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風鈴と夏の調べ

図書館の窓際の席で、ウサギは外をじっと見つめていた。中庭では木々が濃い影を落とし、外の暑さを際立たせていた。その時、カメが静かに彼女のそばを通り過ぎた。

「ねえ、どこか涼しさを感じられるところはないかしら」ウサギは思わず声をかけた。 カメは少しだけ考えると、「ひとつ心当たりがあるよ」と彼女に答えた。

図書館を後にして電車に飛び乗った二人は、川崎大師駅に辿り着いた。強い陽射しに目を細めながら、駅を出て歩き出すと、目の前に川崎大師の大山門が現れた。

境内に足を踏み入れたウサギは、その場でぴたりと立ち止まり、大きな声を上げた。
「見て、風鈴があんなにたくさん!」

川崎大師の風鈴市

「風鈴や風車があるここなら、涼しさを感じられると思ったんだよね」と、カメが静かに微笑んだ。

厄除だるま風鈴

風鈴市には、川崎大師オリジナルの厄除だるま風鈴をはじめ、全国から800種類を超える風鈴が集められていた。

厄除け花火玉風鈴

風鈴はそれぞれ異なる音色を奏で、二人はそっと耳を澄ませた。その音色はどこからともなく、そよそよと涼しさを運んでくるようだった。

「不思議ね。本当に涼しくなった感じがするわ」とウサギが呟くと、カメはその言葉に静かに頷いた。「風鈴の音を聞くと、自然と風が吹いている光景が浮かぶんだ。それで、脳が涼しいと感じるんだよ」

「そういうことなら、私の部屋も涼しくしたいわ」とウサギは言い、南部鉄風鈴を手に取った。その重みを感じながらそっと空にかざすと、リーンと澄んだ音色が境内に心地よく響き渡った。

南部鉄風鈴

帰り道、二人は久寿餅で知られる「住吉」に立ち寄った。「あっさりした久寿餅に、三種類のベリーが絡み合って、夏の味がするわ」とウサギは一つ一つを丁寧に味わいながら、店内に響く風鈴の音色に耳を傾けた。

アサガオをイメージしたあん久寿餅と
冷たい抹茶
恒例のおみくじ報告
心正しければ願い事が叶うのね  by ウサギ

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