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【詩】 赤提灯

夜の帳が下りる頃

己とも思えない影に乗り

情けにも似た夜風を浴びる


堰を切ったかのようにさんざめくノイズ

やりきれない自らを投影しているような

滑らかに軋む窓辺の景色

無粋で情緒のカケラもない欠けた満月

  
その曖昧さが

時に心をなぐさめる

 
明かりが灯る道すがら

自然と背中は押されてゆく

不思議だ

秋風の功名


導かれたかのように

目の前を煌々と照らす

ぬくもりを讃えた赤提灯


匂いや
賑わいや
艶やかさや
世の染みに省みる事もなく

黙然と盃を揺らす


日々の喧騒に深呼吸した

心の虚構と自尊心を肴に

埒もなく秋茄子をつつき

ツルリとした徳利をのぞき込む


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