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いい子にしてたのでサンタさんは早く来ました


自分はサンタさんをいつまで信じていたんだろう。わからないけど、信じていたときは「特別な何か」に守られたような幸せを感じていた気がする。

でも、自分がサンタさんになるなんて、想像もしていなかったな。


🚶‍♂️


先週の日曜日、ぼくはサンタになった。本当だよ、信じて。真っ赤な衣装に身を包み、大きな白い袋を持って、トナカイたちを引き連れていた。そして良い子がいる家庭を周り、プレゼントを届けていた。

実は、これはボランティア活動の一環だ。地域の青年会の活動で、事前に親御さんから集めたプレゼントをサンタとして各家庭に配る。

冷静に考えれば「預かったモノを別日にお返しする」だけの活動だけど、こんなにも人を幸せにできる運搬があるのだろうか。やっぱりクリスマスはすごい。

ボランティア5名くらいで1グループを組み、各家庭を回る。ぼくはサンタ役だったので、責任重大だ。セリフが多い。

しかもご依頼いただいた親御さんからは「サンタさんから子どもに言って欲しいセリフ」も募集している。何を隠そう、これが絶妙に面白い。

「今年はトイレがうまくできるようになったね。来年からはお兄ちゃんパンツになれるといいね!」

「いつもお手伝いありがとう。来年ももっとお手伝いをしてくれたら嬉しいな!」

いや、親目線だいぶ入っとるやないかい。そしてサンタさんは子どものトイレ事情まで把握している。まあでも、サンタさんはなんでも知っているのだ。お安い御用なのだ。

そして、各家庭への突撃が始まった。

ご依頼いただいた家庭はドアを開けた瞬間に、幸せの匂いがする。あぁ、たくさんの愛を注ぎ込まれているんだなって。あたたかさ、まぶしさ、愛おしさを肌で感じる。

わざわざサンタボランティアの募集を見つけて、わが子のために申し込むくらいだもの。クリスマスという行事に魂を注ぐほどのファミリーパッションを持っているのは間違いない。

どっちかっていうと子どもより親御さんの方が「サンタさん来たよ!!」と跳ね上がっていることも多い。

当の子どもは0〜4歳が対象なので、本当に反応は様々。大体3種類に分けられる。

①カチコチ銅像リアクション
サンタさんという偶像の産物が突然目の前に現れたことに、脳の処理が追いついていない。ジッとこちらを見ているけど、言葉も発せずに立ち尽くす。サンタさん、メデューサじゃないのよ。プレゼントを受け取った後も何も言えないけど、お母さんに「こうゆうとき、なんて言うんだっけ!?」って促されて「………ありがとう」と小声で捻り出すのでキュン死する。

②漏れ出る喜びリアクション
待ち望んだサンタさんの登場にテンションがぶち上がる。ただどちらかというとサンタさんに対してより、プレゼントに歓喜している。「サトシくんがいい子にしてたから、サンタさん早くきちゃった〜」などと説明をしている最中にも「わかったからプレゼントをおくれ」という感情が瞳に強く宿っている。ちなみにこのリアクションが1番多いと思いきや、1番少ない。

③ビックリぎゃん泣きリアクション
喜びとかどうとかじゃなくて、得体の知れない存在が家に侵入してきたことに泣いちゃう。サンタさん的にもどう反応していいかわからず泣きたくなっちゃう。親御さんがめちゃ必死に「ほら!サンタさんだよ!!」とフォローしてくれるが、それもむなしく聖なる夜に叫び声が響き渡る。

ほんとね、個性豊かなの。1番かわいかったのは、プレゼント渡した時は①の反応だったのに、お別れして扉閉めたら中から「やったーーーーー!」って聞こえてきた子。みんなで「かわいいいいい」と叫びたかったけど、家を離れるまで喉の奥にしまっておいた。

このボランティアで、たくさんの幸せのおすそ分けをいただいた。子供はもちろん、親御さんがプレゼントに喜ぶわが子を見る表情に、心を溶かされる。

この活動は去年もしていて、去年行った家庭で1年越しに再会した子もいた。そのとき親御さんから「毎年ありがとうございます」と去年撮った写真をもらった。子供とサンタであるぼくと、家族みんなの1枚。

きっとこの写真を見せながら「去年サンタさん来たね〜。今年も来るかな〜?」と子どもに話していたかもしれない。そんな、幸せな家庭の1ピースになれたことが、この上なく嬉しい。

そんなことに思いを馳せていると、自分が子どもの頃はどうだったんだろう?と気になってしょうがない。ぼくはクリスマスにどんな表情をしていたんだろう。両親はどんな想いでプレゼントを用意してくれて、反応を楽しみにしていたんだろう。

なんだか泣きそうになってしまう。ぼくはもう記憶にないけれど、きっと両親は溢れんばかりの愛情をぼくに注いでくれていたんだろう。ぼくたちが周った家庭のように。

タイムマシンがあれば、22年前のクリスマスに行く。そうして、両親の表情をそっと陰から見たいな。いやどうせなら、サンタの格好をしてプレゼントを子どものぼくに渡しに行こう。

「特別な何か」を信じる子どもと、「その子ども」を誰よりも信じる2人が生み出す空間の、一部になってみたい。

誰かのクリスマスになるって、いいね。

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