NEWS ファインマン

 「おめでとうございます、ファインマンさん」って言いたくなるような NEWS をお送りします。
 『ご冗談でしょう、ファインマンさん』をはじめ楽しい著作も多い1965年のノーベル賞受賞者ファインマンさん(うん、やっぱり「さん」つけちゃうよね。)は、どうも今年が生誕100年にして没後30年にあたるらしい。つまりファインマンさん(1918年5月11日 - 1988年2月15日)は70歳を目前に亡くなったというわけですね。私はこのことを岩波書店のフェアで知ったのです。ということで、おめでとうございます。(ファインマンさんのノーベル賞はジュリアン・S・シュウィンガーと朝永振一郎との共同受賞。)

 このエッセイ集のシリーズは、大貫昌子氏や江沢洋氏の訳のお蔭もあるのだけど、大変読みやすいし、ファインマンさんの人柄や人生にも触れることができる、魅力的なエピソードが一杯です。特に1冊目は最初の著作という事もあって、余計に手に取りやすい内容になっているのでは、と思います。(ファインマンさん関連の著作は、他に講義などの記録や物理の教科書も出ています。しかしそれらは読むべき人達の範囲は限られるでしょう。それらよりずっとエッセイ集なら「理科」の世界が好きになる、そういう読み物として、読み進めやすいと思います。)
 そして読めば読むほど、ファインマンさんがその巨人の肩を、いろんな場面で、余裕をもって差し出してくれているのがよく伝わって、有難い気持ちになるのです。

 ◆岩波書店「ファインマンさんの本」
https://www.iwanami.co.jp/news/n14585.html

 「巨人の肩の上に立つ」という言葉は Google Scholar でもお馴染みですが、誠に大昔からの多くの研究の蓄積によって、現代の学問は成立しているし、最先端の人間ほどこれは意識の度合いは大きいでしょう。「それゆえ我々は昔より多くのものを、より遠くのものを見ることができるのだ。」と常に水面下の氷山の大きさを意識するような、気持ちが引き締まる思いになります。

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 とにかくも、こういうファイマンさんなど、巨人の肩を持っている人物が書いた本などは(特に門外漢にも興味をもってもらえるように書かれた本なんて最高なんだよね。)物凄いですよね。肩をほいほい差し出しているような、その人柄にも触れることができるのです。だって巨人の肩を持っている人は全人口からすればやっぱり少ない。(私なんて自分の事で精一杯だ。沢山の巨人の肩に乗せてもらっている。しかしその度に、ああ、この人は巨人なんだな、巨人をまた見つけられて嬉しいな、という喜びもふつふつと湧いてくる。そして巨人のいる環境は、皆でやっぱり大事にしていかなきゃならない場所だと思う。そしたら巨人がまたその凄い肩先を貸してくれる。これでさらに嬉しくなってくる……。)貴重な、素晴らしい、体験は巨人の著作で得ることが可能なのです。

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 さて、私は普段から展覧会や映画の関連本・既刊本が賑わうのが結構好きで、ミーハーに素直に喜ぶ方です。

 どういうことかと言うと、このような時期にはそれまでの本に加えて、安価な「最新版」が手に入りやすくなるのです。(だから上記のような各出版社のフェアなんかにもついふらふらしてしまいます。)これがもうほんと有難いのでついつい散財してしまうのです。これはお得! と飛びついてしまうくらい値段の割に中身がつまっているのがあるので、いいのかなあと心配になるくらい。よくこういうのムックになってたりしますね。肩に乗せて下さった、著者や監修の専門家の先生方には大感謝しちゃいます。だって、専門家だから早くまとめあげられるんですもの。


 似たようなことでは、芥川賞・直木賞などの発表の頃も派手だけど、文芸関係だったら、その作者の昔の本も揃って本屋さんで並ぶのを見るのが嬉しくてたまらない。んもういくらでもフェアで騒いで結構だと思っています。
 これはノーベル賞で言うなら、カズオ・イシグロ氏の為に、にわかにハヤカワ文庫の前で張りついたのは記憶に新しい。(『日の名残り』等くらいなら映画にもなったから知っていたものの、不覚にも全作品となると手が回ってはいなかったのです……。悔しさを噛みしめながら、それでもわくわくして読んだのです。懺悔だ……。ああ本はもっといろいろ読みたいんだけどなあ。必要に迫られて読むのは優先するとしても、純粋に楽しむ分野までとなったらきりがないんですよね。)
 こんな感じで、ノーベル賞発表のシーズンに、ブルーバックス(講談社による2018年で創刊55周年の科学系新書の老舗です。)が目立つようになる本屋さんも、その後も評価をひそかに★一つ増やして、贔屓にするのであります。

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 それやこれやで、やっぱり本屋さんっていうのは、最新情報量の一覧性、これがが捨てがたい存在である、と思っています。
 ネットで、自分の好みのものばかり手に取りやすくするというのも心地よいのですが、私はまだその中での自分の成長度に不安を感じているのでしょう。情報が偏りそうなのです。そういう意味ではデジタルの良さもあるのだけど、本屋さんでの愉しみがまだまだ私の中では上なのです。(まあこれらは私の中でも、読むものの種類別にもよるし、一長一短があるので、やっぱり人によるのだろうとは思います。大掃除で大量の本に囲まれたら、上記の意見は途端に本の山と共に揺れ動くわよね……グラグラグラ。)

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 ところで2018年のノーベル賞はどうであったか。
 これは日本では本庶佑先生のニュースがそりゃ目立ったので、これはこれでわくわくしておめでたく眺めるワタシでした。おかえりなさい~。和服での授賞式、大変お似合いで、またとってもかっこよかったですね。川端康成以来だということですが、これはヨーロッパ内でスウェーデン国王陛下にお目にかかる、という事情もありますよね。(私は今は世界各国の正装、礼装の格は、昔よりはずっと理解しやすくなっているだろうから、こういう時に世界に向けて披露するのはとても良いことだと思います。)本庶先生の記念講演をはじめ、歴代の受賞者たちの若手への思いや、これまでの研究の成果も、また凄い肩先なのが改めて感じられました。

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 このように、巨人は大勢の人に貢献することができる力を持っているのです。
 だからこそ、巨人を育てられる環境を整えるのも、単にエリートといわれる人材だけを育てるという意味合いに終わらないであろう、と私は思っています。
 巨人との出会い、これが私が毎年ノーベル賞のニュースを眺めやる時に、そして本屋さんの書架を巡る時に、感動することなのです。

      *巨人の肩の上*
https://note.mu/yistudio/n/n0d6e05a2e36f

 とりあえず、『ご冗談でしょう、ファインマンさん』(岩波現代文庫で上下巻)で、巨人の一人、ファインマンさんの肩の上に乗せてもらうのも、いかがでしょうか。理科が何故、おもしろいのか、そして巨人がどんな人生を送り、どんな物の捉え方をしていたか、まるでファインマンさんにくすぐられているような、笑い(ばかりでもないのだけど)がこみあげてくることでしょう。NEWS のついでに、推薦しちゃいます。

 ◆参照◆
岩波書店
https://www.iwanami.co.jp
(2018年12月25日)
The official website of the Nobel Prize
https://www.nobelprize.org
(2018, December 25)

 ◆YI STUDIO の NEWS 2018年
・NEWS ノーベル賞発表 2018年 
本庶佑先生が盛り上げました
https://note.mu/yistudio/n/n18656dce0b33
・NEWS 西田幾多郎
 朝日新聞2018年6月27日夕刊より
 西田幾多郎の講義ノート見つかる
https://note.mu/yistudio/n/n50643f9c8504
・NEWS 西田幾多郎 それから
安藤忠雄設計の石川県西田幾多郎記念哲学館は
「西田幾多郎未公開ノート類研究資料化報告1」(2017)刊行
展示案内等
https://note.mu/yistudio/n/n65db3b49fe70
・ 名言 西田幾多郎 もあります
https://note.mu/yistudio/n/n1488a873251a
  ▲西田幾多郎ミニまとめです
https://note.mu/yistudio/n/n1488a873251a
・NEWS 祝「ゴジラ座」認定 東宝も大喜び!
https://note.mu/yistudio/n/ne53e249e9521
・NEWS 藤原道長が眺めたのは1000年前の月
https://note.mu/yistudio/n/n2ed2a436de91

 ◆読書メモもたまにやってます
▼読書メモならこちらもどうぞ 平野啓一郎
https://note.mu/yistudio/n/n1f78934f12ff
▼ウンベルト・エーコについてのミニまとめ
・「読書メモ ウンベルト・エーコ」
https://note.mu/yistudio/n/n993f107d69ea
・「読書メモ ウンベルト・エーコ」への御礼
https://note.mu/yistudio/n/n0b8860657423
・「ウンベルト・エーコの名言」
https://note.mu/yistudio/n/n2d95482000e4
▼ピーターラビットの写真ならこちらもどうぞ
・展覧会の思い出 2017年その1
https://note.mu/yistudio/n/nabcd07307fdf
▼名言集ならこちらもどうぞ
https://note.mu/yistudio/n/n49286d6b4f8f
https://note.mu/yistudio/m/mfb05ed9d1fe8

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https://note.mu/yistudio/n/n1aff60bacf89
・YI STUDIO とヴィクトリア朝の生活
 ドラマ『女王ヴィクトリア』あらすじ有り
https://note.mu/yistudio/m/mcf64f954477f
・自己紹介 
https://note.mu/yistudio/n/n3c1b60c0f19f


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