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好きな世界観

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心の琴線に響いたノートをまとめ。なんかすごく変なものが好きな私が超好きになる世界観。
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#小説

小説 ファッキン・ナイス・ワーク #5

小説 ファッキン・ナイス・ワーク #5

 古本屋界隈などでは、その作家の本をほしがるやつには気をつけろ、といわれるらしい。読者に妙なのが多いらしく、何かしら問題が起こりがちだという。盗むのなんかは当たり前だし、買ったのにカネを払わない、というようなよくわからないこともあるそうだ。
 作家の名を澁澤龍彦という。
 澁澤の本を探してきてくれ、と頼んできた老人からは特段変な雰囲気は感じなかった。そもそも客観的にいわくを話してきたのが彼なのだ。

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作業日誌 伸びゆくボウズヘッド

作業日誌 伸びゆくボウズヘッド

 坊さんの使う木魚にBOSEと落書きした、という冗談をこないだ思いついた。BOSEとはスピーカーのブランドのことだ。その木魚は重低音がよく鳴ることであろう。坊さんがBOSEを使ってラウドなポクポク音と読経。そんだけ。

 BOSE、いやボウズといえば私の頭もボウズだったが、もうだんだん伸びてきちゃってんね。角刈りの手前みたいなところまではきている。一ヶ月でこのくらいは伸びるらしい。秋にはいい感じの

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断片 想像力の世界 -ワナビ小説講座-

断片 想像力の世界 -ワナビ小説講座-

 小説は芸術に分類されるものだ。芸術、といって何も偉ぶったものではない。何かを表したものであればそれが芸術だ。表現といいかえてもいい。その芸術または表現には何が最も必要であるか、と考えてみれば、たぶん想像力がいちばん大切なものなのだろう。想像力は人間の能力のうちわりとポピュラーな、使用頻度の高いものである。金井はあんまり空気を読めないが、読もうとするならば想像力を使うことになる。対人の場において相

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〘お題de神話〙かつてない山だ

〘お題de神話〙かつてない山だ

 
 
 
「人は何故山に登るのか──そこに、山があ
るからだ」
「どうした、突然」
「どっかの登山家の言葉だっけ?」
「ふぅむ。イギリスのジョージ・マロリーだな。哲学的に捉えれば、『山は人生に似ているから、その山の頂上を目指して一生懸命登ればばいい』的なやつだったはず」
「まだ誰も成功してなかったエベレスト登頂を目指しての言葉とも言われてたよね」
「そう言えばさ。山の神様って女神様が多いよね。日

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【掌編】薔薇と5と永遠と

【掌編】薔薇と5と永遠と

僕は今日も一人、キャンバスに向かって絵筆を走らせている。町はずれのおんぼろなアトリエには、むんとした絵の具のにおいが立ちこめている。僕の目の前には薔薇が一輪挿しに入って置かれていて、僕はそれを描いているのだ。

薔薇を描くことは容易ではない。幾層にもなった花弁の複雑さはもとより、棘のある茎としなやかな花柄、5枚のがく。この奇跡的な均整を絵の具で描き出すのは骨の折れることだった。

それでも、僕は薔

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〘お題リレーde神話〙Blue Ever Garden

〘お題リレーde神話〙Blue Ever Garden

 
 
 
note神話部の創部2周年記念企画『お題リレー』参加作品です。
文字通り、前の方からトスされたバトンを使って創作するので、つなげたバトンがどんな風に変化して行くのかがキモです❢
つたないことこの上ありませんが、匍匐前進の体ご容赦のほど、なにとぞー!w(私は鈍足)



↓ 前走(矢口部長)の素晴らしい快走はコチラ ↓



受け取ったバトン
『庭』

⿴⿻⿸‪✯‬⿴⿻

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小説 『サミダレ町スケッチ』

小説 『サミダレ町スケッチ』

サミダレ町スケッチ

 1 ある若い住人

 頬のあたりに虫が這った。少なくともそんな気がした。払いのけようと右手をやり、片目を開けたらもう夜は明けていた。そのまま起きることにする。
 うっすらと光の差す路地裏で、周りの連中は汚れた毛布にくるまってまだ寝ていた。手や足や頭を踏みつけないようにして路地を抜ける。
 どんよりと曇った空が見えた。太陽の光は雲の向こうから届いていた。
 この日の仕事は

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〝何か〟が追ってきていた。それが何なのかは説明できないが私はその〝何か〟に追われ続けていた。こうしている今も…
追跡が始まってから85年、その〝何か〟はまるで諦めるそぶりもなく、ついにくたびれ果てた私はこの長年の追跡劇にピリオドを打つべく立ち止まり振り返った。
なんだ〝寿命〟か…

ダリア

ダリア

今どき、CDウォークマンを鞄に入れて通学している高校生なんて、日本全国でも僕くらいのものなんじゃないだろうか。

だけど、僕がいちばん好きなバンド、Da:Lia(ダリア)の曲は、こうしないと外で聴けないのだ。

Da:Liaは、僕が生まれる前の2001年にメジャーデビューし、僕が生まれた2004年に解散したロックバンドだ。活動時はドラマの主題歌やCMソングなどに抜擢され、ヒット曲を飛ばしていたらし

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あとがき ショモツイクサ(書物戦)

あとがき ショモツイクサ(書物戦)

 俺の座右の銘に「読んでもらうのではない、読んでいただくのだ」というのがあります。ある作家からの受け売りだけれども、重要な心構えのような気がするので、頭の中に銘を刻みました。

 この東九龍の長いお話を読んでいただき、ありがとうございますとお礼申し上げます。おもしろかったでしょうか。

 宝探し、見るなの禁忌、冥界下り、行きて帰りし物語、そのくらいかな、いろいろと神話や物語構造のモチーフを、雑に、

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『東九龍絶景』 目次・プロローグ

『東九龍絶景』 目次・プロローグ

題 東九龍絶景(トンクーロンぜっけい)

目次

プロローグ
1  ソラの512号室
2  イズキのアレキサンドリア
3  カザミのギャラクシー・マカオ
4  ミルイザのダマスカス
5  アラムのカオサンロード
6  キミカのデルフォイ
7  フライのサグラダ・ファミリア
8  タカマのミロゴイ
9  コシャリのキャニオン・ドゥ・シェ
10 ドクター・ビイのコーニー・ハッチ
11 

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小説(ラノベ風)『イーストエンド・ガーディアン』

小説(ラノベ風)『イーストエンド・ガーディアン』

目次(BGM)

1  魔法を信じ続けるかい?/中村一義
2  麒麟児の世界/未映子
3  I Think I Can/the Pillows
4  メギツネ/BABYMETAL
5  常勝街道/雅
6  僕たちの距離感/夢中夢
7  Gypsy Girl/Sword of the Far East
8  魔法少女幸福論/トーマ
9  その時なにが起こったの?/キノコホテル
10 豚の皿/Gra

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【ザリガニを蒸す】

【ザリガニを蒸す】

ザリガニを蒸す。男はもうずっと何年もそうやって生計を立ててきている。何もこの男に始まったことではなくもう何世代もザリガニを真っ赤に蒸すことで家族を支えてきているのである。

今日もザルいっぱいにザリガニを掬い終え、一度流水の中で揉み込んだ後に大きめの蒸籠の中で蒸し始めた。この蒸籠の香りも大事な要素で真剣に選び抜いた物を使用することによって泥臭いイメージのあるザリガニがまるで清流の鮎のような香気がし

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戦闘、開始。

戦闘、開始。

 ヘッダーだと写真の上下を削られますね。もとの写真はこちら。

 なんのことはない、あたくしの作業机です。センターと呼んでみたり、コクピットと呼んでみたり。あるいは部屋全体をベースキャンプやらアジトなどとも呼ぶような厨二感。ここで日々やってたんですねー。

 さてタイトルの文句は太宰からの借用なのですが、いま新年も三が日を迎えて、ぼちぼちと日常へ入っていくところであって、日常は戦、じゃあ戦闘開始じ

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