
      楽しみたくて

雲がのろりと動いてく

遠き都を確かめる

目が影をとらえてく

山の緑に佇む

「大」の字は今日も一休み

【詩】 Bluesが鳴る

【詩】 Bluesが鳴る

スピーカーから聞こえる不思議な音

不純物に満ちた
混じりけのない音

やたらと心がざわつく音

音と自分の間を取り持つ空間は

僅かに揺れ動くかのように

黙っていた

吹きかけた吐息が
ガラスを曇らせる

呼吸をするその一息が
ブルース・マンの神話と共鳴する

「やぁ、お前さん何を聴いてんだい?」

愛を語っているようで
愛を求めていない

自らの正体を打ち明けるが
白昼堂々と寝返りを打つ

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【詩】 名

【詩】 名

血の通った名前にして下さい
血が通っているのであれば偽名でも構いません

繰り返される日常
呼び戻される感情

名前の形をした
日夜繰り返される 
形の無い無常

表情のない我が視線
とらえた形に囚われて
独り「型」に思考をはめる

名をつけられた全ての事柄
そして物質・事象たち

あの自然も
あの雨も
あの道も
あの建物も
あの自動車も
あの人も
不思議と世の中はイメージで出来ている

名は体を

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【詩】 真夜中

【詩】 真夜中

真夜中をくすぐる思考の端くれ達 

泡のように浮かんでは消えて
泡のように浮かんでは消えて…

音も無くはじけては
深まる夜に合わせて
その強度は増していく

泡沫の時を楽しむかのように

間断なく立ち上る気泡

音を立てては消えていき
再び浮き上がる

時間を経て発酵された

シードルの甘美な果実味のように

豊満で脆弱な魔力が

意識の隙間をくまなく波立てる

自我に対して無遠慮な思考に
抗う

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【詩】 Bluesのように

【詩】 Bluesのように

見知らぬ土地の雑踏

ほんやりと浮かぶ街灯達

見知らぬ花の香り

見知らぬ人が流れた髪に手をやり

季節を婉然とつま弾いた

サクラはとうに散ることを止めて

宵の時を静々と迎えていた

月は明るく 注意深く  

その時を迎える

急いでいたはずの光の出口から

聞こえてくる…

闇夜に囁く銀飾の不可思議な音色

存在を主張し得ない強さをはらみ

異国の情緒を体に組み込んでいく…

エキゾチッ

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【詩】 友

【詩】 友

窓を開けると 緑が凪いでいた
鳥達が鳴いていた

穏やかな日差しが”今”を明瞭化していた

体内の流れが変わっていた
季節が進んでいたのだ

扉を開けると薄い雲が空を可視化していた
広く水平に遠慮がちに

まだ樹の下には影は存在していなかった

川辺には葦牙が生えていた
過去と現在をつなぐようにして

魚が勢いよく水面を跳ねる
幼き釣り人は何を思うのか

流麗に糸を引く川の流れに沿って
釣り糸は浅

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【詩】 風

【詩】 風

いつからだろう

静けさを受け入れ始めたのは

街と人々が混ざり合い
乾いた空気が支配していたあの頃

何も為す術なく 

ひたすら歩いてきた

どれ程歩いてきたか

歳月に不自然なほど語りかけ

幾重の道を歩んできた

やがて清明の時を迎え
世界の鼓動は賑やかで隆起していた

様々な色彩 様々な模様
美に対して かくも浮世は誠実であることか

だのに
独りでいる静謐さこそが私の全て

どれだけの

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【詩】 Train Blues

【詩】 Train Blues

電車に軋んで
右に 左に
目覚めて 床に

鉛の殺伐さに
上に 下に
嬉々として 言葉に

砂時計の流れに
諸行 無常に
己として 砂に…

明日を待ち望んだ
  車窓に浮かんだ
    またたくブルース

線路に乾いて
西に 東に
揺らいで リアルに

氷の太陽のように
冷たく 優しく
恐々として ココロに

風月の流れに
時の自己満足に
己として 風のように…

昨日に唾棄した
  喧騒に魅入

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【詩】 旅にて…

【詩】 旅にて…

予定にない予定
予定するはずのない時計の動き
予定にない風景

心に押し寄せた衝動
つまらない邪推に沈んだ夕日を背に
歩かない足取りに飛びこんで行く

無機質な鉄の陽だまりの冷たさ
仰ぎ見る柔らかな夕日は
メランコリックに慕情を押し付ける

その波に身を任せ
入っては  戻り
戻っては  呼吸をし

暗闇の先に見えた風を浴びる

何もかもが懐かしく
何もかもが新しい

そこに見えた蒼さに
有機的な

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【詩】 日々の器

【詩】 日々の器

一杯の盃に注がれた清酒
一掬いの滋養
一粒の米粒
一滴の波紋…

日常に住む様々な恵み

見え隠れする表情のない佇まい

炎に操られ

水を巧みに吸い

空間に座り直し

技巧に集約された

普遍の真理

光の移ろいに姿形を変え

全ての慈しみを受け止め

気付かぬ隙間に
     気付く隙間を
          垣間見せる
 

何と堂々とした事か

 
拍子抜けた程に面様の無い

くたびれた

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【詩】 赤提灯

【詩】 赤提灯

夜の帳が下りる頃

己とも思えない影に乗り

情けにも似た夜風を浴びる

堰を切ったかのようにさんざめくノイズ

やりきれない自らを投影しているような

滑らかに軋む窓辺の景色

無粋で情緒のカケラもない欠けた満月

  
その曖昧さが

時に心をなぐさめる

 
明かりが灯る道すがら

自然と背中は押されてゆく

不思議だ

秋風の功名

導かれたかのように

目の前を煌々と照らす

ぬくもりを

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【詩】 侘び寂び

【詩】 侘び寂び

一杯の香りに

不思議と全てを思い出す

春の芽吹きの瞬き
夏の隆盛の時代
秋の枯草の香り
冬の銀白の出で立ち

茶葉の香りとうま味のアロマ達

その味が五味を退け

忘れていた爽やかさを醸す

身体に溶け込んでゆく

慇懃な苦みに眼を瞑り

天高く透き通る彼方に

思いを馳せる

春夏秋冬

太陽も
雲も
木々も
畑も
人々も

憩いの全てを
焼き付いた情景を

くまなく全てを闊歩させ

脳裏に

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【詩】 風景

【詩】 風景

車窓に見える風景  

家々や街は何事もなく

その地を動かずに存在する

そこに山々や川と巧みに打ち解けあう

田畑や街路樹たち

互いが互いに遠慮をして

よそよそしくならない色調

新緑はきっと交渉してくれてるのだろう

尊重してくれて

謙譲してくれて

風景は成り立っている

やがて水平線に見える一筋の明かり

全てを照らし支度を急ぐ

急き立てられるように始まる一日も

無機質に見える

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【詩的なもの】 一輪の花

【詩的なもの】 一輪の花

壁に飾られた一輪の花

静かで
小さくて
騒々しくて
大きくて

目をつむれば

さざめいて
ゆれていて
華やいで
香り立ち

見事なまでの孤独

その宇宙は

造形的で
創作的で
自然的で
神秘的で

どこか煽情的で

果てしなく雄弁だ

遠くを見るように
近くを見守る

壁に飾られた一輪の花

今日も
明るく
潤んで
ひっそりと
うつむく