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フランス語(等の)方へ

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主にフランス語・フランス語学に関連する記事を放り込んでいます。
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#英語

deuxièmeとsecond【フランス語の方へ:1】

小手先の記事もちょっと書いてみよう、という試みです。


フランス語には、「2つ目の」と訳しうる形容詞がふたつあります。deuxièmeとsecondです。前者は基数詞deuxに序数詞化標識-ièmeをつけたものです。後者はラテン語secundusに由来します(なおsecundus自体は、sequi「付き従う(suivre)」という意のラテン語の動詞と、根のところでは繋がっているようです。Oxf

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【765】海のキュウリ?

【765】海のキュウリ?

キュウリを食べたことがない方はあまり多くないと思います。これからの季節は私も冷菜にしてよく食べます。叩いて切って、にんにく、塩、醤油、ごま油、黒酢、あと砂糖あたりを加えて拍黄瓜にします。戻した湯葉を加えても美味しいですね。

栄養価の面でキュウリはあまり良好でないとも言われていますが、とまれ食感や(含む水分の多さに由来する)清涼感によって食卓の一角を占めている野菜です。

もちろんヨーロッパでもキ

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【551】これくらい読めなきゃアウト? Finleyのイヤミを読みとろう

【551】これくらい読めなきゃアウト? Finleyのイヤミを読みとろう

ほんの一節の英文から(ごく禁欲的にやっても)これくらいは読むことになる、ということの実演であり、日本語においても、とりわけ然るべき著者によって力を入れて書かれているものについては似たような態度をとることになる、ということです。

■【母語なら読めるというわけではない】解釈をいちいち書き出すということは稀ですが、極めて大げさな言い方をするなら、一瞬で以下に示すくらいにわかることで、やっと文章を読むた

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【550】avoid、evite、もう一歩

【550】avoid、evite、もう一歩

昔英語の授業でプレゼンをしていたとき、avoidなる語がとっさに出てこず、éviter(仏語でほぼavoidと同義)と言おうとして思いとどまり、éviterから英語を作るならevite/ivait/だろうと思って自信たっぷりに発音したところ、これが(やや古めかしい表現であるとはいえ)実際に正しく存在する単語だった、という経験があります。

尤も、その場にいたネイティヴの先生しかeviteという語を

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【541】固有名詞やアナグラムの「翻訳」は無理だが豊か

【541】固有名詞やアナグラムの「翻訳」は無理だが豊か

『ハリー・ポッター』シリーズ、読まれたことのある方も多いかと思います。私もメインの7巻は全て読みました。小学生の頃は日本語で、その後は度々英語で、更に後にはフランス語やドイツ語や、変わり種ではラテン語や古典ギリシャ語で色々読んだものです。

日本語から英語に行くときには言語的レヴェルを除けばさほど苦労しなかったのですが、仏語やイタリア語に飛ぶといろいろと問題が生じます。


日本語と英語だけで読

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【509】朝顔とあずま屋と蝶:語学学習のわずかな一部

【509】朝顔とあずま屋と蝶:語学学習のわずかな一部

語学学習は結局のところ一定の規模の文章を念入りに読みつづけることが重要になってきますし、それが全てなので、母語だろうが外国語だろうが変わらなくなってきます。世の大半の語学の参考書が必然的に入門レヴェルのものに留まる理由です。

とはいえ語学の勉強であるからこそ、つまり意識的な、突き放された対象に関する学びであるからこそ、積極的に行われる作業もないわけではありません(し、それはある意味で、母語以上の

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【351】leaderなる語を取り巻くイメージから出発する

【351】leaderなる語を取り巻くイメージから出発する

いわゆる「リーダーシップ」は特に経営や組織論などの分野において極めて重要になるのでしょう。私はそうした分野に関してほとんどレレヴァントな知見を持ちませんが、自らが接近できる範囲で、つまり(些か衒学的に、しかし論証を緩やかにとどめつつ)とりわけ西洋語をとっかかりにして、この言葉が持つ実態に接近することはできるでしょう。

言葉で遊ぶのは実証性を欠く、という言明が、私たちが言葉によらずして「実証的」な

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【338】プロかつアマでありたい? ふたつの語源を介して

【338】プロかつアマでありたい? ふたつの語源を介して

「好きなことを仕事にせよ」という或る種の命令と「好きなことは仕事にすべきではない」という忠告は、どちらも一定の正当性を持ちます。

この二つの主張はもちろん矛盾しあうところがありますが、この矛盾ないしは対立の間での決着というものはつけようがありませんし、つける必要がありません。

どちらの言い方にも、一定の普遍的な正当性がある、ということは確実でしょう。

ということは、双方がともに想定している「

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【273】フランスのペンギンに学ぶ、辞書や専門領域の内的循環を脱する方策

【273】フランスのペンギンに学ぶ、辞書や専門領域の内的循環を脱する方策

皆さんはペンギンがお好きですか。私は好きです。日がな一日眺めていても飽きません。

ペンギンは英語でpenguinですが、フランス語だとmanchot(カタカナに無理に直すなら「マンショ」)です。なんだかへんな音ですよね。

今回はここから。

※この記事は、フランス在住、西洋思想史専攻の大学院生が毎日書く、地味で堅実な、それゆえ波及効果の高い、あらゆる知的分野の実践に活かせる内容をまとめたものの

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【272】芋虫、猫、シリウス、酷暑:言語が描く星座を読む

【272】芋虫、猫、シリウス、酷暑:言語が描く星座を読む

太古の人類が星々の配置に動物や神々の姿を読み取ってきたように、原初的な「読む」作業というものは、意味のないところに意味を見出すことであり、世界に意味を与えることであり、書かれていないものを読むことでした。

そうした読みの痕跡を、タイトルに示した言葉の周辺において見てみたいと思います。


いくつかのはじめ方があるのですが、差し当たり多くの人が理解しやすい英語の例から入ってみましょう。

皆さん

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【265】seminarの語源から、多様かつ重層的に言葉を見ることへ

【265】seminarの語源から、多様かつ重層的に言葉を見ることへ

ごく簡潔ではありますが、語源を検討する能力を持つことの価値について、また広く言って自らの言語運用を反省することについて、見てみたいな、と思います。

※この記事は、フランス在住、西洋思想史専攻の大学院生が毎日書く、地味で堅実な、それゆえ波及効果の高い、あらゆる知的分野の実践に活かせる内容をまとめたもののうちのひとつです。流読されるも熟読されるも、お好きにご利用ください。

※記事の【まとめ】は一番

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【257】chanceの語源:サイコロ、ぼた餅、主体性

【257】chanceの語源:サイコロ、ぼた餅、主体性

大学受験の水準で言えば、chanceという語を見たら、単なる「好機」「幸運」ととらえるのではなく、中立的な意味での「偶然」や中立的な意味での「可能性」といった意味も持つよね、ということまで抑えておけば十分かもしれませんし、恐らく。

とはいえ、常々私が思っているのは、勉強であれいわゆる実学であれ芸事であれ何であれ、意味の広がりをできる限り広く把握して自分なりの理屈をつけておくことが物事を覚え・身に

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【254】目標への最適化+強制的な「遊び」で突き抜ける

【254】目標への最適化+強制的な「遊び」で突き抜ける

今日は語学の訓練の方向にかこつけて、物を学ぶこと全般に対して言えそうな方法論、ないしは態度というものについて少し述べてみたいなと思います。

※この記事は、フランス在住、西洋思想史専攻の大学院生が毎日書く、地味で堅実な、それゆえ波及効果の高い、あらゆる知的分野の実践に活かせる内容をまとめたもののうちのひとつです。流読されるも熟読されるも、お好きにご利用ください。

※記事の【まとめ】は一番下にあり

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【239】「火の取り分」を決めることで、燃やしてはならぬものが見えてくる

【239】「火の取り分」を決めることで、燃やしてはならぬものが見えてくる

簡単には消し止められない火事があると、私たちは消防車が水を撒くことに期待するものだ、と言えるかもしれません。

とはいえそれは、もちろん歴史上ごく最近にできた期待であって、かつては必ずしもそうではありませんでした。

そんなことをとっかかりにして。

※この記事は、フランス在住、西洋思想史専攻の大学院生が毎日書く、地味で堅実な、それゆえ波及効果の高い、あらゆる知的分野の実践に活かせる内容をまとめた

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