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#小説

第14話「世の中はコインが決めている」

第14話「世の中はコインが決めている」

 生ビールから始まって、料理が懐石料理のように次から次へと運ばれる。刺身の盛り合わせに、小鉢に入った菜の花のおひたし。ブリの煮付けは最高に美味しかった。絵馬さんとの会話がこんなにも楽しいなんて、僕自身が驚いていた。

 本来、人間嫌いなところがあり、特定の人としか付き合いがない。ましてや、女性と二人っきりで飲みに行っても、僕なんかじゃ退屈だろうと避けていたところもあった。

 だけど、不思議と絵馬

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壊れる

壊れる

年が明けて戻る予定の5日になっても彼女からの連絡はなかった。
初めは少し予定が変わったんだろうとしか思っていなかった。
それが2日間も連絡が来ないとなるとおかしいと思うようになる。
電話しても呼び出し音が鳴るだけで通話にならない。
私は6日から仕事で、週末の11日土曜になってやっと彼女の部屋の様子を見に行く事が出来た。

部屋の前に着いて直ぐに何かおかしいと感じた。
違和感の理由は表札がなかった

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1996 ひなかご 11(最終)

1996 ひなかご 11(最終)

「僕は一生、君に会うことはないと思っていた。君の婚約者に会うまでは」

「クロードが?」

 クロードがなぜジォンの居場所を知っているのだろう。カミーユはふと息を詰めた。クロードは弁護士だ。戦後の裁判の記録を見て、クロードはジォンを捜しだしたのだろう。カミーユは肩をふるわせた。何のために。

「君にとって僕は特別な存在であるようだと、彼は言っていた。彼が僕のアパルトマンへ電話をかけてきたとき、ちょ

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お盆の再会1

お盆の再会1

この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などには、いっさい関係ありません。

性的、大人な表現ありです。お気をつけて下さい。

墓参り

私は知里(ちさと)29歳OL。

お盆が近づいてきたある夜の事、テンから電話があった。

「おう、知里か。元気か?そろそろまたお盆だなぁ。一緒に墓参りに行かねぇか?」

「テン、久しぶりだね。ありがとう。私も連絡しようと思っていたの。是非そうしよう。」

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長編連載小説 Huggers(53)

長編連載小説 Huggers(53)

小倉は追いつめられてゆく。小倉  8(つづき)

 受信箱に見慣れない送信者からのメールが入っているのに気づいたのは、葬儀の次の日だった。送信者名にはHayate とだけ書かれていた。タイトルはMail from Hugger’s Network USAとなっている。
 開いてみると、ずらずらと書かれた英文の下に、日本語訳が書いてあった。いくらか不自然なのはおそらく、日本語が彼の母語ではないことを

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短編小説「溜息」

短編小説「溜息」

 ブーツで昼下がりの海岸を歩くと、霜の上を歩く様な感触が楽しめる。その感触を求めて私は家から遠い海岸まで歩ってきた。嫌なことを忘れたいときは、私はここに来る様にしている。周りには他にも散歩をする人が数名見えるだけであり、時間もちょうど良い様に思えた。私はしゃがみ込み、誰にも気づかれないようにため息を一つ溢した。ため息は海岸の細やかな砂の間をさらりと滑り落ちた。私の鬱憤から挽かれたため息は、海岸の砂

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演盲

演盲

「エモいね」
「ね」
 昼下がりの喫茶店の中、二人の男女が向かい合っている。彼らの視線の先にはスマホ。画面いっぱいに広がる海の写真を見て、同じ感想を口にしていた。学生時代、共通の友人と一緒に行った南国のビーチ。夕焼け、ビーチパラソル、そして水着。いかにもと言いたくなるような被写体の中で、笑顔の若者たちがセンターを飾っている。
「このあとみんなでバイキング行ったよなあ」
 ハイウエストのパンツを履い

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僕の夢(短編小説)

僕の夢(短編小説)

朝起きて食卓に向かえば姉ちゃんがぼうっと座っていた。
「ご飯なにがいい?」
「わ、びっくりした。来てたんだ。えーっと、あれがいい、ふわとろ卵のオムライス」
「えー、あれ作るのすごく手間かかるんだけど……」
「そこをなんとか、お願いします弟様」
「はあ、まあ姉ちゃんがそこまで言うなら仕方ないなあ」
「さっすが、愛してるぜ弟よ」
「はいはい僕も大好きだよ姉ちゃん」
「え、弟に初めて大好きとか言われた怖

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あとがき「No.I」

あとがき「No.I」

どうもAKAです。
No.Iを読んで下さりありがとうございますm(*_ _)m

あとがきを書くのが初めてでなにを書いたらいいか悩みましたが、短編ということもありこの話を思いついたきっかけなどを書いていこうかなって思いましたので、書きます。
この話を思いついたきっかけは、twitterのタイムラインで流れてきた絵からですね。絵と題名を見た時に、こんな感じの設定のストーリーがあればいいなと思って書き

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フータの炎

フータの炎

 コオロギや鈴虫のリーンリンという声がよく聞こえる日だった。夕ごはんのあと、大介(だいすけ)が部屋で夏休みの宿題をしていると、ドアをノックする音が聞こえた。

「ご先祖様をお迎えしよう」

 ドアの向こうでおばあちゃんが手まねきしている。

 庭に出ると、お母さんが積みあげたおがらの下の丸めた新聞紙に火をつけるところだった。

「こうやって迎え火をたくのはね、ご先祖様、お帰りになるところはこちらで

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【短編小説】 出来るだけ早く、そして、遅く。

【短編小説】 出来るだけ早く、そして、遅く。

めんどくさい・・

親父に呼ばれて、迎え火とやらに付き合っている。

「ご先祖様を迎えるんだ。」

長い「おがら」をバキバキへし折って、鉢の上に乗っている新聞の上に乗せて、マッチで新聞に火を点ける。

定年後は仕事にもついていないのに、紺のスーツを普段着のように着ている、絵にかいたような真面目人間。

程よく吹く風が新聞をぶおっと燃え上がらせて、あっという間に「おがら」にも火が点いた。

親父が熱

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インガ [scene ???]

インガ [scene ???]

———…ここに居たのか。

———ああ、少し外の空気を吸いたくてな。

———コーヒー、飲むかい?

———いや、いい。お前が淹れたのは苦すぎる。

———変わらないな。これなら、お気に召すんじゃないか?

———ん?…おおタバコか、よく持ってたな。この街じゃ、もう売られてないはずだが。

———よく知ってるね。

———目が覚めたとき、ネットで色々と確認したからな。…うまい。

———感謝してく

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小説「光の物語」第54話 〜出奔 2〜

小説「光の物語」第54話 〜出奔 2〜

「おい、驚くなよ」
マティアスはディアルの執務室に入るなりそう切り出した。
「何事だ?」
「ベーレンス伯爵だ。彼はどうやら妻子を見捨てることにしたらしい。領地の司教に婚姻無効を申し立てたそうだ」
「なんだって・・・?」
ディアルは呆気に取られた

マティアスの部下からの報告によると、年明け早々に王城から領地に戻ったベーレンス伯爵は婚姻無効のための調査を開始した。
そして、夫人と自身が遠い血縁関係で

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800文字日記/20220412tue/041テーマ「悪夢、悪寒、処方」006

800文字日記/20220412tue/041テーマ「悪夢、悪寒、処方」006

悪夢で目覚める。自分が産んだばかりの仔犬をムシャムシャと食べる母犬の夢だった。汗びっしょりで着替える。背筋に悪寒がはしる。風邪のぶり返しだ。腹に猫がのる。まだ6時だ。机の上のメモをみる。「人生は一度きり」。自分の筆跡だ。昨日、すごい発案だとはしり書きをしたのだろうが書いた記憶はない。体は砂袋のように重い。椅子に座ったままうごけず。机につっぷしたまま寝る。寒気で目覚める。

窓から初夏の陽気が注ぐが

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