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スイーツのお部屋

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#至福のスイーツ

東京駅の0キロポスト

東京駅の0キロポスト

2k540を後にしたウサギとカメは、涼しい日陰を探しながら秋葉原駅に辿り着いた。
「電車をたくさん見られる場所って、やっぱり東京駅かしら。なんとなくだけど...」ウサギはカメに視線を送った。

「日本橋が道路の出発点だったように、東京駅は鉄道の出発点なんだ。その証がホームから見えるんだよ。鉄道にはいろんな楽しみ方があるよね」と、揺れる電車の中で、カメはウサギに話しかけた。

「電車なんて、ただの移

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水しぶきと夏の涼

水しぶきと夏の涼

静かな図書館の閲覧席で、ウサギが夢中になってページをめくっていた。時折、手を止めては、うっとりとため息を漏らしている。

「今読んでいるのはスイーツの本か、それとも涼しくなれる本だよね?」と、正面に座っていたカメが静かに声をかけた。

ウサギはびっくりして顔を上げた。
「どうしてそんなことが分かるの?当たりなんだけど…」彼女の手には水族館の本がしっかりと握られていた。

カメはそっと彼女の手を取る

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風鈴と夏の調べ

風鈴と夏の調べ

図書館の窓際の席で、ウサギは外をじっと見つめていた。中庭では木々が濃い影を落とし、外の暑さを際立たせていた。その時、カメが静かに彼女のそばを通り過ぎた。

「ねえ、どこか涼しさを感じられるところはないかしら」ウサギは思わず声をかけた。 カメは少しだけ考えると、「ひとつ心当たりがあるよ」と彼女に答えた。

図書館を後にして電車に飛び乗った二人は、川崎大師駅に辿り着いた。強い陽射しに目を細めながら、駅

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オバケなんて怖くない

オバケなんて怖くない

図書館の閲覧席で、ウサギとカメは肩を並べて本を読んでいた。「今日もとても暑いわ。こんな日はやっぱりかき氷が一番よね」とウサギが言うと、カメは優しく微笑み、そっと彼女の手を引いた。

「ねえ、どこに行くの?」驚きながらもついていくウサギにカメは静かに答えた。
「分類番号147.6の書架に幽霊がいるんだけど、もっと涼しくしてあげるよ」

電車に飛び乗った二人は、立川の「オバケ?展」の会場の前に辿り着い

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迷路の街を歩くなら

迷路の街を歩くなら

その日、ウサギとカメは自由が丘の石畳を歩いていた。角を曲がるたびに、小さな雑貨屋や甘い香りが漂う店が次々と現れ、まるで別世界に足を踏み入れたような感覚に包まれていた。

ウサギは細い路地でふと立ち止まった。
「この通りも自由が丘らしいわ。デザインが面白いの。まるで迷路みたいで」

「道の両側から、それぞれ線に沿って歩いていって、もし二人が真ん中で出会えたら、それはきっと、何か素敵なことが待っている

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熱い心にかき氷を

熱い心にかき氷を

ベランダに独り佇むウサギは、静かに空を見上げていた。淡い雲がゆっくりと流れ、雨を降らせるのか、それとも静かに消えていくのか、迷っているかのようだった。
「今日は七夕ね。天の川は見えるのかな」

部屋に戻り小さな本棚の前に立つと、一冊の絵本で指を止めた。彼女は窓辺に腰を下ろすと、ゆっくりとページをめくり始めた。

「天女と人間って、本来は結ばれる運命じゃないのに、うしかいは織姫を妻にしちゃうんだから

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短冊に願いを乗せて

短冊に願いを乗せて

小雨が降る中、ウサギとカメは桜木町駅に降り立った。ランドマークタワーに向けて歩き出すと、足早に歩く人の頭の上で、小さな傘が強い風に揺れていた。

「梅雨の季節だからこそ、楽しめる事もあると思うの。こんな日の展望台も悪くないわ」ウサギは風になびく長い髪をかき上げながら、そっとタワーを見上げた。

SKY GARDEN までエレベーターは音もなく滑るように進み、地上273メートルの高さまで、わずか40

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天の川に寄せる想い

天の川に寄せる想い

その日、ウサギとカメはそごう美術館の「KAGAYA 天空の贈り物展」を訪れていた。星空の写真に囲まれ、その幻想的な世界に引き込まれた二人は、瞬きさえも忘れ、その美しさに心を奪われていた。

作品の中では四季の星座が優雅に瞬き、またある時は、空に浮かぶ月が日本の風景に穏やかに溶け込んでいた。その光景は、どこか夢のような神秘を帯び、まるで物語の一幕のようだった。

「これは北海道のハルニレの木なのね。

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いつだって最先端

いつだって最先端

カレッタ汐留の展望台から地上に降りると、高層ビルが再びウサギとカメを取り囲み、その高さから二人を見下ろしていた。

「未来的な景色が目を引くけれど、このあたりには歴史の息吹も感じられるんだよ」と、カメは穏やかに話し始めた。

「たとえば、1872年に日本初の鉄道が走った新橋駅が復元されているんだ」と彼は続け、
二人は旧新橋停車場に向かって歩き出した。

「当時は西洋建築が珍しくて、日本初の鉄道ター

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雨の季節の甘い出会い

雨の季節の甘い出会い

その日、下北沢の真ん中でウサギはとてもご機嫌だった。シャツの入った袋を胸にしっかりと抱きしめると、宝物を手に入れたような幸福感に浸りながら、周囲の視線を気にすることもなく、その場で一回転して飛び跳ねた。

「この街を歩くと、どういうわけか古着が欲しくなるの」と彼女は言った。

笑顔を振りまきながら歩いていたウサギは、ふと足を止めた。
「シーズンメニューあじさい?」
ウサギは少し首を傾げて写真に近づ

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願いを叶える三つの塔

願いを叶える三つの塔

横浜港の大さん橋のデッキに立つウサギの長い髪が、海風に揺れていた。「そう。ここだったわね」と、彼女は足元のマークを見て小さく呟いた。

ウサギの見上げる視線の先には、横浜三塔である神奈川県庁のキング、横浜税関のクイーン、そして開港記念会館のジャックが、はっきりとその姿を見せていた。

「どうして三塔を一度に見ると願いが叶うのかしらね?」と、遠くに見える塔を眺めながら、ウサギはカメに問いかけた。

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たまごパンとコロッケ

たまごパンとコロッケ

その日、ウサギとカメは麻布十番駅にそっと降り立った。歩き始めたウサギは、店の内装が珍しいお店の前で足を止めた。それはまるで鳥の巣のようで、不思議な雰囲気を醸し出していた。

「見て!ちょっと覗いてみない?」たまご専門店「本巣ヱ」に一歩足を踏み入れたとたん、金色に輝く「たまごパン」がすぐに彼女の視線を捉えた。

焼きたての「たまごパン」をそっと手に取ったウサギは、パティオ十番のベンチに向かった。そし

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好きなものを探しに

好きなものを探しに

その日、ウサギとカメは神田古本屋街をぶらりと歩いていた。靖国通りに面しているその場所は、時の重みを感じさせる書店が静かに軒を連ねていた。二人が足を運んだのは、ブックハウスカフェ」という絵本専門店だった。

「ここよ!」とウサギは言いながら、透明なガラスのエントランスを風のように駆け抜けた。カメはその場の空気を味わいながら、ゆっくりと後を追った。二人を出迎えたのは、香り高い特製カレーやさまざまな飲み

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沖縄への幻想旅行

沖縄への幻想旅行

その日、ウサギとカメは、祭りの賑わいに包まれたラ・チッタデッラにいた。「はいさいFESTA」の会場は、沖縄の離島から持ち寄られた品々で色とりどりに飾られており、二人の馴染み深い、石垣島や宮古島の風を感じさせた。空気はタコライスやソーキそばの香りで満たされ、その一方で、海の波が寄せるかのように、貝殻で作られた繊細なアクセサリーが店頭に並べられていた。

中央噴水広場に立つと、二人の耳に三線の音色がゆ

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