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こころ

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ひとのこころ、見つめてみます。自分のこころから、誰かのこころへ。こころからこころへ伝わるものがあり、こころにあるものが、その人をつくり、世界をつくる。そんな素朴な思いに胸を躍らせ…
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#教会

心を病む牧師

心を病む牧師

牧師自身の心は、誰が世話をするのだろうか。
 
プロテスタント教会では、牧師という。礼拝説教を担う。教会員の魂の配慮を司る。教会を訪ねる人を迎える。中には、心を病んだ人も来る。そもそも自分の罪に気づいたからこそ、聖書や教会を求める、というのが筋だ。心の悩みをもつのは当然かもしれないし、実際精神疾患を患っている人も来るだろう。
 
だから牧師は、カウンセリングも学ぶらしい。「牧会心理学」などの名前で

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ハッピー・クリスマス

ハッピー・クリスマス

12月8日は、真珠湾攻撃を以て太平洋戦争が始まった日。細かな事情はさておき、日付としてはこの日を、覚えておきたいと考えている。だが、中学生は、殆どこの日付を知らない。日本国憲法の公布と施行については、日付を正確に覚えないとテストに出るから覚えるが、テストに出ない日付については、知る由もないらしい。アメリカにとり、国内を初めて外部から攻撃された、屈辱の日であるために、いまなお憎しみを抱く人もいる。そ

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寝るより楽はなかりけり

寝るより楽はなかりけり

「寝るより楽はなかりけり」
 
母が夜よくそう言って、布団を被るのを見ていた。一日中家事やらなにやらで疲れた結果、布団に潜ると、もう何もしなくていい。その安堵感を物語っていたのだろうか。一時は内職もしていたから、疲れはなおさらであったことだろう。
 
生活は必ずしも楽ではなかったと思う。入浴も1日おきだったから、「今日はふろの日」などと無邪気に言っていた小さな私だったが、それから思うと、毎日体を洗

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命の福音

命の福音

ある有名なタレント(?)が、先般急逝した。恐らく自ら命を絶ったものと見られている。こうした報道を垂れ流すことは、あまりよいことではない。また、その人となりをよく知っているとも言えない者が、とやかくその人のことを言うことは、さらによくない。それで、その人自身のことではなく、周辺のことを少し考えてみようと思う。それでも、関係する方々は傷つくかもしれない。だから私の呟きを正当化するつもりはないが、遅れば

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春から初夏にかけて

春から初夏にかけて

先月から、また駅前に2人組が立つのを見るようになった。「パンフレットスタンド」というのだろうか、カタログやチラシを半分見せながら幾重にも置いて、自由に持って行くことができるようにしたものを間に、2人が立っている。男女共にきちっとしたスーツ姿である。
 
その日は、乗る駅、降りる駅で、どちらにもいた。じっと立っている。通行人がいくら通っても、直接話しかけるようなことはない。2人はにこやかにしている。

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『なぜ君は笑顔でいられたの?』

『なぜ君は笑顔でいられたの?』

(「福本峻平の本」制作委員会・いのちのことば社)

副題に「福本峻平 神と人とに愛されたその生涯」と書かれ、表紙にある写真は、車椅子で喉にチューブを入れた男性の写真がついている。これが福本峻平さんである。
 
とある関連でこの人のことを知った縁で、手に取ることとなった。
 
キリスト者が、困難な環境に置かれた中で、神を信じて乗り越えていった。病にも拘わらず喜びの人生を送り天に召された。このような話

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共につくる

共につくる

息子がジャズのギターを学んでいる。大きなバンドでは、そう目立つばかりであってはならない。いや、小さなバンドでもそれはそうだろう。リズムを刻む重要な役割がある。しかし、ソロあるいはソロ・フィーチャーというような演奏の時間も与えられることがある。そこでは主役である。聴衆を魅了することが求められることになる。
 
そのソロだが、中にはきっちりフレーズも決めて、決めた通りに演奏する、というタイプの人もいる

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空白の30年間

空白の30年間

偶々テレビで、久しぶりに統一協会について語る有田芳生氏を見た。かつて社会問題化したときには、この人の命懸けの解説が、適切な判断がなされるために、貢献していたのだが、久しぶりだというのは、その後、テレビで同様に統一協会問題で解説をするという機会が、殆どなかったように見受けられるからだ。
 
つまり、そのような解説は、もはや視聴率に影響しない話題となり、マスコミが取り上げなくなったからである。だから、

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「リスペクト」

「リスペクト」

ミュージシャンの生涯を描く映画が目立ってきた。ついにはこのたびセリーヌ・ディオンの半生までが映画となったが、少し前に「ボヘミアン・ラプソディ」がクイーンを、フレディ・マーキュリーを中心に描いた。その制作の年、シンガーとして全米で1位にも選ばれたことがある歌手・アレサ・フランクリンが亡くなった。アレサのための映画の計画は前からあったが、アレサ自身、アレサ役にはジェニファー・ハドソンを指名していたのだ

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『群衆心理』

『群衆心理』

(ギュスターヴ・ル・ボン/100分de名著2021年9月放送テキスト)
 
邦訳だがすでに関心をもって新しい訳のものを読んでいた。それは私の中に大きな位置を占めた本となった。百年以上も前に指摘されたことが、私の常々考えていることに大きく重なってきたからだ。当時の社会慣習や背景と今はもうずいぶん変わっている。もはや古典として、そのままでは使えないかもしれない社会心理の指摘ではあるが、私は今だからこそ

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『こころを病む人と生きる教会』

『こころを病む人と生きる教会』

(英隆一朗・井貫正彦編・オリエンス宗教研究所・2012年発行)
 
キリスト教会だからと言って、こころの病を治療できるわけではない。しかし、教会には来る。こころを病んだ人が、救いを求めてやってくる。そして聖書には、そのような人々が救われていく様子が記録されている。期待するのは当然とも言える。
 
本書は、読んでいていたたまれなくなってくるものもある。多くの人の証言とも言える本なのだが、特に後半がそ

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竜とそばかすの姫

竜とそばかすの姫

映画「竜とそばかすの姫」を見た。有名になった作品への奇妙な称賛と、その逆のこきおろしなどに関わるのはごめんなので、制作者には失礼かもしれないが、非常に個人的な視点からのみ、少し触れる。「少し」というのは、いわゆるネタバレを起こしてはいけないということを意味する。
 
ヒロインの、バーチャル空間での名は「ベル」である。これで「ベルと竜」が私の頭に思い浮かばないはずがない。ヒロインの名を知ったときに、

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いのちの停車場

いのちの停車場

久しぶりに映画館に行った。妻に誘われるままにだが、こういうとき私は、予備知識をもたずに見ることにしている。評判はいいらしい、その程度しか知らずに映画に浸る。「いのちの停車場」という。122本の映画に出演したという吉永小百合さんが医師を演ずるのは初めてだそうだ。
 
のっけから生々しいシーンだったが、舞台はすぐに故郷にある小さな医院へと転ずる。以下、そこで出会う様々な患者との出会いと別れ、また父親と

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祈ります

祈ります

大阪での新規感染者の増加が著しかったが、その数字が各地方へ飛んでいる模様です(大阪に住む方々が安心できるようになることを願っています、いえ、どこででも)。人の動きがある限り、新型コロナウイルスの感染拡大は、簡単にはなくならないように見えます。
 
大阪では、亡くなる方が多いことで心が痛みます。苦しかったことでしょう。また、その家族な身内の方々の苦悩と悲しみも、想像を絶するものがありましょう。高齢の

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