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あとがき ショモツイクサ(書物戦)

 俺の座右の銘に「読んでもらうのではない、読んでいただくのだ」というのがあります。ある作家からの受け売りだけれども、重要な心構えのような気がするので、頭の中に銘を刻みました。

 この東九龍の長いお話を読んでいただき、ありがとうございますとお礼申し上げます。おもしろかったでしょうか。

 宝探し、見るなの禁忌、冥界下り、行きて帰りし物語、そのくらいかな、いろいろと神話や物語構造のモチーフを、雑に、曲解もしつつ、無邪気に突っ込んで書きましたねぇ。だからかなりベタなお話なんだと思う。執筆当時はジョゼフ・キャンベルの『神話の力』に影響されてました。というよりそれを読んだらこれが書けた。キャンベルすごい。

 何が書きたかったのか、というと、東九龍という架空の町を作りたかった、というのがまずあったと思いますね。元ネタの九龍城への憧れはあったんですが、本物はとっくに取り壊されてるし、行けないがゆえにも焦がれる感じで。あとは廃墟。廃墟が好きという趣味も入りました。きったねえ、あっぶねえ、おっかねえところで、少年に冒険をさせてみようと。骨格はだいたいそのように。

 で、やっぱり邪書のイメージがこの小説では重大なのだろう、と思う。書物というものの美化、神格化、または書き手の俺の偏愛がたっぷり注がれて、うん。ああいう形で扱ってみたんですね。ものすごいものなんだぜ、と終始いいつのって。たいていのことは書物に書いてあると思うような信仰を持ってます。書物が俺にとっての宗教なんだろうな。だからこれ宗教戦争の話でもあるよね。または聖杯探求譚。

 三年ほど前に完成した本作、あちこちで落選したので、もうええわとばかりに今回アップしました。修正は最低限です。読みづらかったらすみません。

 ではでは、誠に、ありがとうございました。

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