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教育のはしくれ

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塾産業の中で教育などと偉そうには言いませんが、父親として息子たちと向き合ってきた一人としての体験と意見。時代的に早すぎた「イクメン」としての背景から、言葉を零してみます。
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#聖書

思い込み

思い込み

今月8万円小遣いをもらった。気が大きくなってどんどん使ったら、最初よりも4万円減ってしまっていた。いくら使ったのだろうか。
 
もうすぐ五年生になる、勉強好きな面々。分からない。大きな声で4万円、などという。後にもうすぐ中三生となる生徒たちに同じ質問をしたが、これも4万円という返答。私は驚いた。
 
進学塾に勤め始めたころの勢いから、年々言語能力が落ちていることは分かっていた。だが、この数年、それ

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言葉にしてみること

言葉にしてみること

中学三年生も受験が近づいてきた。三角柱の体積を求める問題。図としては見取図がそこにあり、ABとACが4cm、ACも4cm、そして∠BACが90°と書いてある。多くの生徒にとっては簡単な問題だ。空間図形の問題を解くためには、見るべき平面を、真正面から書き直して考えるのが基本である。福岡県の公立高校の入試問題は、それを必要としている。それで底面の直角二等辺三角形の図を書いて、「底面積×高さ」の公式に当

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化学反応

化学反応

CHEMISTRY(ケミストリー)というツインボーカルユニットがある。美しいハーモニーと共に、数々の名曲を世にプレゼントしてくれた。20年以上の音楽活動歴がある。一時数年間、活動休止の時期があったが、近年再び2人ででも活動している。「男子ボーカリストオーディション」で選ばれた2人が組まれてCHEMISTRYとなったのだが、それは「化学」の意味をもつ言葉である。つまり、1+1=2でしかなかったことが

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『凜として生きる』(平塚敬一・教文館)

『凜として生きる』(平塚敬一・教文館)

キリスト者として、何かしら重荷を負うというものがあるという。どうしてだか分からないが、そのことのために心血を注ぐしかない、という思いで生きるのだ。生きることが、考えることが、すべてそれのために営まれている、という気持ちになる。
 
著者にとり、「教育」がその重荷であるのだろう。しかも、「キリスト教教育」である。キリスト教を信じさせる教育だという意味ではない。教育する側が、キリスト教精神を以て教えて

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書くこと

書くこと

「問題をよく読みなさい」とだけ生徒に言っても、「読んでるよ」としか答えようがない。しかし、現に読み間違いがあり、なかなかなくならない。
 
文が実は読めていない、という衝撃的な事実を提示したことで、『教科書が読めない子どもたち』といった本は、一時的に話題を蒔くことができた。だが、事の深刻さは世を変えるほどには至っていないように見える。その本を著した新井紀子氏は、AIの研究家である。その研究過程で、

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授業のたとえ

授業のたとえ

これは学習塾の話である。教師の立場の話である。子どもたちに、受けてよかった、と思われることを語りたいと思っている。言うまでもないが「ウケて」ではない。
 
テキストを解説するのは当然。書いてあることが分かる。もちろん。それを基にして、問われてきた問題に解答することができるようになる。そうありたい。その連続が、入試合格へと導くことになる。それが目的だ。
 
だが、それで終わりなのか。それが目的かもし

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松居直さんと聖書のこと

松居直さんと聖書のこと

松居直(ただし)さんが亡くなったのは、2022年11月2日のことだった。悲しかった。いくらかの本を読んでいたのもあるし、信仰者として尊敬していた面もあった。特に、私がずっと懐いていた絵本についての考えを、支えてくれることを言っていた人だ、というように後から知ったとき、本当にうれしく思ったからであった。
 
先日、Eテレの「こころの時代」で、松居直さんのインタビュー番組が再放送された。2001年9月

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日本語の単語と聖書

日本語の単語と聖書

高校受験でも大学受験でも、英語について言及されるのが、単語はどのくらい憶える必要があるのか、ということだ。高校受験ならば、いまは小学英語があるために、2000語を下ることはないようだ。大学受験ならどうだろう。ざっと5000語くらいは標準となるのだろうか。高校生活で1日3個増やすノルマが課せられることになる。
 
ただ、日本語の単語の数はどのくらいか、という話が話題に上ることは、まずない。元々母語と

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読めていない・聞けていない

読めていない・聞けていない

トリセツなどという言い方が通用するようになったのは、いつ頃からだろう。西野カナの歌が広めたのは確かだが、私自身はもっと以前から使われていたような気がする。根拠は見つからないので、話半分に聞いて戴きたい。
 
取扱説明書。製造物責任法にも関係して、どんな商品にも説明書が付くようになった。危険性については特に、警告をしておかなければ、責任が問われることになる。ところでこうしたトリセツ、私たちは、しっか

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夏至

夏至

今日は夏至である。太陽の南中高度が最大となる。福岡市は北緯33.6°に位置するとしよう。福岡における夏至の太陽高度は、90°-緯度+23.4°で計算できる、と中学受験のための理科で学ぶ。私ならそのわけも一度はきちんと教えるが、さしあたり計算すると、79.8°となる。かなり高い。私は一度、夏至のときに沖縄に立ったことがある。沖縄の那覇は北緯26.2°だから、計算すると、87.2°となり、ほぼ真上から

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大学と問い

大学と問い

私は不良高校生だった。社会悪をしていたという意味ではなく、勉強に不誠実だった、という意味だ。しかし、優等高校生も世の中にはたくさんいる。ストイックに受験勉強に向かい、目的を達成して、花の大学生活が始まった人も多いだろう。
 
そこへ待っている魔の手がコミカルに表現されたのが、「四畳半神話大系」で、いま福岡ではそのアニメが放映されている。再放送らしいが、私は初めて見たので、新鮮に喜んでいる。実にクリ

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カルト宗教に注意

カルト宗教に注意

息子が大学生となった。入学式には、学生は入ることができたが、保護者はだめだった。そのためいまはネット配信というものがあり、家でそれをずっと見ていた。
 
式の後のオリエンテーションまで配信してくれ、学生生活の注意などがアナウンスされていた。その中でまず、気をつけてほしいということで、そのために制作されたアニメーションがひとつだけ流された。アニメとは言っても、紙芝居的なものだったが、ストーリーも声も

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分からないところが自分の課題

分からないところが自分の課題

小テストを実施する。模範解答を配る。いるいる。自己採点にしろ、交換採点にしろ、自分の答案に、答えをすぐに書き写す作業を始める生徒たち。予め、そんなことはするなと釘を刺しておいてもなお、条件反射のように、模範解答を解答欄に赤で入れていく。
 
いったい、「ウ」だの「12」だのを書き入れて、何がおもしろいのだろう。
 
この小テストは、忌まわしいものであった。だから、赤で正しい解答を書いて、お祓いをし

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それはわたしのことだ

それはわたしのことだ

小学生の国語の授業で、ある文章を読み解くことがあった。小学校のクラスで、互いにプレゼント交換をすることになり、それぞれ手作りのものを提出し、皆に配った。先生は、それを心をこめてつくったものを受け取ることを学ぶ機会としたかったのだが、うち一人が、あまりに雑なものに下手な絵が施されているものを、「これはひどすぎます」と皆に見せた。すると、クラスの皆が大笑いをした。それを作った当人が発覚する場面が続くの

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