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エッセイ

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日常のこと、家族や友人のことなど色々書いています。コンテスト参加作品なども。
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アルバイトで失態を冒したあの日

「外国をこの目で見てみたい」

大学時代、休学をして海外を旅したくなった。理由や目的は特になかった。

強いて言えば、その国や街に暮らす人たちの存在に興味があった。国内を初めて一人旅した時、旅先で出会う人たちが何よりも印象に残っていた。

海外の旅でも、きっとそこに面白い出会いがあるに違いない。

そんな夢を叶えるため、僕はガソリンスタンドで2年ほどアルバイトをしていた。



「オーライ!オー

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祖母のルーツを辿った旅

祖母のルーツを辿った旅

20歳の夏、僕は地元東京の町田からバイクに乗って旅に出た。

学生時代の夏休み、最終目的地は四国の徳島だった。

行きは陸路で気ままに走り、帰りは徳島からフェリーに乗って東京の有明港まで一気に戻ってくる。バイクの旅だけでなく、船旅まで味わえる。

富士山の麓に広がる朝霧高原、長野県や岐阜県の山々を越え、滋賀の大津からついに大阪の箕面に着いた。当時、箕面は親戚が住んでいた。僕の生まれた場所でもある。

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マキネッタを使ってコーヒータイム

マキネッタを使ってコーヒータイム

もともとお酒は飲めない体質だが、コーヒーは毎日のように飲んでいる。

わが家にマキネッタという直火式エスプレッソマシンがある。

もともと妻の所有物で、一緒に住み始めた頃に初めてその存在を知った。

マキネッタは本場イタリアの家庭にはあって当たり前のような存在らしいが、僕が学生時代にイタリアを旅した時には全然気付かなかった。

その頃はもうコーヒーを飲んでいたが、コーヒーマシンなどに無頓着な僕にに

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成長を見守る

成長を見守る

今月初め、庭に小さな花壇を作った。

スコップで土を掘り、そこにレンガを埋め込んでいく。囲いができたらホームセンターで買ってきた土を盛り、2種類の種を撒いた。

それから3~4日後、芽が出始めた。

小学生の頃に戻ったような気分だった。

理科の授業だったか、植物観察記のようなものを書いたことを思い出した。自分で種を撒いて植物を育てるなどその時以来ではないだろうか。

芽が出たことに心が洗われ、花

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「竹藪やけた」の反対は?

「竹藪やけた」の反対は?

もう30年以上昔の話。僕が大阪に住んでいた頃の話だ。

当時僕は4歳か5歳くらいだろう。

今は家族や親戚と話す時以外は当たり前のように標準語で話をするが、この頃はいつでも大阪弁だった。



その日、僕は母に連れられて友人の家に遊びに行っていた。

その母の友人には息子が一人いて、僕と同い年くらいだった。

後々僕の母から聞いた話だが、4歳頃からその子はすでに新聞を読み始めていたという。親は教

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早朝から森で癒される

早朝から森で癒される

今朝はいつもより早く目覚めたので家の近くを散歩した。

休日は息子を連れて散歩することが多いが、今朝は一人で。

自宅から数分歩くと川が流れており、橋を渡ると森がある。

僕にとって近所でお気に入りの”癒しスポット”だ。

この橋を渡ると町田市から相模原市に変わる。つまり、東京都と神奈川県の県境でもある。

川の名前も「境川」と呼ばれているが、かつての武蔵国と相模国の国境であったことが由来とされて

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旅立ちの日に

旅立ちの日に

今月25日、双子の甥と姪が小学校を卒業した。

4月から2人が通う中学校は、町田市内にある僕の母校だ。

僕が中学を卒業したのがちょうど2000年3月。21年前の話である。僕の2人の兄も同じ中学校を卒業している。

21年という歳月にも驚くが、血の繋がった甥と姪が自分と同じ中学校に通うと思うと感慨深いものがある。



「おじちゃん、中学の卒業アルバム見せて!」

「わたしも見たい!」

先月、

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「12時間」と「自転車」で考える

「12時間」と「自転車」で考える

突然だが、ある大学の小論文試験で出題された過去問題を一問。

この試験の終了後、自由時間(12時間)と自転車を与えられたなら、どこを訪ねたいか。場所と理由を述べよ。  



上の問題、以前図書館でたまたま借りた本の中で紹介されていた。

1934年に放送作家としてデビューし、小説家、劇作家でもある井上ひさしの『にほん語観察ノート』という本だ。

じつはこの本を読む前、井上ひさしの戯曲『父と暮ら

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「はくちゃい(白菜)、おいちーよ!」

「はくちゃい(白菜)、おいちーよ!」

先日、ゆきこさんがnoteで紹介されていたレシピを作りました。

山盛りの白菜、豚肉とレモンの写真に惹かれました。

当初は、妻に作ってもらおうという甘い考えでいたのですが、

「ぜひニコタローさんが作ってあげてくださいね!」

と、ゆきこさんに言われたからには作るしかない!(笑)

ということで、「今晩はゆきこさんのレシピの白菜お鍋ね!」と妻に知らせ、キッチンで一人黙々と調理開始。

調理とはい

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子どもの視点や行動から学ぶ

子どもの視点や行動から学ぶ

昨日、午前中に近所を一人で散歩した。

朝から天気も良く、春の暖かい風が気持ち良かった。

お隣さんの庭に咲く梅の花はすっかり散ってしまったが、散歩すると春を感じる新たな花に自然と目がいく。

noteでは木や花といった自然の写真を投稿されている方も多い。お陰で、以前より僕も身近な植物に目を向けるようになり、少しずつ花の名前も覚えるまでになった。

川沿いを歩いていたら、白い木花が目に飛び込んでき

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交流があってこその一周年

交流があってこその一周年

昨日、note一周年記念の通知が届いた。

noteは自分の書きたいことを自由に、文字数も関係なく書ける場所。

写真を投稿しても良し、絵を描いても良し、音声発信しても良し。

そんな魅力に惹かれ、僕もこれまで日本や海外を旅したことを少しずつ投稿してみようと思い立った。

それがやがて、旅の話だけでなく家族のことや趣味のことまでテーマが自然に広がっていった。さらに今まで書いたこともない小説まで書く

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恩恵にあずかる

恩恵にあずかる

すぐお隣の家の庭に、梅と松の木がそれぞれ1本ずつ植えられている。

梅の木は2階の部屋の窓と同じくらいの高さだ。松の木はそれ以上ある。

近頃、梅の花が少しずつ咲き始めた。今朝、わが家の部屋の窓を開けると梅の香りがほのかに漂ってきて気持ちが良かった。

自分の家の木ではないのに、さも自分の家の庭のような感覚で花見を楽しませてもらっている。

去年の今頃、夜に台所の電気をつけたら窓からちょうどその明

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青い宝石

青い宝石

先日、横浜市緑区にある県立四季の森公園に行ってきた。

自宅から車で30分ほど、地元周辺でお気に入りの公園の一つだ。

四季という名前の通り、面積約45ヘクタールに及ぶ広い里山のなかで四季折々の植物を楽しめる。

出発前、バッグの中に小さな双眼鏡をとっさに入れたのは正解だった。さらに言えば、カメラの望遠レンズも入れていたら尚良かったかもしれない。

公園の駐車場で義父母と合流した。息子をベビーカー

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旅の途中

旅の途中

静かな場所に行きたくなった。

街の地図を見ていたら、とっておきの場所を見つけた。

そこへ行ったら、やはり思っていた通りの時間が流れていた。

さっきまで雨がぱらついていたせいか、誰も来ていない。

僕はしばらくその清閑な庭園の中に身を置いた。

「一人で寂しくないの?」

一人旅をしていたことに対して、こう聞かれたことがある。

「ひとりぼっちの旅」とでも言い換えたら、確かに寂しい響きになる。

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