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読んだ本、読みたい本。 漫画や本の話題多めの日のこと。
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#読書感想文

新しいものに息切れ

新しいものに息切れ

春は新しいものがどしどし作られる季節なので、家にこもってデザインすることが多いわたしも、撮影や取材などで外出が増える。そうすると、日頃、寝かせている体力をふんだんに使うこととなり、きっちり眠くなるので寝る前に開いた本は数ページ足らずで閉じられることとなる。(それは不服)

そんな中、移動中に読んでいた若林正恭の紀行エッセイ『表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬』がおもしろい。

若林が、資本主

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瞬間、瞬間、瞬間

瞬間、瞬間、瞬間

昨年の秋ごろまで働いていた会社の同僚ふたりと、春が来たら会おうね、それまではそれぞれにがんばろうねと約束していた。

朝は選挙へ行くので昼からでもいい?と連絡を入れてすぐに、ふたりのうちのひとりAは海外から日本へ来ているので参政権がないのだということに思い至り、落ち込む。ぽろっと発した言葉がもしかしたら誰かへの暴力になっているかもしれないと、いつも気をつけているつもりなのに、やってしまう。

そん

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全身が青春

全身が青春

今日も駅の階段をのぼるのはしんどい。でも天気がよくて、金曜日だから体調がいい。よく寝て、よく夢をみた。

先日、磯上竜也さん、大前粟生さん、町屋良平さんの日記本『全身が青春』の購入特典オンラインイベントを視聴して。

自然な会話のながれで、タイトル『全身が青春』の伏線回収となりおぉ〜とうなった。

これまで自分の体におもしろみを感じたことなどなかったけれど、日々変化するものとして体調をとらえたとき

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冬の日誌

冬の日誌

今年ほど、新年という実感のすくない年ははじめてで、なんとなく冬の空気に押し込められているような、静けさや暗さの方につよく引っ張られる感じがつよい。なぜなのかは不明。

正体不明の不安に駆られることは時々あるけれど、ひさびさに、おっとこれはいけねぇ。というかんじ。なぜだろうか。

人より自信があるわけでもないし、人より自信がないわけでもない。そして人と比べることに何の得もないことはとっくにわかってい

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2021年、だいすきだった本。

2021年、だいすきだった本。

はじめは3冊選ぼうと思ったけれど、どうがんばってもこれ以上ははずせない……ということで6冊になりましたとさ。どれもこれも、そうでしょうねぇ日記で興奮してらっしゃいましたもんね…という声が聞こえてきそう。

そして、引越しのためダンボールに本をすべて詰めてしまい写真がとれなかった………過去の読書記録でものせておきます。

○ 断片的なものの社会学
○ STONER
○ 世界はうつくしいと
○ エドウ

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いちじくのフルーツサンド

いちじくのフルーツサンド

きょうは朝から頭痛で、ずっといらいらしていた。原因はわかっていて、きのうの夜、おいしいおやつを食べるためにコーヒーを入れてごきげんで食べたまではいいものの、そのカフェインによってぴー太もわたしもぜんぜん眠ることができず、朝を迎えたのだ。

わたしがやっとの思いで寝たら、そのいびきによりさらに眠れなくなり、くるしんだぴー太がわたしを起こし、目覚めてこちらもくるしむというループ。ふたりとも睡眠不足のま

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人生の中できっと思い出し続ける、忘れてもいい

人生の中できっと思い出し続ける、忘れてもいい

Instagramで読書日記だけではなく、日常のことも投稿するようになった。なんのことはない、ノートだけが並ぶ投稿欄の見栄えにあきてきたのと、日によって違う写真の光の加減が妙に気に障ったという理由なのだ。

そうすることで、InstagramとTwitterとnoteの境目が曖昧になり、3つも本当にいる?という問いが生まれ、書き分けにも悩み、やれこまったとなっている。

もとは誰かに見てもらうため

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余韻から抜け出せず

余韻から抜け出せず

この間ついに『カラマーゾフの兄弟』を読み終え、興奮の中まだ自分の中で感想を書けるまでに整理されておらず、いつものコラージュ読書日記を作りかけては出来栄えに納得できず途中で放り投げ、先にずっと書きたくてうずうずしていた相関図をまとめようと、上巻から順にぱらぱらと人物描写部分を改めて読み直している。

カラマの新潮社の解説を読み、えっそうなのとびっくりした部分があったので、光文社の方の解説も読みたくて

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詩と音楽と本と、猫

詩と音楽と本と、猫

谷川俊太郎さんの詩集『あたしとあなた』を読んで、はじめて泣いたのはいつだったろうか。ときどき読み返しては、そのたびにぐっと心の奥の方が揺れる。

それと同じではないけれど、同じように、おばけの全感覚祭のLIVE映像「まーらいおん」を聴いて、何度だってほろほろ涙。

歌も曲も表情も、空の色までもが、底無しにやさしいんだよなぁ。

一度だいすきになったものは、いつだって新鮮な感動を私に与えてくれる。

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あの本買っちゃいまして

あの本買っちゃいまして

話題の『東京の生活史』買っちゃった。
かわいくない値段に震えながらも、この魅力的な厚みと『断片的な社会学』の岸政彦さん編集のインタビュー集ってそりゃ買わないわけにいかないでしょうよ…と、数日考えて、いやこれは今買う!と決意し、本屋からの帰り、重くてひぃひぃ言いながら持ち帰った。

たまたま集まった聞き手の方が、たまたまひとりの知り合いに声をかけ、その生活史を聞く。それを持ち寄って、一冊の本にする。

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あまりにも美しいインドの絵本

あまりにも美しいインドの絵本

て、てててて手に入れたーーーー!!!
タラブックスの『夜の木』10刷!!!!

写真じゃ感動あまり伝わらないと思うけど、伝わってほしい。くう〜

紙漉きでつくられた黒い風合いのある紙に、手刷りのたっぷりとしたインクの盛り上がりと、配色の美しさ……

そしてなにより、インドのゴンド族アーティストの個性的な絵。トライバルアートと呼ぶそうだけど、この迫力と精密さ、奇妙さとかわいらしさの融合はデザイナー顔

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罪と罰、ときどき少女漫画

罪と罰、ときどき少女漫画

罪と罰の上巻を読み終えた。後半、ラズミーヒンのかわいいうざめのお節介が炸裂したあたりから登場人物が一気に増え、その分話も展開していくのでおもしろくてするするするーと読み進めた。

本を読んでいると、その本の文章のリズムに自分の読むリズムが合ってくる瞬間がある。本が自分に馴染み、読むのがたのしくてどんどん読み進めてしまうみたいな状態で、罪と罰もそこに至ったようで、ラスコーリニコフのうるさい心の声にさ

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本とごはんで生きながらえる

本とごはんで生きながらえる

罪と罰、おもしろすぎやしないか……長くて退屈なのではないかと不安に思っていたのがばからしいほど、おもしろい…
後半は、心理戦の応酬だし、出てくる人出てくる人みんな個性強くて笑えてくる。
もう感想言いたくてたまらない。あと残すところ200ページほど。

ポルフィーリィこわい…スヴィドリガイロフ(名前むず)もこわい…でもなぜか望みをかけてしまう。あと、ラスコーリニコフの弱さといやらしさはなんか惹かれる

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小さくあり続けること

小さくあり続けること

『本を贈る』の中で矢萩さんが紹介していたインドの出版社「タラブックス」の本を今読んでいる。いい、いい、自分の中からも物作りの熱が、愛が湧き出てくる。

便利でなんでもある資本主義社会にいい加減つかれてきて、あとどれくらい新しいものを生み出したらいいの?と感じる日もある中で、タラブックスが大事にしている「小さくあり続けること」という考えがとても心に残る。

無理して長時間働かない、本当にいいものを自

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