deuxièmeとsecond【フランス語の方へ:1】

小手先の記事もちょっと書いてみよう、という試みです。


フランス語には、「2つ目の」と訳しうる形容詞がふたつあります。deuxièmeとsecondです。前者は基数詞deuxに序数詞化標識-ièmeをつけたものです。後者はラテン語secundusに由来します(なおsecundus自体は、sequi「付き従う(suivre)」という意のラテン語の動詞と、根のところでは繋がっているようです。Oxford Latin Dictionary等を信じる限りにおいて)。

なお注意として、仏語secondのcの発音は/k/ではなく/g/です。初学者はしばしばミスを犯します。読んでいてなんとなく意味がわかっていてもきちんと辞書を引かなくてはならないということの一例です。


このふたつは極めて簡単に言えば、「同義語」かもしれませんが、使いかたには若干の差があります。

3つ目とそれ以降が予想されないときにはふつうsecondを使う、というのがごく一般的な規則です(だいたいどんな辞書を引いても出てきます)。どちらで言ってもだいたい通じますが、ときにはどちらかを使わねばならない場合もあるので、だいたいこの規則に従っておくのがよさそうです。

この点については次の例文が極めて饒舌です。

C’est une nouvelle aussi parce que tu n’es pas la première. Ce n'est pas seulement une fille, c'est une nouvelle fille qu'on leur annonce. Une seconde fille – on préfère ne pas dire « une deuxième » car on envisage pas une suite (on a tort). (Camille Laurens, Fille, Paris, Gallimard, 2020, p.17)

訳:新しいの、というのは、(これから生まれてくる)あなたが最初の娘ではなかったからでもある。ただ娘だ、というのではなくて、(助産師により)告げられているのは新たな娘である。2人目にして最後の(seconde)娘である。「2人目の(une deuxième)」と言いたがらないのは、また別の娘があとに続くとは思っていないからだ(とはいえこの予想は誤っているが)。


しかしこの区別が全てを言い当てるわけではありません。

deuxという基数詞から想定されない、ラテン語からの借用であるsecondは、熟語的表現においてもよく使われるので、例外は抑えておく必要があります。

たとえば、中等教育の学年の数え方に関して、second(e)の例外的と言いうる使用がみられます。

リセ(高校)の最終学年はterminale(classeが省略されるので必ず女性形)ですが、そこからは、学年を下るにつれて、première、secondeとなり、コレージュ(中学)は上からtroisième、quatrième、cinquième、sixièmeの4学年制です。

secondeは数の連なりにおいて最後ではないのですが、リセの第1学年は必ずsecondeと呼ばれます。deuxièmeということは絶対にありません。

なお私がこれを初めて知ったのは、『涼宮ハルヒの消失』のフランス語版DVDを見ていたときです。主人公であるキョン(高校生)は、「1年9組」を探すのですが、そのときにseconde neufと言うのですね。


逆の例外(?)として、学年一般が問題になるとき(というより、annéeとの関係において)、最後なのにdeuxièmeが用いられることはよくあります。

高等教育だと、修士課程(Master)は2年制ですが、2年目をseconde annéeということはまずありません。deuxième annéeです。これは私の会話の経験からそうなんだと思ってください。seconde annéeと言われるのを聞いたことがありません。理由はよくわかりませんが、留年して第2学年に再登録した人間がカゲでM3と呼ばれていることもあり、要するに3つ目以降がありうるということを前提した言い方なのかもしれません(憶測です)。

日本で修士をとって、似たような専門でフランスの大学に入る人はふつうは修士課程第2学年に入ります。Master 2ということでM2(エム・ドゥ)とよく言われますが、deuxième année (de Master)なのですね。

初等教育では、cycleが3-3-2の3つに分かれます。

そのうちの2つ目はcours préparatoire(CP), cours élémentaire première année(CE1)、cours première deuxième année(CE2)に分かれます。CE2は2つ目のcycleの「2つ目にして最後」ですが、secondeでなくdeuxièmeです。

最後のcycleはcours moyen première année(CM1)、cours moyen deuxième année(CM2)ですね。これについても、CM2はcycleの最後ですが、deuxièmeです。

いずれもsecond(e)と発音されるのを聞いたことがありません。

■【まとめ】
・基本は、「2つ目にして最後」ならsecond、そうでなければdeuxième。

・学年等に関しては例外がある。