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キャンセル・カルチャー

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明日は我が身のキャンセル・カルチャー。仕事をクビになり、財産を失い、友情は壊れ、親族からも追放される容赦ない制裁。その実例を紹介し、米国社会の病理に迫ります。
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記事一覧

キャンセルカルチャー:「レイシストと呼ばれたまま死ぬのか?」ギブソンズ・ベーカリーvs.オーバリン大学

キャンセルカルチャー:「レイシストと呼ばれたまま死ぬのか?」ギブソンズ・ベーカリーvs.オーバリン大学

オーバリン大学(Oberlin College)は、オハイオ州オーバリンにある全米屈指の名門リベラル・アーツ・カレッジである。1833年の創立以来、初めて女性(1833年)や黒人学生(1835年)に門戸を開いた歴史があり、生徒数およそ3,000人という少数精鋭教育で常に大学ランキングの上位に食い込む有名校だ。日本にある桜美林大学は、創立者の清水安三が出身校であるオーバリン大学の名をとったもので、現

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ジョーダン・ピーターソン:「私がトロント大学のテニュアを辞した理由」

ジョーダン・ピーターソン:「私がトロント大学のテニュアを辞した理由」

「Diversity, Inclusion, and Equity(多様性・包括性・公正性)」を謳い、教育機関、企業、メディア、政府機関など、あらゆる組織の監視塔に立っている思想権力が社会を破壊する、とトロント大学の心理学教授、ジョーダン・ピーターソンは警鐘を鳴らす。

日本でもいつの間にか浸透したこれらのフレーズ、一体何が問題なのか。そして世界的に有名な教授がトロント大学での終身雇用を辞した理由

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元リーバイス社CMO:「子供たちを、そして言論の自由を守るため、キャリアも百万ドルも捨てました」

元リーバイス社CMO:「子供たちを、そして言論の自由を守るため、キャリアも百万ドルも捨てました」

ジェニファー・セイ(Jennifer Sey)は、元プロ体操選手で、4児の母である。そしてつい最近まで、20年近くキャリアの梯子を登り続けたリーバイ・ストラウス社でグローバルブランド最高責任者を務め、次期CEOの座に一番近いところにいた。

しかしセイは、自身の口を塞ごうとする同社の圧力に抗い、信念を貫くために、そのポジションに別れを告げる。

退社の際、CEOのチップ・バーグは、秘密保持契約への

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キャンセルカルチャー:バンドを去った僕からアーティスト達へ

キャンセルカルチャー:バンドを去った僕からアーティスト達へ

現在、米国Spotifyを舞台に言論の自由を巡る戦いが起きている。

全米人気ナンバーワンのポッドキャスター、ジョー・ローガンの番組が「コロナに関する誤った情報を流している」として、ニール・ヤングを皮切りに著名人達が続々と抗議の声を上げ、ジェニ・ミッチェルなどの大物アーティストが楽曲の配信取り止めに踏み切っているのだ。

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[2] Joe Rogan Speaks(ジョー・ローガンはかく語りき): ニール・ヤング騒動

[2] Joe Rogan Speaks(ジョー・ローガンはかく語りき): ニール・ヤング騒動

押しも押されぬ全米人気ナンバーワンのポッドキャスター、ジョー・ローガン。そのユニークな人柄や自由な考え方、そして彼を取り巻く騒動の数々については、前回の記事で紹介した。

ニール・ヤングがSpotifyに「偽情報(ジョー・ローガンの番組)の配信を止めるか、自分の楽曲の配信を止めるか選べ」と迫り、同社がヤングの曲の配信を取りやめていた、いわばニール・ヤング騒動を受けて、先日、ローガン本人が10分間に

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[1] Joe Rogan Speaks(ジョー・ローガンはかく語りき):プロフィール

[1] Joe Rogan Speaks(ジョー・ローガンはかく語りき):プロフィール

ジョー・ローガン(Joe Rogan)は米国を代表するコメディアン、格闘技コメンテーター、TV司会者、ポッドキャスターである。

2009年からスタートさせた自身のポッドキャスト『ジョー・ローガン・エクスペリエンス(Joe Rogan Experience)』では司会・プロデューサーを務め、全米で最も稼ぐポッドキャスター、そして世界一ダウンロードされているポッドキャストとして不動の地位を獲得してい

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Andy Ngo vs. ANTIFA (アンディ・ノーとアンティファの戦い)

Andy Ngo vs. ANTIFA (アンディ・ノーとアンティファの戦い)

Who is Andy Ngo?

アンディ・ノー(Andy Ngo)は、独立系ジャーナリストであり写真家である。アメリカ国内で日に日に勢力を増すANTIFAや過激派極左集団の脅威にさらされながらも取材を続け、彼らに関する報道と専門知識で右に出るものはいないほどだ。

米国議会でも証言、国内外のテレビ、ラジオ、ポッドキャストに多数出演し、その生々しいレポートはWall Street Journal

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アビゲイル・シュライアー:「恐怖の時代における自由」

アビゲイル・シュライアー:「恐怖の時代における自由」

今、すぐにでも日本語で出版されるべき米国のベストセラーに、Abigail Shrier(アビゲイル・シュライアー)の「Irreversible Damage:The Transgender Craze Seducing Our Daughters(不可逆的な傷:我々の娘たちを惑わせるトランスジェンダーの熱狂)」がある。

「ある日突然、子供が性別違和を訴えた。性別を変更する手続きや治療を受けたいと

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キャンセルカルチャー:僕がバンドを去る理由

キャンセルカルチャー:僕がバンドを去る理由

発端は何気ないツイートだった。英国フォークロックバンド、Mumford & Sons(マムフォード・アンド・サンズ)のバンジョー奏者Winston Marshall(ウィンストン・マーシャル)は、運命の3月6日こう呟いた。

「新刊おめでとう、Andy Ngo。ようやくこの重要な一冊を読む時間が取れた。君は勇敢な男だ」

Andy Ngo(アンディ・ノー)は、長年に渡り極左集団ANTIFAを追い続

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キャンセルカルチャー:ホーリーランドのその先に

キャンセルカルチャー:ホーリーランドのその先に

キャンセルカルチャー:著名人をはじめ特定の対象の発言や行動を糾弾し、社会的制裁を加えて排除しようとする動きのこと。

東京オリンピック開会式の楽曲を担当する小山田圭吾氏が過去に雑誌上でいじめ加害を告白、その凄惨な内容に激怒した日本人が彼の辞任を求めている。一部でこれを「日本版キャンセルカルチャー」とする向きもあるが、同意しかねる。米国のキャンセルカルチャーは、その暴力性や社会的背景を鑑みても今回の

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