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ほっこり系

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あなたをほっこりさせたい文章です。
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#日常

話をさえぎる、けんちんうどん

話をさえぎる、けんちんうどん

この間の週末、福島へ遊びに行った。ぼくが新入社員の頃、はじめて配属となった場所。色々な思い出がふわりと浮かぶ中、あの人のことを思い出した。

元気でいるかな。まだお仕事続けているのかな。あのときのうどんのこと、ぼくは覚えてるよ。

***

新卒2年目。ぼくはお客様先を担当させてもらい、営業デビューを果たした。お客様先は法人も個人もいて、一緒にビジネスをするパートナー関係だ。

仕事柄とにかく問い

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新郎の手には旗を。新婦の手には鳴子を。

新郎の手には旗を。新婦の手には鳴子を。

目を疑う。参列者の半分が、はっぴを着ている。そう思えば、新郎が旗を振り出す。新婦が鳴子を持って踊っている。

ここって結婚式場だっけ。お祭り会場なのかな。

「普通の結婚式」の概念が吹き飛ぶのを感じながら、ぼくも鳴子を打ち鳴らしていた。

・・・・・・・・・・・・・・

結婚式に行くことになった。前任地で所属していた、よさこいチームのメンバー同士の式だ。新婦がチームの代表で、新郎が旗士。旗士とは、

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「あーあ、忘れものしてよかった!」

「あーあ、忘れものしてよかった!」

「ここのやつ、ふわっふわだし、甘さ控えめで最高なの!」

大好きな先輩2人に囲まれながら、パンケーキに切り込みを入れる。中にこもった蒸気と甘い匂いが溢れ、「今日が休日だ」ってことを再認識させてくれる。

幸せな休みの日。けれど、ちょっぴり寂しい。こうして一緒に過ごせるのが、あと少しだとわかってしまったから。

・・・・・・・・・・・

この間、よさこいサークルで忘れものを預かった。練習場所に、誰か

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誰かとの旅は海で、ひとり旅は湖

誰かとの旅は海で、ひとり旅は湖

ぼくはひとりで過ごす時間が好きだ。カフェで本をじっくり読んだり。ふらっとラーメンを食べに行ったり。日帰り温泉でのんびり湯に浸かったり。

けれど、宿泊を伴う「ひとり旅」をしたことがなかった。憧れていたけど、きっかけと少しの勇気が足りなくて。

この間、初めてひとり旅をした。ちょっとだけ寂しいけど、心が安らいで、たっぷり自分と向き合える時間になった。

そのとき抱いた感情は、まるで波が立たない湖面の

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ひとんちのおにぎり。いつぶりだろうね。

ひとんちのおにぎり。いつぶりだろうね。

膝に置いた手をキュッとしながら、声を出してみる。

「あの…ぼくも1つもらってもいいですか?」

ほっぺに米粒がつきそうなほど大きな塊。両手で受け取りながら、ぼくは考える。

こんなのって、いつぶりだっけ。

🚶‍♂️

「いち、にー、さん、しー!ごー、ろく、しち、はち!」

ある日曜日。澄み渡った空の下、ぼくはリズムをとりながら体を動かしていた。

今日はよさこいチームの外練習だ。公園で振りや

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4年も経てば、道は3つになってるわけで

4年も経てば、道は3つになってるわけで

「明日の朝ごはん、7時半集合でいい?」

「今日、ホテルのWi-Fiの調子悪くないか」

「明日のテストってさ、範囲ここだっけ」

4年前のグループLINEの会話を遡る。この3人のLINEが、また動き出すことになるなんてね。

🚶‍♂️

ぼくが新入社員の頃。

入社したばかりのぼくたちは、最初の1ヶ月は研修尽くしだった。都内の研修施設で、同期が200人集まってみっちり講義を受ける。

自宅から

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お客さんが自然にバイト化する定食屋

お客さんが自然にバイト化する定食屋

ぼくは定食屋が好きだ。中でも、個人で経営してて、孤独のグルメに出てきそうなところが好き。

使い古された中華鍋で、年季が入ったお皿に、変わらない味の料理を盛る店がいい。なんなら、店主はおじいちゃんかおばあちゃんがいい。

そこに行けば、長い年月が自分を受け止めてくれるような店がいい。

そんなぼくにとって、忘れられない定食屋がある。

🚶‍♂️

「よさくくんがさ、絶対好きな定食屋教えてあげる」

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黒猫とストーブとテニススクール

黒猫とストーブとテニススクール

自分にとって、大切な居場所を選ぶときの基準は何だろう。

最近、そんなことをよく考える。

というのも、ぼくはテニススクールの体験レッスンにいくつか足を運んだ。新天地でも体を動かしたくなってきたのだ。

スクールによって、特徴は様々。コートの状況や、練習メニューの内容、コーチや参加者の雰囲気。選ぶ基準がたくさんあって悩ましい。

今日訪れたテニススクールは、申し分なかった。大手スポーツジム施設内で

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4年間通い続けたカフェの店員さんにお別れを告げたら

4年間通い続けたカフェの店員さんにお別れを告げたら

「このコーヒー1つください。あと、言わなきゃいけないことがあって…。実は、転勤することになったんです。」

ちょっとためらいがちに、そう伝えていた。

ぼくが転勤をするまでの、ちょっぴり切ないお話。

☕️

ぼくには、行きつけのカフェがある。本屋の中に併設された、落ち着いた雰囲気のお店。カウンター席が充実していて1人でも入りやすい。

本を買って「読みたい!」という気持ちが冷めないうちに、そのカ

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いい子にしてたのでサンタさんは早く来ました

いい子にしてたのでサンタさんは早く来ました

自分はサンタさんをいつまで信じていたんだろう。わからないけど、信じていたときは「特別な何か」に守られたような幸せを感じていた気がする。

でも、自分がサンタさんになるなんて、想像もしていなかったな。

🚶‍♂️

先週の日曜日、ぼくはサンタになった。本当だよ、信じて。真っ赤な衣装に身を包み、大きな白い袋を持って、トナカイたちを引き連れていた。そして良い子がいる家庭を周り、プレゼントを届けていた。

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青春はいつも、外側からしか観測できない

青春はいつも、外側からしか観測できない

ゲラゲラ笑いながら、自転車を二人乗りして夕暮れを駆ける高校生。

スマホに入っている、大学時代のサークルの写真。

そんなキラキラした瞬間をみて「青春だなぁ」と思う。けれども、当時は「青春してる」なんて思わなかったりする。

青春はいつも、他人や未来から見て気づくことができる。青春はいつも、「外側から観測する」ことばかりだ。

けれども、「青春」という言葉は他人事としてではなく、自分のために使いた

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土に触れることはストーリーに触れるということ

土に触れることはストーリーに触れるということ

「ハサミムシだー!」

「なんの幼虫?これ!!」

「次はぼくが掘りたい!!!」

子どもたちのにぎやかな声に包まれながら、ぼくは畑に立っている。

前回の記事を読んでくださった方から「また畑にいるの?」という声が聞こえてくるけど、そうなんです。またいます。たまたまです。

わいわいと色のついたような声が、響き渡ってしまうようなほど澄み渡った空。それを眺めながら「子どもたちが土に触れるのって何で大

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玉ねぎが収穫できる頃、お互いどこにいるんだろうね

玉ねぎが収穫できる頃、お互いどこにいるんだろうね

雲ひとつない、秋らしい青空。ひやりと肌を震わす、吹き下ろされた風。まるでふとんのように優しい、ふかふかの土。

ぼくはまた、あの畑に立っていた。

通い続けたカレー屋の店長に誘ってもらい、二度目の農業のお手伝いに来た。この間は玉ねぎの収穫をしたが、今度は苗を植える作業だ。

実は、その店長のカレー屋は先日閉店してしまった。悲しすぎて、ワクチンの副作用なんか?くらい気分が上がらない日々が続いた。けれ

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ぼくにおつかいを頼んできた店員さんに、もう一度会いたい

ぼくにおつかいを頼んできた店員さんに、もう一度会いたい

みなさんは、もう一度会いたいと思う店員さんはいますか?

ぼくは、いる。

一緒にパンを食べるはずだった、専務のおばちゃん。

🚶‍♂️

ぼくが中学生のときの話。

ぼくはソフトテニス部だった。住んでいるのは田舎だったので、ラケットやテニスウェアを買うために、電車で隣町に行っていた。

その隣町に、小さなスポーツショップがあった。ビルの一角にある、広いとは言えないお店。でも、自分の欲しいものが

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