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800文字日記/20220412tue/041テーマ「悪夢、悪寒、処方」006

悪夢で目覚める。自分が産んだばかりの仔犬をムシャムシャと食べる母犬の夢だった。汗びっしょりで着替える。背筋に悪寒がはしる。風邪のぶり返しだ。腹に猫がのる。まだ6時だ。机の上のメモをみる。「人生は一度きり」。自分の筆跡だ。昨日、すごい発案だとはしり書きをしたのだろうが書いた記憶はない。体は砂袋のように重い。椅子に座ったままうごけず。机につっぷしたまま寝る。寒気で目覚める。

窓から初夏の陽気が注ぐが身体は悪寒でふるえる。熱いシャワーをゆっくりと浴びる。寒気はいくらか治る。窓を開け放ち洗濯機をまわす。部屋を掃除する。猫が部屋を走りまわる。床は猫の抜け毛が多い。呼び鈴が鳴る。配達員は笑って額に汗をかき、ウォーターサーバーの替えの水が入った段ボール箱を計二つ玄関に置く。ドアが閉まる。「水もださねえのかよ」と踊り場から聞こえる。

部屋の壁に病院のカルテのコピーが鋲で留めてある。
ID:000000790XX 1977年03月20日44歳7ヶ月 ◉×▽□ 2021-11-05 09:53
母のみ来院。言伝、ラツーダいらない。睡眠導入剤の効き始めが強めの薬、例えばハルシオンとかが欲しい。
■ハルシオンが出せない理由
依存性があるベンゾジアゼビン系の中でも特に依存性が強い超短時間型は、現在の間接診療では出しにくい。その理由で非ベンゾであるデエビゴを処方します。
■副作用というのは存在しない。すべての薬は全作用だ。医師の都合で副作用と言っているだけだ。この◉×さんの意見は今後の診療の参考にします。|
三度、声にだしてよむ。壁からはがし破ってゴミ箱に捨てる。書棚からお薬手帳をだす。デパケンR錠とリーマス錠の詳細欄のところに、五年前まで書いてあった但し書き「認知症の症状がでたら服用をやめて医師または薬剤師に相談してください」が、現在の処方箋では削除されている。ゴミ箱に投げ捨てる。

捨て鉢のような怒りのような誰にも説明できない感情が腹の底から沸きあがる。ロードバイクを担いで外にでる。(798文字)


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