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オバケなんて怖くない

図書館の閲覧席で、ウサギとカメは肩を並べて本を読んでいた。「今日もとても暑いわ。こんな日はやっぱりかき氷が一番よね」とウサギが言うと、カメは優しく微笑み、そっと彼女の手を引いた。

「ねえ、どこに行くの?」驚きながらもついていくウサギにカメは静かに答えた。
「分類番号147.6の書架に幽霊がいるんだけど、もっと涼しくしてあげるよ」

電車に飛び乗った二人は、立川の「オバケ?展」の会場の前に辿り着いた。
「ちょっと、本当に入るの?」カメの後ろに隠れるウサギの声は、不安に揺れていた。

「オバケ?展」

最初のゾーン、暗闇のお化け屋敷を、カメに手を引かれ怖々と進んだウサギは、バーバパパの前でようやく息を整えた。

お化け屋敷の古井戸

「バーバパパなら大丈夫よ」と、声を震わす彼女の顔は、まだどこかぎこちなかった。

バーバパパの
プロジェクションマッピング

だんだん涼しくなってきたでしょ?」と、カメが次に誘ったのは「オバケ落語」のコーナーだった。落語家が朗読するオバケ絵本「ねないこだれだ」は、真に迫りすぎていて、ウサギの心をさらに不安にさせた。

会場にはオバケの絵本が500冊も

二人はオバケ研究所に辿り着いた。そこには、日本美術におけるオバケや幽霊、妖怪の歴史が詳細に解説されていた。

「鎌倉時代初期に登場した『ばけもの』が、お化けの直系のご先祖様なんだ」カメは静かにウサギに話しかけた。彼女はその言葉に耳を傾けながら、少しずつその不思議な世界に引き込まれていく自分を感じていた。

「どの時代もオバケが大活躍しているわ。浮世絵にも描かれていたのね」と、彼女はそっと呟いた。

歌川国芳 「相馬の古内裏」

「涼しくなったらお腹が空いたわ」
会場をあとにすると、ウサギは周りをぐるりと見渡した。

「見て、パフェのオバケだわ!」彼女は微笑んで、自慢げに胸を張った。「これなら、私だって怖くないんだから」

ねないこだれだ マシュマロパフェ

「見て、お土産も見つけたわ!」

べ、別に怖くなんかないわよ.… 
by ウサギ

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